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拙者(オレ)、SAMURAIでござる。  作者: 日溜乃ン乃
序章ープロローグー
1/8

プロローグ ~やっぱ、拙者(オレ)SAMURAIでござる~

戦国(せんごく)時代ー戦略型シミュレーションソフト 天下統一(てんかとういつ)。略して〝T2〟

2026年からスタートした、精神(メンタル)没入(ダイブ)(タイプ)アクションゲームは日本を中心として、社会現象を巻き起こした。



数あるオンラインゲームの中で、〝T2〟が大ヒットした理由は、その斬新(ざんしん)なゲームシステムにある。



まず、一つめの理由は、世界初の精神(メンタル)没入(ダイブ)機能(システム)を導入していること。ゲームの中の仮想(かそう)世界(せかい)にログインした瞬間、プレイヤーは、現実世界(リアル)生身(からだ)のまま、異なる世界に転生した様な錯覚を覚える。



仮想(かそう)世界(せかい)では、視覚、聴覚、嗅覚などの五感を、現実世界(リアル)と変わりないレベルで感じることができる。

人が触れ合うぬくもりも、

焚火(たきび)のやさしい暖かさも、

水打つ(たき)(つぼ)の涼しさも…

プレイヤーは違和感(いわかん)なく体験することが出来る。

〝T2〟が世に出た後、フルダイブシステムを搭載したゲームは『FD(フルダイブ)-SIM(シミュ)』と呼ばれ、その後のゲーム業界を大きく変える事となる。



ヒットの二つ目の理由。それは、(おく)を超える人間が同時に接続してもサーバーダウンしない量子(りょうし)コンピュータの出現である。



全世界で2億人同時接続という前代(ぜんだい)未聞(みもん)の記録を打ち出した〝T2〟では、そのプレイ人数が(ゆえ)に、国家単位の巨大な社会(コミュニティ)ネットワークが(きず)かれていた。例え、ゲーム世界だったとしても、そこにいる人間の数は〝億〟を超えるのだ。独自の文化や組織、経済が生まれても不思議ではない。


そんな•••現実に見劣りしない世界で、プレイヤーは新しい人生を作ることができるのだ。


現実のうざったいシガラミから解放され、新世界で、()っさらな人生をスタートする。

バイト、サラリーマン、OL、専業(せんぎょう)主婦(しゅふ)、決まり切った現実リアル閉塞(へいそく)感に飽き飽きとしていた現代(げんだい)人が、どハマりするのは必然だった。


また、ゲームを出したタイミングも絶妙だったと言える。

量子(りょうし)コンピューターの出現、電算技術の画期(かっき)(てき)な進化を好機と(とら)え、フルダイブ(FD-SIM)をいち早く作り、世界中に販売した〝T2〟の製作陣は優秀だ。


ヒットする様な傑作(けっさく)も、同じコンテンツがありふれてからでは、埋もれる可能性もある。フルダイブ(FD-SIM)の代名詞=〝T2〟のイメージを最初に作ることが出来ていなければ、これほどのヒットは成せなかっただろう。

「機を見るに(びん)」とはまさにこのこと。何事(なにごと)もタイミングとスピード感が重要なのである。



さて、大きな成功を収めた〝T2〟の中身についてだが…


——ゲームの舞台は戦国時代。ログインしたプレイヤーは、その時代の一員として生きる。


武士(モノノフ)として。

忍者(シノビ)として。

商人(アキンド)

時には、職人(カジシ)として。


生き方は人それぞれ。十人十色だ。

陰陽師(ジュツシ)僧侶(ヒーラー)巫女ミコなどの、少し変わった職業(クラス)もある。

基本(ベース)は、戦国時代の職業をもとに、バランスを崩さない様にゲーム性を高める工夫がなされている。日本が独自に培ってきた職業を、現代人が楽しみながらプレイ出来るように設計されている。


そして、現実世界と違うのは、ゲーム性を豊かにするレベルの概念(がいねん)や、戦闘系スキル、鍛冶スキル、などが導入されているところか。

武士(モノノフ)であれば【剣技】、忍者(シノビ)であれば【忍術】といった戦闘技(スキル)を使うことが出来る。


ただし、刀を振って戦ってるばかりでは、自分の領土(りょうど)を大きくすることはできない。国を大きくするには、周辺諸国(しょこく)との協力関係、つまり同盟(どうめい)が必要なのだ。


それを可能にするのが【軍略スキル】

この世界で最も重要なスキルと言っても過言ではない(スキル)だ。計略、暗殺、裏切りが蔓延(はびこ)る戦国の世を生き残り、その名を天下に(とどろ)かすため、あらゆる生存の策を模索(もさく)することは、個の戦闘能力よりも重要なのだ。脳まで筋肉な(プレイヤー)は、この世界では短命である。


