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文化の違い

その後、外で見掛けた神殿の修道女(やっぱりここは神殿だったらしい)が数人やって来て、隣室に強制連行されると、あっという間に着替えさせられた。

最初、一人で出来るからと断ろうとしたけれど、よくよく考えたら異世界の服装の常識なんて何も知らない私。着方がわからないとかだと後で困るのは私自身だな…と思い直し、しぶしぶお任せすることにした。


私も彼女達同様、全身白装束になるのかなぁ…とハラハラしていたけれど、ふわりとした袖のブラウスにロング丈のワンピースという至って普通の仕様でほっとひと安心した。

…コルセットとかが出てくることはなかったけれど、ワンピースの腰部分には後ろ側に紐がついていてちょっと締め付けられてぐえっとあらぬ声が出そうになったのはご愛敬だ。

ちなみに、チャックやボタンが着いた洋服もあるとかで、思っていたより先進的だな…なんて思ったりした。


着替えるときにそれとなく服装について聞いてみたのだけれど、やっぱりこの世界では膝丈の服は普段着として存在しないらしい。

私のように短い丈の服を着るのは、娼婦か閨の中だけ、なのだとか。


(そりゃ、男性陣大慌てになるわよね!!)


私自身の魅力でも何でもなかったことにほっとするやら悲しいやら。やっぱりチートなんてそうそう起きるものではないのだ。


「すみません、お待たせ致しました。」


私は着替え終わると、再び応接間に戻った。


とにかく、この状況を把握して、今後の対策を考えなければ。


私が元の世界に帰ることが出来るのか。

出来たとして、帰るために何かやらなければいけないのか。


ーアニメや小説では、帰れないパターンと帰れるパターンが存在するー


まず帰れない場合、今後の身の振り方を考えなければいけない。

チートが何もない私は、庶民として生きるのが妥当だけれど、果たしてこの国(世界)で、異世界人はどういう目で見られるのか。

これは凄く重要な要素だ。


そして、帰れる場合。

その場合、王道なのは私になにかしらの使命があり、それをクリアすると元の世界に帰れるという展開だ。

とはいえ、私には何もない。

…もう虚しくなるくらい連呼するけど、私はいたって平凡な人間だ。

容姿も普通。頭脳も運動も普通。悪くはないけど飛び抜けて優れてもいない。

高卒程度の知識はあれど、その知識を活かして生活…なんて私には出来そうもないし…。


この目の前にいるイケメン騎士様は、一体私に何を求めているんだろう?


「それで、本題なのだが……」


私がぐるぐると思考の渦の中で悶々としていたら、イケメン騎士様から話を切り出してくれた。

正直私からどう言おうか迷っていたから助かった。


「貴女は、異世界からの迷い人で間違いないだろうか。」

「…はぁ、多分…?」

なんとも間抜けな発言だが仕方ない。何しろここに来て初めて会ったのがこの人達。しかも、この神殿内部しかこの世界を知らない私は、そうとしか答えられなかった。


イケメン騎士様は拍子抜けした顔をした後しばし考えに耽っていたけれど、、次いでキリッと真面目な顔で私の方に向き直り、再び話し掛けてきた。


「…では、1つお伺いしたいのだが…。

貴女は武芸の心得がおありだろうか。」


武芸…とな!?


「あ…いえ、運動は一通り学校でやりましたが、正直有段者になるほどの腕は持ってないですね…」

私はばか正直に答えてしまった。

剣道や柔道、空手など、体育の授業で必須だったからやったけど、私は人並程度にしか出来ない。基礎レベルだ。


「ゆうだんしゃ…というのはよくわからないが、武芸を嗜んでいらっしゃるなら、心強い!

ならば、実戦をされたことは…?」


ぱぁと表情が明るくなり、力強い眼差しで見つめてくる。

いやいやいや!!

嗜んで…って、この人絶対何か勘違いしてるよね!?しかも実戦って…この人の姿格好を見ても試合が大会が…とかそんなことじゃなくて、戦争とかそういう意味の実戦だよね…!?


「あ…あの!!勘違いさせたなら申し訳ありません。

一通りやった…と言いましたが、それは私のクニのスポーツ…いえ、武芸の、ほんとに基礎の基礎しか出来ません。

それも実戦なんてもっての他で…我が国ではここ80年程大きな戦争はなく、戦ったことなんて1度もないです。」


「…なんと…そんな夢のような世界が異国には散財するのか…」


あ…その口振り…。

ここはどうやら平和な国ではないみたいだ。

なんだかひじょーに嫌な予感がする。


私は今すぐ回れ右をして、この場から逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。

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