第84話 ゴブリン・ロード対策
「どうだ? 戦ってみて」
「それがな、レイドリーダー。本当にゴブリンなのか? というのが本音だ」
余裕で100体のゴブリンを狩るつもりが、相当ダメージを負ってしまった、力押しパーティのリーダーが答える。
「それは、ゴブリンと言っても、ゴブリン・リーダーに率いられたゴブリン・ソルジャーだからな」
「いや、そうではなくて。その前に普通のゴブリンの群れに遭遇したんだが。そいつらも、普通のゴブリンより闘いがうまいというか」
「ただのゴブリンが?」
本来、ゴブリンというのは初心者冒険者。F級あたりの冒険者が戦う魔物として認識されている。
彼らの様なB級にとっては、朝飯前のストレッチにしかならない相手のはずだ。
「それは、ゴブリン・ロード効果じゃな」
新たに会議に参加した、ゴブリン博士と呼ばれる老人が発言する。
ゴブリンのことを研究して、40年と言われている老人だ。
「ゴブリン・ロード効果というと?」
「ゴブリン・ロードに率いられているゴブリンは特別なスキルが付加されると言われている。だから、普通のゴブリンにしか見えないゴブリンでも、上位種のゴブリン・ファイター並みの戦闘力を発揮するのじゃ」
なんと。
3000体のゴブリンだと思っていたが、それぞれがゴブリン・ファイター級だというのか。
「今回討伐に参加するのは、最低でD級だから普通のゴブリンで同数なら負けることはないだろう。しかし、相手が2倍ともなれば分からなくなるな」
「そこなんだよ、レイドリーダー。俺たちのようなB級なら問題ないが、D級だと被害が出まくる可能性があるな」
「今回は分散討伐はやめた方がいいということだな」
魔物討伐は、対象エリアを小さく分けてそれぞれに担当パーティを割り当てていくのが普通だ。
今回の討伐で、それをしてしまうとD級冒険者は全滅になりかねない。
「何しろ、それほど森の奥に入っていないのに、ゴブリン・リーダーとゴブリン・ソルジャーだ。しっかりと作戦を立てないと損害がすごいことになるぞ」
「そうだな。いい方法はないか、予報屋」
「連絡手段が問題なの」
いきなり、ミリーちゃんが答えた。
まだ成人したばかりの新成人が答えたからレイドリーダーがびっくりしている。
「あ、彼女はミリー。テンプレという戦略を立てるスーパーレアスキルの持ち主です」
「なんと。スーパーレアスキル!それでは今回の作戦に協力してくれ」
「確かに連絡手段だな。何かいい方法はないだろうか?」
「放送スキルはどうかしら」
ミリーちゃんが提案する。
予報対決のときに、放送で実況中継を聞いていたからね。
「放送スキルか。それでうまくいくのか?」
《ピンポンパンポーン》
「放送スキルでチーム間の連係が強化されるでしょう」
「そうだな。それはいけそうだな。放送スキルを持つ人を手配するとしよう」
放送スキルを使えるとなると、チームリーダーに集音魔石を持たせればいい。
集音魔石に話した言葉は他のチームと共有することができる。
「ただし、放送スキルだと何kmも離れたところには届かないな。せいぜい1kmだろう」
「そうなりますね。すると、展開するエリアは1kmが限界ですね」
1kmの範囲に200人が展開する。
相当高密度の展開だ。
「ところで、チーム分けはどう考えているのかしら?」
「チーム分け? いつも活動しているパーティ毎だろう。それじゃダメか?」
《ピンポンパンポーン》
「冒険者パーティのチーム分けでは、高密度展開では効率が悪くなるでしょう」
「おお、そうだった。つい、いつもの担当エリア方式で考えていた」
チーム分けは、ミリーちゃん提案の軍隊方式を採用することになった。
ミリーちゃん自体は軍隊がどんな編成になっているか全く知らないのだが、会議参加者の中には軍隊経験者がいて、ミリーちゃんの質問に答えてくれた。
「待って。ひとつ特別チームがいると思うの。ゴブリン・ロードが出現したときのために」
今度はクレアさん。
たぶん、予感スキルで気が付いたのだろう。
「おお、そうだった。一番戦力があって、応用が利くチームだな」
レイド・リーダーが起きうる状況を話し、その度に僕ら予報屋パーティの誰かが提案する。
それを他の参加者も加えて検討して、最適と思う対応策を決める。
最後に僕に質問する。
《ピンポンパンポーン》
「その作戦なら、うまくいくでしょう」
数多くのケースを検討して、対策を決める。
その対策ができるようにチーム分けをする。
作戦によってチームが合同したり、分散したり。
複雑な行動が必要となる。
それを取り仕切るのは、放送スキルを持った人と一緒にいるオペレータだ。
今回のオペレータはレイドリーダーさん。
作戦を立てていて、レイドリーダーさんは驚くほど柔軟性を持っていることが分かった。
最初は予報屋パーティに漠然と質問を投げていたが、しばらくすると誰に質問すれば一番いい答えが出るか、理解したようだ。
僕らの使い方をしっかりと把握している。
「これらの作戦を元にゴブリン・ロードと闘うと勝てるだろうか?」
《ピンポンパンポーン》
「苦戦はするけど、最後は勝利するでしょう」
「よし、いけるぞ」
「「「「やったー」」」
みんな大喜びだ。
そんな中、クレアさんひとり、ぼーっとした顔をしている。
「待って! まだ、いるわ。ゴブリン・ロードより強い奴だ」
なんと。
ここに来て、予感スキルによる爆弾発言。
「それはどんな奴だ?」
「分からないわ」
レイドリーダーは僕に向かった質問する。
「ゴブリンの森にいるゴブリン・ロードより強い魔物って何か?」
あれ?
予報スキルが反応しない。
本当にいるのか?
「ゴブリンの森にいるゴブリン・ロードより強い魔物はいるのか?」
《ピンポンパンポーン》
「一体だけいるでしょう」
これには反応した。
どういうことだ?
「ミリーちゃん、ゴブリン・ロードより強い魔物って何か分かるか?」
「テンプレ不足で判断できないって」
困った。
予感・予報・テンプレのどれでも、最大の敵が分からない。
分かっていることは、ただいるってことだけ。
この魔物討伐、どうなってしまうのか?
予報屋パーティが活躍しています。