それと余談だが…

〝T2〟は日本発のゲームにも関わらず、海外での人気も高い。戦国時代の代名詞である『(サムライ)』、『忍者(ニンジャ)』というワードは今や、SAMURAI、NINJAと海外でも通じる。それほどまでに日本文化は今、世界中で人気があるのだ。2020年、東京オリンピックをキッカケに、日本文化人気に更なる火がついたのも、理由の一つだと思う。



T2の世界で外国人が、侍や忍者の人生を経験したいと思うのも頷ける。事実、海外からのアクセスは8割を超え、T2人気はグローバルに飛び火していった。同時通訳システムにより、言語の壁がなくなったことも、全世界での人気に拍車をかけた。



また、フルダイブシステムは目や耳に障害のある方の、実際に『見える・聞ける』福祉(ふくし)的体験という意味でも使われた。社会貢献活動の一環で日本政府が〝T2〟を宣伝したことも、大ヒットに繋がった一つの要因である事は間違いない。


天守閣、城下町、寺など、様々な景観や建築物は、戦国時代のまま。わび・さびの聞いた『和』の美しさは、日本の現代人だけでなく、世界中の全ての人をとりこにする。桜、新緑、紅葉、残雪...四季折々に変化する日本の景色が、〝T2〟の最大の売りのひとつだ。



まあ、その他にも理由は色々あるが…

いくつもの因果が重なって、〝T2〟の人気は絶大だった。2億という国家単位の人数が遊ぶゲームの紙幣(しへい)価値は、ネットビジネス界で仮想通貨として扱われるほどだった。



お金とは、それを使う人の多さ、そして信頼(しんらい)性で価値が決まる。今日本が潰れれば、貴方が持っている万札も紙クズ同様になるし、アメリカが潰れれば、ドルの価格は崩壊する。逆に言えば、〝T2〟への絶大な人気と信頼性は、ゲーム内通貨に現実的な価値を与えるほどだったのだ。



トップランカー(領主)の中には、ゲーム内の税収、それだけで現実でも裕福な生活が出来るものもいた。ただ、領主(トップ)に成れるのは、全〝T2〟人口(2億人)中の1000人程度である。


確率にして1000人/2億人なので、確率が高いかと問われれば、現実社会で働いた方が無難だとは思う。


そんなこんなで、私こと野原英二郎も、T2に熱狂する一人のプレイヤーだった。現実(リアル)では、ただの冴えない理系大学生だが...

ーー〝T2〟の世界では、50万の城下(じょうか)(まち)領主(りょうしゅ)として、ゲーム内でも有名だった。

戦乱(せんらん)の世では、国の寿命は長くて一年、早ければ数ヶ月で城主(トップ)は入れ替わるのだが、我が領はゲームが運営が開始(スタート)してから、2年の間、私が領主として(おさ)める事が出来ていた。



領主(トップ)が交代する理由は様々で、その中には身内のクーデターや、同盟国の裏切りもある。

私が長い間、領主として(つと)めてこれたのは、一重(ひとえ)に能力ある仲間(なかま)達と、同盟諸国との良好(りょうこう)な関係を築けていたからである。



ただ、そんな平穏(へいおん)な状態に気を許したのが間違いだった…。世は乱世(らんせ)。上を(ころ)せば成り上がれるという誘惑(ゆうわく)()られるのは珍しくない。気を許せる仲間と言えど、誘惑に勝てないときもあるのだ。



領主(トップ)としての役目を終えて、自由気ままに、また(イチ)から国を作る。また、それも悪くない。」



組織を管理(マネージメント)する側から、自由人プレイヤーへ。次はどこの国に生まれるのであろうか。どんな出会いがあるのだろうか。



心配することはない。領主としての地位(ステータス)は無くなるが、ゲーム内で獲得(ゲット)した武器やアイテム、領主にしか獲得できない特殊スキルや、ゲーム最高のレベル150は受け継がれるのだ...。



思えば、このゲーム内で再復活(リスポーン)するのは初心(ルーキー)者の頃以来だ。乱世とはいえ、城主は城の最上階で(ほとん)どを過ごすため、(たたか)いの最前列に立たされる一平(いっぺい)(そつ)に比べて、圧倒的に死ににくいのだ。



キャラは死を(むか)えるとき、光の粒子のように存在が薄くなる。ぼんやりと(かす)みがかった光は、やがて新しい生命キャラの誕生。つまり、キャラメイクの素材になる。



意識が朦朧(もうろう)となり、次に目を覚ましたときには、新しいキャラメイク選択が始まるはずだ。久方ぶりの死で、やっと思い出してきた。


これが『死』の感覚


ーーそして、『新たな生』の始まり。


…さて、次はどんな人生を歩もうか。


そんな新たなゲーム人生に胸をときめかせ、俺は意識から手を離した…。


ーーーーーーーーーーーーー


【キャラの死亡を確認、レベルを引き継ぎます...スキルを引き継ぎます...道具(アイテム)までの全項目のロード完了...オールクリア...】


【新しい人生をスタートします...キャラメイクを開始します...…

実行処理ができませんでした...

