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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

フランドール~孤独の終わり

作者: クロねこ

私の初めての作品です。温かい目でご覧になっていただくと幸いです。

   

   私は気が狂れている。そう言って誰も近付かなくなったのはいつからだったんだろう。この狭い狭い部屋に閉じ込められてずいぶんと長い刻がたった。でもそれも仕方のない事。私は誰よりも強い、それこそちょっと触っただけでどんな物も壊れちゃう。だから私は自由になっちゃいけない。私が愛した人を失わない為にも。


   紅魔館の地下室には誰も近付こうとしなかった。それはそう、いつ爆発するかもわからない爆弾の前に立つようなものだもの。だから私への食事はいつも部屋の外から手渡され、関わり合いを最低限にしているみたい。その中で唯一私のお姉様だけは私と積極的に関わろうと外の話を聞かせてくれたり、贈り物をくれたりする。それが私にとって、この孤独な部屋の中でとても大切な時間だった。お話をしている時も私への気配りをしてくれる所が嬉しかった。贈り物はとてもかわいい人形で、私は毎日一緒に寝て過ごした。まるでお姉様の様な暖かさを感じた。


   吸血鬼が外の世界で真っ当に生き抜くのは生半可な事ではできない。あらゆる者から恐れられ続け、嫌われ続け、狙われ続ける。それも真祖の血が濃ければ尚更だ。何もかもが違う種族の差による暴力、悪意、正義に私は全てを悉く破壊しつくだろう。でもそれはいけない事。秩序を司る立場を目指す者として最低限、私達は人の領域を超えてはいけない。だからお姉様は私達家族の平穏を勝ち取る為に戦いを続けてる。私が、館のみんなが、そして何よりもお姉様自身が笑って迎えられる未来を望む為に。


   襲撃にあったその日から徐々にお姉様が私の部屋に遊びにくるのが減っていった。本格的に世界を敵に回すみたい。でも私は何かを失った様に感じた。私は誰にも構ってもらえない。寂しい…


   孤独を紛らわすために人形遊びを始めた。でもそれも長くは続かなかった。すぐに飽きちゃった。なら人形じゃなくて自分だったらどうだろう。魔法で分身をして一人芝居を始めた。楽しいだろうと思ったのにより一層自分自身しかこの部屋にいないという現実を感じた。この部屋にある物でありとあらゆる方法で寂しさから遠ざけようとした。けれど、この乾きは止まらなかった。誰か来て欲しい。私も誰かと一緒がいい。独りは退屈で苦しい…


   私は人形の頭をねじ切り、ワタが出る様を見て楽しんだ。魔法で何度も修復して何度も破壊する。飽きるまで何度も。人形だけには飽き足らず部屋の全てのモノを潰した。部屋に入ってきたメイドもついでに潰してしまった気がするけどそれはそれで面白かった。うめき声とともに爆ぜる様がおかしくて、かわいかった。部屋が見違えるほどキレイなイロに彩られて堪らない。まるでお絵描きをして褒めてもらう様に。

次のお遊び相手を探しに行きましょう。なるべくすぐには壊れないモノがいいなぁ。だってそっちの方が長く楽しめるもの。そして私は禁忌の扉を開いた。もう私の乾きは止まらない。


   なんで私は我慢できなかったのだろう。お姉様が私たちが自由に生きられる世界にしてくれると最後まで信じたかった。やり直しがしたいといくら願ってももう取り返しがつかない。お姉様、お姉様ーーー

泣き叫ぶ声もその後悔を聞く者はもうどこにもいない。それでも私は枯れるまで泣き叫んだ、この声が届いてると信じたくて。

・・・

そして月が赤くなる頃、静寂に包まれた血溜まりの上に私は座っていた。

もう孤独は懲り懲りだ。もう十分苦しんだ。

私は手の平に赤く光る「私」を握りしめた。

お姉様、壊しちゃってごめんね…

・・・

そしてその真紅の城にはだれもいなくなった…


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