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魔道具

俺は道場の帰りがけ、いつもの寮への帰宅途中、いつものごとく魔道具屋のショーウィンドウを眺めていた。


--魔道具--


それは、主にモンスターから採取される魔核という素材に魔術式を書き込み、その魔核を組み込まれた道具。魔力の供給は魔術式次第だが、使用者からでも魔石からでも、はたまた大気中に存在する魔力でもいい。


俺は、脳の魔術処理機能に障害があるため魔法が使えないが、魔力はある。


だから、俺にだって魔道具は使える。


だが、魔道具屋で俺が見ているのは魔道具じゃあない。魔核だ。


「はぁ・・・小さいなぁ・・・」


ため息が出る。


というのも、魔道具の魔法の規模は魔核の大きさに比例する。今展示されている魔核では、せいぜい生活魔法と呼ばれる初級魔法とも呼べない規模の魔法しか使えない。


「俺にモンスターを倒せる力があればなぁ」


モンスターなんて町から一歩出ればそこかしこにいるっちゃいるんだが、俺が求めているモンスターはB級以上の強力なモンスターだ。B級以上のモンスターからは良い魔核が取れる。それこそ初級・中級程度の魔法が使える程度の魔核だ。


C級以下のモンスターの魔核では大した魔術式は書けない。


「冒険者ギルドめ、もうちょっと良い魔核を市場に供給してもいいだろうに・・・」


魔核は主に冒険者がモンスターを倒して手に入れるものだ。そしてその魔核は冒険者ギルドが主に買い取る。買い取られた魔核のうち、B級以上の魔核は王国が買い取る仕組みだ。だから、市場にはC級以下の魔核しか供給されない。


ただ、王国魔術学園では魔工技師の技術向上のためにわずかばかりB級の魔核も提供されている。

俺が王国魔術学園に入学した理由の一つだ。


そうしてショーウィンドウを眺めていると、後ろからツンツンとつつかれた。

後ろを振り返れば、ショートカットの俺と同い年くらいの女の子が仁王立ちしている。


「商売の、じゃ・ま・なん・や・け・どぉ?」


俺は冷や汗をかいた。

彼女の名前はルーという。


俺と同じ魔工技師養成コースに通う王国魔術学園に通う学生だ。


「えっと・・・ルーさん?たまに魔核買ってますよね?たまには見るだけというのもいいじゃないですか・・・」


「あのなぁ。クロっちはいっつもいーっつも魔核ばっかりや。うちは魔道具屋やで??魔道具の原材料買われても大した利益にならへんのやけど?」


ルーのちょっと細い目が怖い・・・


「今度はちゃんと魔道具買うよ。うん、約束する。」


「えっ!?ほんまに?それっていつ?いつや??」


途端に形相を崩すルー。ふっ、ちょろいぜ。だが、いつ買うかは言えない。なんせ金がない。俺は最低限の仕送りしかしてもらってないからな。


「まぁ、まとまった金が入ったらね、ははは・・・」


「はぁ、そういうと思ったわ。なんや、道場の帰りか?夕飯は食べたん?」


「いや、まだだけど?」


「なんや、それはよ言うてや。ウチもこれから夕飯なんよ。ほら、はいってはいって」


ありがたいことに、ルーの家も俺に夕飯をご馳走してくれるありがたい家の一つだ。

だが、今日はなんとなくそんな気分じゃないから断ることにした。


「いや、今日はあんまり食欲ないんだ。だから寮でちょっとしたもの食べるよ。」


ルーもこういうケースには慣れているのか、あまり食い下がらない。

基本的にさっぱりした性格だから、そこはとても気が楽だ。


「そっかー。それじゃあ、また明日、部室でな~」


ぶんぶん手を振って見送るルーを背に、俺は寮へと帰っていった。



私、ことルーは今日も店番や。


店番かて、手元には魔術書を置いて、それを読みながら店番やってる。なんで魔術書読んでるかて?そら決まっとる。あいつや、クロっちに少しでも追いつくためや。


クロっちは本当にすごい。どうやったら魔法が使えんのにあれほど魔術に精通できるんや・・・


別にクロっちは最初から魔術に精通しとったわけじゃあない。


昔っからうちの店のショーウィンドウみとったなぁ。そしたらうちのおとんが「ほぅ?」と興味もってなぁ。


次第に、うちの店に出入りしだし、しまいにはおとんと一緒に魔道具作り始める始末や。


クロっちが魔核に魔術式を書き込む姿、ちょっとキュンッってなる。


あの真剣なまなざしと正確な手つき、そして記述される魔術式の美しさ。一切の無駄がない。あれはもう芸術や。残念やけど今のうちにはあれはマネできん。


クロっちは普段から魔術書持ち歩きながら魔術の勉強してんねん。そして、それならうちかてマネできる。せめてそういうことせんと一生追いつけんやろ。


「お」


そしたら、クロっちがいつものようにショーウィンドウを眺めとるやないか。ごっつ物欲しそうな顔してん。なんか、かわいいなぁ~。


だから、ちょっとからかったろー


「商売の、じゃ・ま・なん・や・け・どぉ?」


どや?こっち振り向くしかないやろ?

ほんと、魔道具とか魔核ばっかり見んと、たまにはうちを見てほしいわ。


あれ、化粧とか大丈夫やろか?


クロっちのやつ、ちょっとびびってるなぁ。


「えっと・・・ルーさん?たまに魔核買ってますよね?たまには見るだけというのもいいじゃないですか・・・」


「あのなぁ。クロっちはいっつもいーっつも魔核ばっかりや。うちは魔道具屋やで??魔道具の原材料買われても大した利益にならへんのやけど?」


魔核さえも、たまには忘れてもええんやで?

そして、話は流れていき、、、あ、そうや、夕飯さそお。

でも、どうも道場帰りみたいやな・・・シルフィーんとこで食べてきたかもしれんなぁ・・・


「そういうと思ったわ。なんや、道場の帰りか?夕飯は食べたん?」


「いや、まだだけど?」


「なんや、それはよ言うてや。ウチもこれから夕飯なんよ。ほら、はいってはいって」


これはチャンスや!なんや、シルフィーのやつ、クロっちを誘わんかったんかい。

女の眼にはわかる。シルフィーはクロっちに惚れとるからなぁ、いわば私のライバル。

絶対に負けられへん。


そやけど・・・


「いや、今日はあんまり食欲ないんだ。だから寮でちょっとしたもの食べるよ。」


残念やわ。でも、まぁええか。シルフィーと違ってうちには時間というアドバンテージがあるもんな。いずれクロっちは道場やめるやろうし、シルフィーはどこぞの貴族と結婚するはずや。そしたらクロっちは完全にフリー。しかもこの国でクロっちの魅力に気づいとるんは私くらいしかおらんやろなぁ。


「そっかー。それじゃあ、また明日、部室でな~」


しかも、私とクロっちは部活動も同じや。「魔道具研究会」。同学年の部員は私たち含めてたったの4人やし、女は私だけや。ゆっくり確実に攻めたるからな?


覚悟してな~


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