再度実行...…処理に失敗しました...】



ふと気づいた。キャラメイクが始まっていない。目の前がずっと真っ暗なのだ。


『ん?なぜ始まらない?』


〝T2〟ではキャラの見た目を変えられるタイミングは転生の時だけだ。

死んで目がさめる時、前の自分とは違う自分キャラを作ることができる。

俺は結構、キャラメイクに()る方で、〝T2〟を始めた時は、2日もキャラメイクに時間を掛けてしまった。


『まぁ・・・どうせまたキャラメイクで結構な時間を使うんだ。今のうちにイメージだけでも固めておくか。』


最後に使ってたキャラは、渋めのオッサンだった。今回は、気分を変えて若いイケメン風にしようか…それとも、筋骨隆々な能筋(マッチョメン)にしようか…


『領主になっても、デブっちょのおっさんじゃ格好が付かないからな。ーー目元くっきり、眉毛もばしっと・・・。』


(ーーたまに、現実の自分の顔とのギャップに身悶えるんだよなぁ。あー、イケメンに生まれたかったぜ。)


結局色々考えた結果、デフォルトの顔の完成度が高くて、それで始めちゃったこともあったっけ。


『ふぁ~!』ーー真っ暗だし、眠くなってきたな。



【再度実行...処理失敗...……

致命的な機能上の損傷を確認。

キャラメイクの実行をスキップ...…

新しいパッチを適応します...完了。

新しい世界へのリンク開始...】



———次のキャラをどうしようか考えているうちに、結構な時間が経った。


(———それにしても、おかしい。全然、キャラメイクが始まらない。)


2年間、死んでいない間に、ゲームの仕様変更でもあったのだろうか…キャラメイクが始まるまでが異様に遅い。

というか、真っ暗な視界で、意識がずっとあること自体、異常なのだ。こんな状態、初めてなのである。


(エラー??バグ??ログアウトもできないし。どうなってやがる。)


メインサーバーに量子コンピュータを使っている以上、サーバーのダウンなどは考えられない。

死んだら、ぱっと始まるキャラメイクが全く始まらない…どうした事か…。




【新世界へのリンク...80%...90%..新しい世界へのリンク完了...修復不可能な〝T2〟とのリンク回線を遮断...】




ん?なんか声が聞こえる。幻聴?


「だ、、いじょ、、」


なんと言っているのか分からない。システムの音声だろうか?



「だい、じょ、、、だい、じょう、、ぶですか?」



これは異常自体なのだろうか。システムの音声に明らかに焦りの感情がこもっているような。



【新しい世界との同期(シンクロ)完了...これより、新しい人生をスタートします。】




静寂な暗闇から一転、眩しくて前が見えないほどの光が、目の前に広がる。

意識が覚醒し、目がだんだんと光に慣れてくる。



それと同時に、視界に移るのは心配そうな表情の女性の顔...。


(女?ん?キャラメイクは!?ーーな...何が起きている!?)


「大丈夫ですか?聞こえてますー?生きてますか?!」


目の前の黒髪の女の子は、そんな俺に問いかける。


(生きてますか、だって?)


(そんなの、俺が聞きたいよ!というか...

———そもそも、俺は今生きているんでしょうか...?)



キャラメイクも始まらないし、ログアウトもせず、目の前は真っ暗だったのだ。明らかにおかしい状況に頭の理解が追いついていない。


とりあえず…何か話さなきゃ…


咄嗟に出た俺の言葉ーー


「お…拙者(オレ)は、生きてるのでござるか?」



それが俺がこの世界で、口にしたーー初めての言葉だった。












———————————————————————————————————


死に戻り(リスポーン)したら本当に侍になっちゃった!?

新しい武士人生を楽しむ主人公と、その仲間たちの異色で愉快な物語が今始まる


————————————————————————————————————


■筆者のからのご挨拶。


はじめまして。()(だまり)()()です。


まずは、皆様の目に触れたこと、物語の始まりを最後まで読んで下さったことを喜ばしく思います。


この度、皆さまに楽しんで頂ける物語をを描きたくて、ペンではなく、アイフォンを手に取りました。


昔はペンだったのが、今は携帯とは、これを(ひとえ)に時代ですよね。



さてさて、本格的に物語が始まるのは次の話からです。■次話:2019/08/15 23時投稿予定


是非とも楽しんでいただきたく思います。(お気に入り登録していただけると発見しやすいかも)


この先、私自身も、物語を楽しみながら書いていきたいと思います。



今日から1日1話のペースを目標に書いていこうと思います。



どうか手にとって読んで頂けたら幸いです。


では、これからも、末永く、よろしくおねがいします。



■皆様の評価・コメントをお待ちしております。

次話投稿の励みになります。

(★評価欄は、最新話の最下段にあります。ご協力お願いします。)


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