第一話:ここは異世界でござる?
「お…拙者は、生きてるのでござるか?」
この世界で、俺が初めて発した言葉だった。
「え?…あははっ!」
くすくす…ツボにハマったのだろうか。目の前の少女は、目の前の俺に悪いとは思いつつも、笑いを堪えられない様子だった。
笑っていないで、何が起こっているのか...俺は説明を求めているだけなのだが...。
「砂漠のど真ん中に人が倒れてたから、『死んじゃったら大変!!』と思って着てみれば・・・『俺は生きてるのか?』って聞くんだもの!
ーーこっちが心配して聞いてるのに!」
「あははっ!あなたって...面白い人ね!!」
どうやら、目の前の女子の言うことが本当なら、俺は生きているらしい。
ーーそして俺は、何かこの子にとって面白発言を言ってしまったらしい。
「あと…その…ござるって何?
そんな口調初めて聞いたわよ。何処の国の出身なの?遠い国の人なのかしら?」
咄嗟に出た『ござる』に、そんなに突っ込まれると、こっちも少し恥ずかしい気持ちになってくる…。
(でも…とりあえず・・・
ーー俺は生きてるっぽいな!良かった!)
俺は、今この時を生きている事に安堵しつつ、彼女との対話を進める。
(そう…今必要なのは•••状況整理なのだ)
「『ござる』って言うのは、ほら...〝T2〟の世界でよく聴く言葉でだろう?戦国時代の侍になりきると言うか、ゲームを楽しむ為に、侍に演じきるって意味でさ。」
(昔のお侍さんも、本当に使ってたらしいし...。)
「ほら・・・せっかく戦国時代に来たなら、その時代の言葉、使いたくならない??」
女は『よく分からない』と言いたげな表情でこっちを見てくる。
今や、世界的な知名度を誇る〝T2〟を知らないとは・・・『何処ぞの辺境の地だ!』と心の中でツッコミを入れる。
ただ、今は情報がほしいので、彼女の話を注意深く聞いてみる。
「サム…ライ?ティーツー?ゲームってどういうこと?センゴク...センゴクって国から貴方は来たの?」
「いや、戦国は時代の名前で、俺が来たのは日本って国だよ。ジャ・・・ジャパニーズ、おっけい??」
(ーーおいおい。まじかよ。ニホンを知らない!?)
(サムライを知らないのは、多分…日本の文化に疎いからだ。〝T2〟を知らない…のも田舎という事で置いておこう。ただ、日本も知らないのは、ちょっとまずくないか?世界でも有数の経済大国だぞ?)
(ーーというか、ちょっと待てよ。)
ここは〝T2〟の中だろ?なんで、〝T2〟を知らない。それに、日本をモチーフにしたゲームの中で、日本を知らないのはおかしい。
今やすべてが情報化されたこの時代に・・・明らかに話の流れがおかしい。彼女は一体...。
「まあ、何があったのか知らないけどさ!こんな砂漠のど真ん中にいたら干からびちゃうよ。」
(ん?砂漠?日本(〝T2〟)に砂漠なんて…あるわけ…)
そう言って、周りを見渡してみる...
「え…まじかよ。」
混乱していて、周りが良く見えていなかった。そこに広がるのは...
ーー見渡す限りの…砂。大砂漠。
日本(〝T2〟)では、あり得ない風景だ。
「砂漠だと…!急なアップデート…?いや、そもそもT2に日本以外のフィールドを実装させるなんて…どういう事だ?」
予想外の展開で、頭の整理が追いついていない。大規模なアップデートは事前に告知されるはずである。というより、今眼の前に広がる砂漠というフィールドはT2のコンセプトと外れすぎている。
もはや…別物だろ…。戦国時代ところか、日本ですらない。
目の前の現実が受け入れられない。
「なんか・・・辛気臭い顔してるけど、大丈夫?何があったのか分からないけどさ!元気出してよ!ほら!立って!!」
バシッ!背中を叩かれた。
彼女は勇気付けるために背中を叩いたのだろうが、それは俺に衝撃的な事実を突きつけた!
