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第80話 金貨1枚予報のお客さん

「ジュートさん、すごいわよ。金貨1枚コース、早速お客さんが来たわ」

「本当ですか?」

「すでに中で待っているわ、急いで」


今夜の予報屋から正式に金貨1枚コースを始めることにした。

金貨1枚のコース時間は45分。


最初から最後までジュートが対応する。

同時に、最初から30分はクレアさんも一緒に話を聞く。


ミリーちゃんお手製のハーブティと焼き菓子もついてくる。


今日も予報屋が始まる前にお客さんが10人ほどいた。

その抽選の前に金貨1枚コースの説明をしたら、ひとりの紳士が手を挙げた。


その紳士が予報屋の奥の席にいるらしい。


「いらっしゃいませ。予報屋のジュートです。あれ」


なんと、金貨1枚予報のお客さんは顔見知りだった。

大公様の執事さん。


すると、実際の予報の相手は大公様か。


「もしかして、大公様の予報ですか?」

「いえ、今日は大公様のお使いではなく、個人としてきました」

「すると、執事さんの予報ということですね」

「はい」


最初の金貨1枚予報は執事さんか。

どんな相談なのかな。


「執事さんの相談は何ですか?」

「実は私の孫娘のことでして」


執事さんにはひとり娘がいて、3人の孫娘がいる。

そのうちの一番下の孫娘の件で相談に来たのだ。


「孫娘は去年15歳になって成人したから、大公様の視察に一緒に連れてきまして。この街で調査の手伝いをしていたんですが、そこで恋に落ちたと申しましてな」

「まぁ、素敵。孫娘さん、素敵な人と出会ったのね」


クレアさんがうらやましそうに言う。

僕がなんて反応したらいいか考えていたら、先を越されてしまった。


「そうだといいんですがね。ただ、相手の男がちょっと、でしてね」

「どんな男なんでしょうか?」

「冒険者なんですよ」


執事というのは、貴族の使用人をまとめる役割の人。普通の執事でも何十人もの使用人の指揮をする立場。

大公様の執事ともなると何百人の使用人を指揮するレベル。


地位は貴族ではないが、準貴族レベルの扱いを受ける家柄だ。


そこのお嬢さんが、何の地位もない冒険者に恋をするっていうのは、ずいぶんと身分違いの恋になってしまう。


「冒険者なのね。でも、きっとすごい冒険者だと思うわ」

「どんな冒険者かは聞いてなくて、つい怒鳴ってしまったら、戻ってこなくなってしまってね」

「それは心配ですね。たぶん、その冒険者の男と一緒にいるから安心だと思いますが」

「それも気に入らないことなんですよ。ちゃんとした手続きもしないで男と一緒に暮らすなんて」


貴族や準貴族になると、いろいろと結婚においてもいろいろと面倒くさい手続きがあるらしい。未婚の女性が誰とも分からない男と同棲しているとなると、これからの縁談にも響くらしい。


「だから、ふたりを別れさせたいんですが、なんとかなりませんか?」

「えっと。僕ができるのは予報なので。別れさせるとかは無理ですね」

「そうでした。ついつい、ムキになってしまいました。予報で今の娘のいる場所は見つけられますか?」

「それなら、できると思いますが」

「それを知ってどうするつもりなのかしら」


クレアさんが割り込んできた。クレアさんはどうも孫娘さんと冒険者、恋人のふたりの味方らしい。


「それはもちろん。会いに行って説得するだけですよ」

「説得なんて。うまくいくと思います?」

「……そこなんですけどね」


どうも、良い手はないらしい。


「執事さんとしては、そんな恋はあきらめて一緒に帰ってほしいということですね」

「そうです。ただ、どうしたらいいか分からなくて、相談に来たんですよ」


こういう相談は難しいな。

予報というのは、未来を変える力はないし、人の気持ちも変えられない。


「どうでしょう。男の方に会ってみるというのは。孫娘さんのいないときに会うように予報できると思います」

「それいいですね。お願いします」

「わかりました」


その後、予報で明日のお昼に、相手の冒険者の男と出会える場所を聞いた。

食堂の座る位置まで特定できたから、そこに座る男が相手の男だ。


「そこで何を話したらいいのでしょうか?」

「それはちゃんと話を聞いてあげないと駄目だわ。最初から反対って言っちゃ駄目よ」


孫娘の気持ちはクレアさんの方が詳しいので、僕はただ聞いていた。


クレアさんの作戦でまずは相手の男と話ができるようになること。

それをアドバイスしていた。


「ありがとうございました」


最初の金貨1枚予報のお客さんは帰っていった。

その後は普段どおりの銀貨1枚のお客さんが続いた。


金貨1枚の予報コース、始まりました。人気になるかな。


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