第91話 作戦司令部は大忙し
「グループ1Gの増援、完了しました」
「グループ2Aは大丈夫とのこと。すでにゴブリン30匹退治したとのこと」
「グループ3Kの救援は向かっていますが、途中で小規模なゴブリンの群れに遭遇。予定が遅れます」
放送スキル利用と魔石マイクでリアルタイム情報が続々と入ってくる。
200人も参加する大規模な作戦になると情報力が勝敗を決するものだな。
今のところ、大きな被害は出ていない様子だ。
予報を使った作戦はうまく機能している。
このまま、いけばいいんだけどね。
「それでは、次の一時間分のリスク予報いくぞ」
レイドリーダーが僕ら予報チームに振り返って話しかける。
「「「はい」」」
「これから1時間の間に、危機を迎えるグループはありますか?」
《ピンポンパンポーン》
「今の作戦を継続するなら危機を迎えるグループはないでしょう」
「やっぱりそうか」
レイドリーダーは安心した表情になる。
今の作戦はゴブリンの森のゾーン1と呼ばれるエリアに各グループが展開している。
ゾーンは拠点がある位置の方向から森の奥に向かって番号がつけられていて、ゾーン1からゾーン9までである。
ゾーン1それほど危険があるエリアではなく、普通のゴブリン程度しかいないのだ。
しかし、用心をして予報を使って作戦は進行させていく。
「それでは、ゾーン2に進みますか?」
「ちょっと待て。前回の強行偵察でもゾーン2はゴブリンソルジャーがいたエリアだからな」
「やはり、C級レベルの冒険者だと危険ですか」
「同数ならまだ戦えるが、敵の方が数が多いとなると危険だ。しかし、危険だからと言って侵攻しない訳にもいくまい」
たしかに愚問だった。
レンガ積みと違って魔物討伐では危険があってあって当たり前。
予報を使ってどれだけ、危険を減らせるかって話か。
「もう少しグループを連携させたらどうかな。2グループの戦力ならゴブリンソルジャーの群れでも戦えるんじゃないか?」
「ジェラド。それをすると探索に穴が出る可能性がある。見落として挟み撃ちにあったら、目も当てられないぞ」
公国の騎士ジェラドさんも、作戦会議に参加している。
ジェラドさんはセントラルグループのリーダーだ。彼のグループが参戦する事態になると予備がゼロになってしまう。
そうならないように、予報を活用することだな。
「チーム1の担当エリアから順次ゾーン2に侵攻する作戦を提案する!」
ミリーちゃんが提案する。話し方からしてテンプレスキル発動しているな。
「それが一番だな。一気に侵攻するより遊撃隊をシフトできる分だけ危険は減るな」
「ちょっと待って。それは嫌な予感がするの」
クレアさんが反対する。予感スキルかな。
「よし、予報で決めよう。ゾーン2に順次侵攻するとどんな結果になるのか?」
《ピンポンパンポーン》
「チーム2の半数が戦力外になるでしょう」
「なんと、チーム2のエリアに敵主力がいるということか?」
《ピンポンパンポーン》
「ゾーン2の敵主力はチーム2の担当エリアでしょう」
「そうなると、チーム2を補強しよう。チーム1とチーム3のそれぞれ1/3づつ、チーム2に合流する。それだとどうなる?」
《ピンポンパンポーン》
「チーム2の担当するエリアは損害が激減するでしょう」
「よし、それでいこう。それぞれのチームの中でどのグループを動かすかは、各チーム作戦担当に任せる」
前線に出ている4つのチームはそれぞれ2人のチーム作戦担当が拠点に残って指示を出している。
各チームの作戦担当は現在のグループごとの展開を報告で把握している。
新たな作戦に合わせるため、グループの配置を決めていく。
各チームの作戦担当は決まった作戦を伝えるため、前線に伝令を向かわせね。
「とうとうゾーン2の闘い、始まりますね」
「おう。いよいよ、ゴブリン上位種と対峙することになるな」
《ピンポンパンポーン》
「ゴブリンソルジャーの群れと闘うことになるでしょう」
「それは予報だな。予報もそう言っているし、結果が楽しみだ」
それから一時間してゾーン2侵攻が開始された。
チーム2担当エリアで上位種の群れとの闘いが起きる。
「こちら、グループ2C。リーダー1、ソルジャー8と遭遇。戦力不足なので増援を頼む」
「グループ2A。普通のゴブリンしかいないぞ。もう30匹は倒したがな」
「グループ1D。ゴブリン上位種と思える群れを発見。こちらには気づいてない模様。追跡します」
報告があるたびに指令を出して伝令が動く。今のところは大きな被害もなく順調だ。
「グループ2C。増援が到着、攻撃を開始。しかし、敵は逃げ出してゾーン3に入る。命令どおり追跡は中止」
ゴブリンソルジャー発見の報告はだんだんと増えてきている。
しかし、残念ながら、ゴブリンソルジャーを倒した報告はそれほど多くない。
今のところソルジャーが5匹。リーダーはゼロ。
「さすがにゴブリンソルジャーともなると、無謀な戦い方はしないか」
「そうですね。奥に行ってしまいますね。奥には何があるか分からないから危険ですよ、レイドリーダー」
「分かっているよ、ジュート。どうしたものかな」
さらに一時間ほどして、ゾーン2はほぼ制圧したことが確認された。
倒したのは、ゴブリンソルジャーが12匹、ゴブリンリーダーが2匹だ。
残りはゾーン3に撤退している。
次はゾーン3だ。いよいよ、危険が増してきたぞ。
まだ、ゴブリンロードはみつかりませんね。もっと奥にいるのかな。




