プロローグ・2
強くて格好いい彼女の姿に私は引き込まれた。
弱くて、1人では何も出来ないヒロインを影で支え守った女騎士。
物語の中では完全に脇役だったけれど、私にとっては唯一無二の"ヒーロー"だった。
【弱虫カマ女】と、不名誉な呼び名で呼ばれたいじめ時代。
声や見た目でバカにされ、何も反撃してこないとわかるとさらにいじめられた。きっと彼らには良いストレス発散相手だったのだろう。
そんな私の黒歴史は、彼女と出会って変わった。
気持ちで負けないように、いつも彼女の言葉を胸に刻み、いじめっ子に果敢に言い返した。
そしたら今度は【男女】なんて呼ばれるようになったけれど、気にしないことにした。
…気にしては、負けだと思った。
その結果、表面上は強気で明るいボーイッシュな女の子になったけれど、その内面は相変わらず弱虫で臆病なままで。
いじめっ子のせいで心の傷は修復されないまま、自分に自信が持てないようになってしまった。
それは、ワタシの夢にも大きな影響を与えていた。
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「はぁ~。こうやって自主練でなら、思いっきり出せるのになぁ。。」
私は思わず独りごちた。
人の目をどうしても気にしてしまう私の性格は、芝居にも悪影響を与えていて、どうしても全力を出しきれない。
こうして1人の時には出来ることが、誰かの前でやろうとすると上手くいかない。
でも、それじゃあ意味がないのだ。
「さって、女騎士様のセリフで声出ししたら、今日はもう家に帰るかなぁ。」
このままだと、どんどん気が滅入りそうだったので、今日はおとなしく帰ることにした。
腰に手を当て、剣を構える仕草で前を睨み付ける。
『私の剣は貴女を守るためにある!
必ず勝って貴女と共に帰ると誓います。
さぁ、行くぞ!!』
そう決め台詞を言ったと思った次の瞬間。
向かい側から太陽の光が眩しいくらいに目に入った。
…って、太陽光にしてはおかしいよね!?
この時間はそろそろ太陽が沈む時間だし、何より、目も開けられないくらいの眩しさってどういうこと!?
両手で顔を隠しながら、私はどんどん光が増してくる空を見ていられなくて、きつく目を閉じた。
ぐらり、と身体が傾ぐのを感じながら、私は誰かに腕を引っ張られる気配を感じて怖くなって思いっきり突き飛ばした。
どさっと落ちる感触をお尻に感じたと思ったら、触れたのは公園の草……などではなく、変な模様が描かれた見覚えのない部屋の床だった。
……うそでしょ……?
まさか、私がリアル異世界転生……っ!?