第83話 魔物討伐は余裕のはずでは?
「それでは3日後に始まる魔物討伐の会議を行う」
出来立てのレイド・イエローの拠点で会議が始まった。
議長は、レイドリーダーでA級冒険者でもある。
参加しているのは、A級冒険者やB級冒険者。
他には、衛兵隊長さんと、魔物に詳しい長老さん。
そして、予報屋の3人だ。
参加者は全部で12人。
「おいおい。レイドリーダーさんよ。会議なんて必要なのかい」
B級冒険者のひとり、いかにも力押ししそうな剣士が発言する。
「それはどういう意味か?」
「どういう意味かって? 笑わせるなよ。ゴブリンの森だぞ。ゴブリン相手になんで会議が必要なんだ?」
他の人達がどんな顔をしているのか見まわすと。
「やれやれ」という顔が7人。
「それもそうだ」という顔が3人。
「ゴブリンの森と言っても、魔物はゴブリンだけとは限らないぞ」
「ゴブリンの他にどんな魔物がいるというのかよ」
「それは、予報屋に聞くことにしよう」
「予報屋? なんだ、それは?」
レイド・リーダーさんが僕らのことを紹介してくれた。
「それで、なんで予報屋さんとやらがここにいるんだ?」
「今回の魔物討伐。危険がありそうな予報がでているのだ」
「それはどういうことなんだ?」
「まずは、予報屋さんにゴブリンの森の状況を質問するとしよう」
力押し剣士は、予報屋が何をいうのか、そこには興味があると見えて静かにしている。
「予報屋に聞く。ゴブリンの森にいる魔物はどんな魔物なのか?」
《ピンポンパンポーン》
「ほとんどがゴブリンでしょう」
「ほら、予報屋だって、ゴブリンの森にはゴブリンしかいないと言っているぞ。E級冒険者じゃないんだから、俺たちがゴブリンに負けると思っているのか?」
「ちょっと待て。もう少し、詳しく聞くぞ。予報屋。ゴブリンはどのくらいいるのか?」
《ピンポンパンポーン》
「ゴブリンは3千体程度の数でしょう」
「3千だ?なんだそれは。300の間違いではないのか?」
「すごい数だな。それだけいるということは、もしかしたら上位種もいるということか?」
《ピンポンパンポーン》
「ゴブリンロードがいるでしょう」
「ゴブリンロード! ふざけるな。そんな奴がこんなところにいるはずないだろ!」
力押し剣士が否定をする。
だけど、レイド・リーダーは考え込んだ。
「ゴブリンロードに率いられたゴブリン3000体か。軍隊レベルの戦力になるな」
「おいおい。そんなたわごとを信じるのか? ゴブリンの森にそんな奴いるはずがないだろ」
レイド・イエローの戦力は冒険者が中心で衛兵も加えて200人。
一番多いのが、C級とD級の冒険者だ。
ただのゴブリンの群れだったら、数倍の数がいてもゴブリンに負けることはない。
しかし、ゴブリンロードがいるとなると別だ。
組織だった行動をするゴブリン3000体と考えた方が良い。
それに対して、軍隊ではない冒険者中心のレイド・イエロー。
普通に戦うと全滅ということすら起きるだろう。
「ゴブリンロードがいるとなると、街を襲うことすら考えられる。街は無理でも周辺の村を襲うのは当然ありうる。討伐を成功させないといけない」
あ、レイド・リーダーさん。今、騎士勲章のこと考えているんじゃないかな。
ゴブリンロードを討伐したとなると、騎士勲章がもらえてもおかしくはないね。
「しかし、本当にゴブリンロードはいるのかい。予報屋が外れることだってあるみたいだしな」
たしかに、予報は100%確実だとは言えない。
しかし、ゴブリンロードがいる可能性があるのは間違いない。
「それでは、まずは偵察をしてみようではないか。それも今からはどうだ?」
「ゴブリンロードがいるかどうかは分からないが、ゴブリンが3000体もいるなら、森に入ったばかりのところでも、多数のゴブリンに遭遇するってことだよな。レイドリーダー」
「そうなるだろう」
「それなら、俺のパーティに任せてくれ。30分もあれば結果はでるだろう」
「よし。強行偵察任務だ。数が多いことが分かれば、それでいい。無理はするな」
「俺たちが行くんだぞ。ゴブリンを100体くらいは血祭にしてやらあ」
正式に魔物討伐が始まる前であっても、情報収集は認められている。
本来、その程度の任務であればC級冒険者パーティで十分だ。
しかし、ゴブリンロードに率いられている可能性がある以上、B級冒険者パーティで行くのは悪い選択ではない。
それも、力押し剣士のパーティとなれば、戦力もバランスも十分だ。
会議を中断して、強行偵察を実行することになった。
パーティメンバーを集めるのに1時間ほどかかって、7名のB級冒険者パーティがゴブリンの森に向かって出発しようとしている。
「おい、予報屋。予報してくれ! 俺たちがどのくらいゴブリンを倒してくるのか?」
《ピンポンパンポーン》
「100体を少し超える数でしょう」
「おう。分かった。100体は倒してくるぞ」
さまざまな巨大な武器で武装した7名の戦士たちはゴブリンの森に入っていった。
☆ ☆ ☆
「クレアさん。変な予感はないですよね」
「大丈夫よ。私の予感でも、彼らは100体のゴブリンを倒してくるわ」
「ミリーちゃんはどう思う?」
「ごめんなさい。闘いのことはよくわからないの」
「そうだよな。うん、大丈夫。彼らはやってくれるだろう」
予報屋パーティの3人がそんな話をしていると、力押しB級パーティが帰ってきた。
時間にして30分、予定どおりだ。
しかし、その姿は血みどろだった。
ゴブリンの血は濃緑なので、赤い血は冒険者達の血だろう。
「帰ったぞ!」
彼らは血みどろながら7人ちゃんと揃っている。
「確かにゴブリンロードがいてもおかしくないな。予報屋」
「どういうことですか?」
「ちょっと森に入っただけのところに、ゴブリンリーダーがいた。ゴブリンファイターを5体従えた奴がな」
「それで、ケガしたんですか?」
「普通のゴブリンが何体いようとも俺たちはかすり傷ひとつ追わないが、ゴブリンリーダーは違うな。ちょっと手間取ってしまったわ」
「ちょっと、ですか」
「ちょっとだ。普通のゴブリンを含めて100体ジャスト倒したぞ」
「ご苦労様でした」
強行偵察は成功した。
そして、それにより誰もがゴブリン・ロードがゴブリンの森にいることを信じ始めた。
あらすじ変更しました。なんと、あらすじまでレンガ推し。笑




