私の正体
このイケメン騎士様が何を望んでいるのか、何となく予想できてしまったのだけれど、全くもって応えられない。
というか…無理でしょ、どう考えても現代人の私には!!
「あーその…話が逸れてしまい申し訳ない。
我々がここに来たことを説明しなければな。
実は…」
「あの…っ!!」
私は無礼を承知で話の腰を折った。
「…もし、その事情というのが闘いだとか実戦を求めてのことなら、謹んでお断り致します!!」
「…貴女は……。」
うぅ…、やっぱり失礼だったかな…?だって、この人明らかにこの中で1番身分が高そうだし、反抗して牢獄行き…なんてこともあり得るんじゃない…?
その想像に今さらながら気付き私はさぁーっと顔が青ざめた。
「す、すみません…。生意気な口をきいて…。
お願いですから、どうか牢獄行きだけは勘弁して頂けると…」
段々気弱になって声まで小さくなってしまう。怖くて顔を向けられず、私は視線を下から動かすことが出来なかった。
「…あぁ、その…どうやら怯えさせてしまったようだな。
…悪かった。何故そういう発想なったのかはよくわからんが、牢獄行きなどするつもりはないから、どうか顔を上げてくれないか?」
その優しい、気遣うような声色に、私はぎゅっと両手を握りしめながら恐る恐る顔を上げ、イケメン騎士様を見ると、ほっとしたように表情を緩めていた。
「……良かった。俺の言葉を少しは信じて貰えたようだな。
……それにしても……。」
「な、なんでしょう!?」
私はじっと見つめられ、居たたまれない気持ちになった。だって現実世界でこんなイケメンと出会う機会なんてないんだもの!!
しかも、日本人でここまで目と目を合わせて話す人なんて滅多にいないし…。
正直目のやり場に困ってしまう。
「貴女は、随分先程とは違う雰囲気なのだな。
どちらの貴女が本当の貴女なのか…興味が湧いてきた。」
先程とは…?
何のことかと思ったけれど、啖呵を切った時のことだと思い当たり、私はあっと声を発した後、慌てて誤解を解いた。
「あ、あの!!先程のあれはただの台詞で!
私はついやり慣れた女騎士様の芝居が出ちゃっただけなんです!!」
「女騎士の…セリフ…芝居…?
それはどういう…?」
イケメン騎士様は困惑した表情だ。
…そりゃ、そうよね。見るからに日本の常識知らなさそうですものね…。
私はここに来てようやく私自身のことを話し始めた。私の名前や国の簡単な世界観。
私が日本という国で生きてきて、声優を目指していたこと。
当然『声優』なんてものこの国にはなくて説明が難しかったんだけど、オペラのような劇はあるということで、芝居については知っていたので、声に特化した役者なのだと説明した。
「…なるほど…。だから貴女の声はあれほど堂に入った姿だったのだな。
俺には、女騎士というよりも王族としての風格すら感じたぞ。」
「…そ、それはどうもありがとうございます…。」
そんな風に臆面もなく褒められると恥ずかしくなる。
「ああ、そういえば俺はまだ名乗ってもいなかったな。大変失礼した。
私は、このイノセント王国の第一王子、ユーリオという。」
「……え」
「カリン…と、いったか?
…カリン殿…異世界の迷い人よ。
どうか、この国を救って欲しい。
我々の『戦神子』として。」
いつの間にやら部屋の中には先程外で見た甲冑姿の騎士が複数入ってきていて、私に向かって一斉に頭を下げてきた。
え、待って、これほんと、どういう状況!?
私、さっき断ったよね!!!?
(どーゆーことですか、誰か教えてー!!!)
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ーそして、冒頭に戻るー
やっと、最初のシーンまで辿り着きましたー!!
ここから物語が始まるわけです。
なるべく、ここからはサクサク進めたいなぁとは思ってます…。
うん、頑張ろう私…っ。