「いてっ!」
本当に痛かった訳じゃない。ちょっと強めに叩かれたから、つい声に出てしまっただけだ。
「ごめん、強く叩きすぎちゃった!?」
いや、問題はそこじゃない。そこじゃないんだ。
――〝叩く〟という攻撃が生んだ〝衝撃〟を感じたこと。それが問題なんだ。
〝T2〟はフルダイブシステムを搭載しているから〝暖かい〟〝冷たい〟様々な感覚をリアルに感じる事ができる。
ただ、実装していない感覚がある。
それは…〝痛覚〟だ。
またそれに酷似する、第三者からの攻撃による〝衝撃〟なども、ゲームからは消し去られている。
乱世において、プレイヤーは戦いに参加する上で、死に至る事がある。刀、矢、銃などの武器で、ダメージを負うことも日常茶飯事だ。その度に、リアルな〝痛み〟を感じていたら…そんなゲームやりたいと思うだろうか。よっぽどのドMならまだしも…普通の人間なら嫌な筈である。
「ごめん!痛かった?ちょっと元気付けようと思って、強めに叩いちゃったかな…?ごめんね!」
「いや…ありがとう。つい声が出ちゃっただけで大丈夫!」
この女の子は今…〝痛覚〟がある事を、当たり前の様に言った。
痛いという感覚が、この世界にはあるんだ。〝T2〟では決して存在しないモノだ。
つまり…この世界は…仮想世界〝T2〟じゃない。頭の中の???(クエッション)は今、確信に変わった。
(ーーと言うことは…ここは、現実世界なのか??いや、今は何をするにしても、情報が足りない。)
考えていると、彼女の服装が目に入った。
目前の女の子の服装を良く見てみると、〝T2〟でも、現実世界でもあまり見ない格好をしていた。強いて言うなら、古代のエジプトにありそうな服装だった。
(映画や世界史の教科書で見た事があるな...。所々が透けてて、アクセサリーが金色だ。)
肌が見えるシースルーな布地と金の装飾品が、古代エジプトを彷彿とさせる。しかも、薄着だし…うん、この服装はちょっと刺激が強いな…。
『こんな時に何を考えているんだ』って話だが、男としての部分は正直なのだ。こればかりは仕方がない…。
「ジロジロ見て…ちょっと、私の服装なんか変かな…?そんな見られると恥ずかしい…」
「あっ! ごめん」
まずい、物珍しさでついつい見てしまった…。
「誤解しないでくれ!やましい気持ちは無いんだ!ちょっと珍しい格好だなと思ってさ。金の装飾とか、君の国ではよく付けるのかい?」
見れば見る程、古代エジプトっぽい服装なんだよなぁ…クレオパトラとかそう言う人が来てるイメージだ。
「うん、私たちの国では、綺麗な金の装飾を纏う事が美しいとされているのよ、まあ、あまりギラギラ過ぎるのもどうかとは思うけどね。私のは結構落ち着いている方だと思うわよ」
これでか…十分派手だな…。日本から比べたら…随分と透けてる部分も多いし。
「お、おう。結構落ち着いてて良いと思うよ!あ…暑いし、通気性も良さそうだしな、その服!」
通気性が良いってなんだ!見た目じゃなくて機能性を褒めてどうする俺!?
「でしょ!腕の部分とか、シースルーだから結構涼しいのよ!ギラギラして目立つだけがファッションじゃないわよね!アクセサリーとか目立たせたい部分は目立たせて!他は…ちょっと控ぇ…」
ファッションの話はよく分からないので、話を聞いてるフリをしながら、思考を巡らせる。
そもそも、この子の服装が落ち着いたトーンだったら、派手ってどんなレベルなのかと…
俺はちょっと考えてつつ、その子の胸の目立つ金のネックレスに目をやる。
そのネックレスは、ピカピカに磨かれ、鏡のように反射していてる。金属の表面には俺の顔をくっきり見える。
ーーただ、そこにあったのは、リアル世界の〝野原英二郎(俺)〟の顔ではなかった。
俺が〝T2(ゲーム)〟で使っていたキャラの渋い顔であった。
相変わらずダンディーなイケメンだ。さすがしっかり時間をかけてキャラメイクしただけはある…。
(...っと自分のキャラメイクセンスに関心している場合じゃなかった…やはりそうか。)
薄々は気づいていた。声が現実世界と明らかに違うのだ。有名な声優さんが声を当てたキャラボイス。現実の俺のダミ声とは、明らかに違う爽快で通る声であった。
そう。ーー今このとき、ここに存在しているのは、〝 野原英二郎 (リアルな俺)〟ではなく、仮想世界での俺なのだ。
T2のキャラのまま、どこか知らない世界に来てしまったようだ。
この世界が、現実世界なのか、どこか違う仮想世界(FD-SIM)なのか今は分からないけれど。
