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第82話 レイドリーダーと執事さんの孫娘

「実はさっき、おじい様と彼が会って話したの」

「執事さんとですか。どんな話になったんですか?」

「それが、わたしと付き合うのは認められないって言うのよ」


レイドリーダーさんも、横で話を聞いていてうなづいている。


「だけど、執事さんとしては、冒険者みたいな危険な仕事をしている男を孫娘の恋人として認められないっていうのは、普通ですよね」

「そうなの。絶対ダメだと言い張って。わたしは一緒にいないときに彼に会ってその話をしたの」

「レイドリーダーさんだけだったんですね」

「そう。いきなりだったから、彼はまともに話せなかったみたいなの」


それはそうだろう。

準貴族の人にいきなり声を掛けられたら、何を話したらいいるのか分からないのが普通だ。


「それで、何を予報したらいいんでしょうか?」

「わたしと彼はゆくゆくは結婚したいってお互い思っているのよ」

「もう婚約しているんですね」

「ふたりの間ではね。もちろん、おじい様とお母様には認めてもらっていないけど」

「家柄が良いと色々と難しいんですね」


僕もそうだけど、ほとんどの冒険者にとって結婚とはお互いの気持ちだけで成立する。

成人していて自分の収入で生きているなら、親が反対したとしても大した問題にならない。


だけど、貴族や準貴族、上級市民においては結婚というは、家と家の繋がりでもある。


冒険者みたいな家柄などない人間にとって、家柄が関係する結婚など普通は起きない。


「だけど、わたしは家より彼を選ぶって決めたの」

「家の援助は得られなくなりますよ」

「もちろん。彼と一緒に生きていくわ」


うーん、彼女は今、恋している時なのだろう。

結婚というのは、ただ好きな人と一緒にいるだけじゃない。


家庭を作って、子供を育てていく。


好きって気持ちだけではうまくいかないと思うのだが。


「でも。それならば、駆け落ちしてしまったら、どうでしょう?」

「最後はそうするつもりはあるわ。だけど、おじい様には祝福して欲しいの」


話を聞くと、彼女の父親は彼女が幼い頃に他界していて、母親と一緒におじい様の家で暮らしているという。

ふたりいる姉は、準貴族の男の元に嫁いでいる。


「だから、おじい様には、祝福して欲しいと思っているの」


難しい問題だな。

どうみても、おじい様の執事さんは、レイドリーダーのこと認めるとは思えないぞ。


「おじい様に彼のことを認めてもらえることはあるのかしら」


《ピンポンパンポーン》


「ありえるでしょう」

「本当?」


なんと、予報では執事さんが認めることがあると言う。

だけど、そんな方法、分からないぞ。


「どうしたら、認めてもらえるの?」


ありゃ、予報が発動しない。

やり方が分かれば、それがうまくいくかどうかは、予報できるんだけど。


やり方を予報に聞くのはダメらしい。


「レイドリーダーさん。何か執事さんは言ってませんでしたか?」

「えっと。家柄がつり合わない男はダメだと言ってたけどな」


そりゃ、そうだ。

だけど、レイドリーダーさんの家柄が良くなるなんてことあるのはずないしな。


「だけど、おじい様が認めてくれること、ありうるのよね。もしかしたら、準貴族みたいになればいいってことかしら」


《ピンポンパンポーン》


「彼が準貴族になれば認めるでしょう」

「そんなこと、無理よね」


あ、そうか。

ひとつ、道があった。


騎士勲章だ。


「もしかして、レイドリーダーさんが騎士勲章を叙勲するってことかな」

「あっ、それなら準貴族になるわ」


街の防衛等で貢献をした人は、騎士勲章を叙勲する。


魔物から街を守ったことで騎士勲章を叙勲した人は過去に何人もいる。


騎士勲章を叙勲すると、騎士扱いとなり準貴族の一員になる。


「今回の魔物討伐は、レイド別の競い合いがあるんですよね。もし、その中で一番になったら騎士勲章の対象になりませんか?」

「過去にそういう例はあるな」


魔物討伐はレイド単位に行われ、一番魔物討伐で良い結果になったレイドは表彰される。


ただし、毎回、騎士勲章が授けられる訳ではなく、街にとって特別な危険を排除したレイドリーダーに対して騎士勲章が授けられる。


「すると、今回の魔物討伐がチャンスということですね」

「それは無理だな」

「どうしてですか?」

「今回の我々、レイド・イエローの担当エリアは『ゴブリンの森』だからさ」


なんと。今、拠点を作っているこの場所からすぐの場所にある森。


正式名称は、西の魔物の森と名付けられている。


しかし、冒険者はそう呼ばない。

だいたいは『ゴブリンの森』と呼んでいる。


遭遇する魔物はほとんどがゴブリン。

あとは、魔物ではなく野獣ばかり。


街から見ると、危険度が弱い。


しかし、ゴブリンの繁殖力はすさまじいので、魔物討伐の対象にはなっている。


「ゴブリンの森で、騎士勲章レベルの成果を上げられると思うか?」

「えっと、とりあえず予報に聞いてみて?」

「そうだな。聞いてみよう。今回の討伐でレイド・イエローが騎士勲章レベルの成果を上げられる可能性はありますか?」


《ピンポンパンポーン》


「ありえます」

「本当かっ?」


話を聞いていて、どうもそんな気がしていた。


だって、マセットが参加して結果を出せるのがレイド・イエローと予報があった。


このゴブリンの森はもしかして、何かあるのかもしれない。


「どういうことだろう?」

「どういうことでしょう?」


残念ながら、そんな話をしていたら、予報時間の45分が経過してしまった。


「すいません。そろそろ、時間になります」

「そうだな。ここから先は、レイド・イエローの作戦が絡むことだ」

「そうなりますね」

「そこでだ。明日、昼の時間に予報屋を借り切ることはできるか?」

「借り切りですか?」

「金貨10枚だそう」

「そんなに……」

「明日、レイド・イエローの主だったメンバーを集めて作戦会議を予定している。それに参加して欲しいのだ」

「レンガ積みは予定より早く終わりそうなので、出席できますね」

「そうか。それは助かった。どうも予報では、レイド・イエローは騎士勲章レベルの働きをするという。いままでの作戦は破棄して、新しい作戦を練らないといけないからな」


明日はレンガ屋はお休みですね。

金貨10枚出してもらえるなら、クレアさんとミリーちゃんも連れて予報屋フルメンバーで参加しよう。


そうと決まったら。


煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・確認!煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・確認!

煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・確認!煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・確認!


今日のうちにレンガ積みは完了させないと。

フルスピードでレンガ積みをした。


シバ君と子供達。

マセットやロンと冒険者達。


皆、しっかりとレンガ積みをして。


レイド・イエローの拠点はこの日に完成した。


レンガ2万個のレイド・イエローの拠点が完成した。

次は、レイド・イエローの作戦会議with予報屋メンバー。


騎士勲章クラスと予報が出たゴブリンの森に何があるのか。


いよいよ、イベント『魔物討伐』の幕が開きます。



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