脱出
広間の扉をゆっくり慎重に開け、周囲の様子を伺う。
とりあえず、人気はゼロ。完全放置プレイだ。
無人なのが返って怪しいほどだ。
(仮にも私を召喚したんでしょ!?
もうちょっと思いやりっていうか気遣いっていうかあっても良くない!?)
段々腹が立ってきた。行き場のない苛立ちが募り、叫びだしそうになったけれど、こんなことで不用意に見つかり、要らぬ怪我など負いたくない。
一回深呼吸をしよう。
よし、落ち着いた!
何よりもまずは身の安全と現状把握が最優先だ。
広く長い廊下をなるべく素早く、音を立てずに通り抜ける。
不幸中の幸いなのは、廊下に窓がいくつもあり、外が見えること。
もしも迷宮のような建物で延々と外が見えない状態だったら、出るまでに気が狂っていたかもしれない。
太陽の光が燦々と射し込み、少しだけ気持ちを明るくさせた。心細くないかと言われれば嘘になるかど、地獄のような場所じゃないことにかんしゃしよう。うん、そうしよう。
それから、30分くらい経過しただろうか。
ようやく外に続く扉を見つけた。
思いの外、建物は大きかった。
…いや、大広間を見たときなんとなくはわかっていたけ)ど、現実逃避していた私はあえて考えないようにしていた。
めっっっちゃデカかったよ!!!
なんなのよ、ここは!!
なぁんて、なんとなく察してはいたけど。
異世界あるあるで、こういう召喚が行われる場合、王宮、もしくは神殿であることが多い。
ーどうやら今回は後者だったらしいー
何故なら、教会でよく見るマリア像のようなものが置かれた部屋や中庭に明らかに不自然な泉のようなものまで見つけた。
泉はどこから水が湧いているのか、建物と建物に囲まれた場所にあるのに、こんこんと涌き続けていた。
そんなものを、何故見つけたかって?
…さ迷ってたら、入り口に向かうどころか神殿の最奥に行き着いたんですよ…
結果建物内全て見て回るはめに。…どうしてこうなった。
ただ、そのお陰でわかったことがいくつかある。
やっぱり、ここには今誰1人人がいない。
なのに、生活していた形跡があるという最大の謎。
…あり得なくない…?無人にしちゃダメでしょ、神聖な場所なのに。
まぁ、そのお陰で今こうして脱出出来るんだけど。
ギィーと重厚な扉が音を立てて開く。
さっきも思ったけど、やっぱり不用心だよね?
こんな簡単に扉開いたら、『泥棒ようこそ!!好きなの取ってって♪』状態だよ!?
…まぁ私心配することじゃないけどさ…。
そんなことに気を取られていたから私は気付くのが遅れた。
目の前には、いつの間にか、驚愕の表情を浮かべこちらを凝視する集団が立ち竦んでいたのだった。
なかなか物語が始まらない!!
とりあえずやっと、人と絡ませられそうです、こんな状況ですが(笑)