ただ、一つだけ確信を持って言えるものがある。
ちょっと不安はある。それはウソじゃない。ーーでも嫌じゃない。
未知の世界との出会い、新しい人生の始まり。俺は今、興奮と期待に包まれる。
リアルのしがらみから解放され、〝T2〟の世界に初めてやってきたワクワク感と、一緒のものを...今、俺は感じている。
現実世界が楽しい奴なら、大切なものがある者なら、やり残したことがある人なら…今の状況に不安を覚えたかもしれない。
現実には飽き飽きしてたし、T2でのゲーム人生もイチからやり直そうとしていたのだ。いっそ世界が劇的に変わろうと、ここが異世界だろうと、楽しく生き抜いてやろうじゃないか。
どうせ一度限りの人生だ。とびきりの波瀾万丈の何が悪い。ハプニング?予想外?上等だ。大歓迎である。
俺はこの世界を楽しむことに決めた。まあ、それぐらいにポジティブに考えないと、今のカオスな状況ではやっていけない。誰かに『あっぱれなポジティブシンキングだ』と、褒めて欲しいぐらいだ。
「ねぇ!ねぇってば!もー、私のファッションのこだわりポイント聞いてなかったでしょ!ずっと私の服見てたから、興味あるかなーって思って喋ったのに…」
おっと、考え事しすぎてしまった…。ここは、ハリウッドスター顔負けの、渋いイケメンフェイスを有効活用する時だ。俺の12時間の努力の結晶よ!今こそその真価を…!
「すまんすまん!ついつい見惚れちゃって、セクシーな衣装も綺麗な衣装も、結局は着る人次第なんだよな。君が着ているから、魅力的に見えるんだよ。」
なんと言う…自分で言ってて寒気がしたぜ!
「なっ!な、な、な!今なんて!そ…そんな褒めたって嬉しくないぞ!!」
どんだけ隠すの下手だよ.!!感情が駄々漏れだ。
ただ、素直な子なんだなってことは伝わってくる。
今は俺は渋顔のイケメン。大学までDTだった俺なんて、この世界にはいないのだ。
(ちょっとだけからかって見ようかな...。)
「素直に思ったことを言っただけなんだけど...。恥ずかしい思いをさせちゃったらごめんな。」
かぁぁあああ!見る見るうちに赤面する。
「ぅう...。面と向かってそんな恥ずかしい...。き・・・君は...初対面の私を・・・口説いているのか!?」
(分かりやすい...というか面白い)
ただ、命の恩人をこれ以上、いじるのはバチが当たるってモンだ。これぐらいにしておこう。
「ごめんごめん。恥ずかしい思いをさせるつもりじゃなかったんだ」
「っんん!!そ・・・それぐらいにしてくれると助かる...。」
(ーー面白かったから...からかったのは黙っておこう。ーーそれにしても...俺はこれからどうすればいいんだろう)
周りをぐるっと見てみるが、一面砂漠。砂の地平線が360度広がるばかり。
(んー...ダメもとで頼んでみるか?どうせい頼る相手なんて・・・一人しかいないわけだし)
目の前の女の子をチラっとみる。まだ赤面の赤さが完全に引いていない様だ。
「助けてくれて、何かお願いするなんて、図々しいかもしれないけど、もし大丈夫なら、俺を雇ってくれないかな?行くあてがなくてさ...。」
「えー...人をからかう人はヤダかな!!」
(やべぇ...。ちょっと、ふざけすぎたか!?)
女の子はクルッと一回転まわって、舌をペロっとだして...
「なーんてね!!いまちょっと顔引きつったでしょー!私のことをからかった罰だよー!」
「おいおい!試したやがったな!」
地味に焦った。こんなだだっ広い砂漠で、この子に見放されたら...かなりヤバイからな。
「で...。俺は君に付いていっても良いのか? 力仕事でも何でもするぜ! 」
「んーーじゃあ、君さ、私を守ってよ」
ん?傭兵ってことか?
「私、追っ手から逃げてるんだよね。守って欲しいの」
(え・・・?)
聞き返したくなる様な単語が、目の前の可愛い女の子から飛び出した。
<<第弐話に続く...>>
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まずは、皆さんに再び会えたことを嬉しく思います。
毎日更新していくことを目標に執筆していきますので、
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では!また次話にて会いましょう!またね!
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