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知らぬ土地で

以前、歴史の教科書で見た西洋の建築様式に似た白磁の建物。日本ではあり得ないだろう建物の広さと高さがあるこの広間は、見るからに先程までいた公園等ではないだろう。

…それにまるで某アトラクションに乗ったかのような乗り物酔いとでも言うべき浮遊感が今も抜けておらず、頭がクラクラしている。


…なんで、私がこんなことに……?

人より優れたものなど何一つない。

身体能力も容姿も普通。どこにでもいるただのフリーターだよ?

アニメでよく聞くのは異世界に行ってからチート能力発揮して、勇者になったり巫女になったりして世界を救うっていうストーリーだけど、今私の手元を見下ろしても、何かを持っているわけでもなく、何かを感じることもない。

ただただ落ちた時に尻餅ついたのがジンジンと痛いだけだ。


「………さいあく………」


思わず口に出したのは悪態の一言。


だって、こんなの誰も望んでない!!

何の力もない私が、こんな知らない場所に来て一体何が出来るっていうの!?

チート能力でハッピーエンドになれるのは物語の中だからだ。現実なんて、だだっ広い空間に1人落とされて、何も出来ない、何もわからない唯人の私が独り佇んでいるだけだ。


━━そう。

ここは、まるで何かを召喚したかのように、足元には魔方陣のような模様が描かれている。

でも実際は他には人1人としていない空間にぽつりと独り私が座り込んでいるだけ。建物が立派な分余計寂しさが募る。


(普通さ、こういうときって召喚した魔導師とか王族とかが周りを囲って、召喚成功に喜びの声をあげたりするものじゃない…?いや、実際喜ばれても困るけども!!)


複雑な気持ちを抱えつつ、このままでは埒があかないのも理解している。

私は1つ溜め息をつき起き上がると、どこも怪我がないか改めて確認した。


…うん、さっきのお尻のこと以外は大丈夫そうだ。


ひとまず状況把握をする必要があると思い、私はゆっくりと歩き出した。

すると、カツンカツンとヒールがやけに響き渡り、慌てて靴を脱ぎ右手に握りしめた。


もしも私の存在がこの世界で予期せぬ登場で、不法侵入とか不審者だと思われたら…と思ったら人目につくのが怖くなり、私は靴下のまま広間を静かに抜け出したのだった。


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