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第79話 シバ君達の成長はすごかった

「師匠。僕たちもできるだけ速く積むね」

「ちょっと待ちなさい。まずは特別講習だ」

「ええっ、だって、あいつらもう積み始めてるよ」

「大丈夫さ。見てみな」


レんガ・...レンが・..レんガ.・‘れんガ。、


「なにあれ。遅いし、すっげーずれてるし」

「そうだろう。君達が負ける訳ないです」

「はい」

「ただし。君達が今もっている力を最大限に出したレンガ積みを見せて欲しいんです」

「はいっ。やるぞ」

「そのためには、君たちに最適な積み方を実演するよ。僕の動き、僕のテンポを良くみてください」

「はいっ」


さて、いくか。そうだな。僕がずっと積んできた1日500個積みで行こう。


レンガ・レンガ・レンガ・確認!


「どうだ。見てたか」

「はい」

「なら、同じようにやってみろ」


レンガ・レンガ・レンガ・確認!


「すごいぞ、シバ君。ほとんど僕の動きと同じです。このテンポなら1日500個です」


レンガ・レンガ・レンガ・確認!


   レンガ・レンガ・レンガ・確認!


     レンガ・レンガ・レンガ・確認!


       レンガ・レンガ・レンガ・確認!


「おおっ。シェパ君、ドーベル君。テリア君。ダックス君、いいぞ。そのテンポを忘れずに行きましょう」

「「「「はいっ」」」」


5人は皆、同じペースで積んでいる。

動きも全部一緒でシンクロ・ダンスを見ているようだ。


「素晴らしいです。大丈夫。君たちはいままで最高のレンガ積みをできるはずです」


5人の積みぶりに満足した僕は、新人の子供達の指導に入った。

指導も慣れたもので、いつもと同じ手順でいく。


シバ君達が5人。

経験がある子供達が4人。

今日初めての子供達が6人。


それぞれがペースを守って積んでいく。


そして僕。

いくぞ。


煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・煉瓦・確認!


よし。今回は高速6個積みだ。


「なんだ、あいつら。すごいスピードで積んでいるぞ」

「負けるな」


冒険者達はシバ君達の積むスピードを見て驚いている。


それもそのはず。

ベテランレンガ積み職人と同じスピードだから。


どう見ても、我流で積んでいる冒険者達の方が遅い。


「そんなバカな。子供だそ。なぜ、あいつらの方が速いんだ」

「おかしい。しまった失敗した」


よそ見して積んでいたひとりの冒険者は間違って積んだレンガを崩してしまった。


「やり直しかよ。早くしないと」

「なにやっているんだ、バカ」

「そんな言い方ないだろう」


喧嘩になりそうだったけど、勝負中だと思い出して再び積み始めた冒険者達。


1時間もすると、その差は歴然となった。


シバ君達が全員63個。

冒険者達は42個~51個。


「うーん、遅いですね。この先、逆転できるのですか?」

「無理だ。いくら積んでも子供達に離される一方だ」

「僕も同感です」

「だいたい、おまえはなんなんだよ。なんでもう132個も積んでいるんだよ」

「あー、一応、僕はベテラン職人なんです」


積んだ132のレンガの前でにっこり笑う。


「やめた!やめた!勝てっこない」

「では、シバ君達の勝ちってことでいいですか」

「勝ちって……」

「負けた方が、勝った方の言うことを聞くって約束でしたよね」

「ぐぐぐ。分かった。男に二言はない!」

「まずは、謝ろうね。いきなり酷い対応したよね」


冒険者5人は顔を見合わせて合図している。

そして、一斉に土下座をした。


「「「「「すいませんでした」」」」」


土下座は大げさだな、と思いながら、シバ君達をみる。

やっぱり、とまどっている。


「どうかな、シバ君。許してあげます?」

「はい。もう、頭あげてよ」


うん、ちゃんと謝る気持ちは伝わったと。

次は。


「それじゃ、シバ君。今やってほしいことは何かな」

「えっ。今はやってほしいこと。お姉ちゃんの病気を治してほしい」

「無理だ。俺たちは医者じゃないし、ヒーラーもいないし」


それはそうだ。

できないことは命令するのはダメだよね。


「あ、ごめーん。希望きかれちゃったから、つい言っちゃった。もちろん、そんなことできるとは思ってないから」

「ですよね。無理なものは無理だから。できることで選んであげてね」

「はい」


またシバ君が考え出してしまった。

他の4人と相談をしている。

おっ、答えが出たみたいだな。


「よし、決まった。発表するよ」

「決まったか。俺達は何をすればいい?」

「おっさん達は、師匠にレンガ積み指導を受けて、きちっとレンガ積みできるようになること」

「へっ?」


うわ、ずいぶんと真っ当な命令をするな、シバ君。


「師匠、お願いだぜ」

「おう。もちろんです」


勝者の命令はそれに決まった。

もちろん、敗者はその命令を受け入れた。


「「「「「よろしくお願いします」」」」」


それから僕は冒険者5人にレンガ積みのイロハを教えた。

今日、初めての子供達に教えるより、ちょっと先まで教えた。


冒険者達は体力があって、そこそこ器用な男達だ。


正しいレンガ積みを教えたら、ちゃんとマスターした。


レ~ンガ・レ~ンガ・レ~ンガ・確認!


「おおっ。なんと綺麗にレンガが積めるんだ」

「それに速いな。シバ先輩ほどではないけど、前の時より全然速い」


そう。レンガ積みを正しく覚えると、気持ちの良いテンポで積める。


レ~ン~ガ・レ~ン~ガ・レ~ン~ガ・確認!


ふとっちょ冒険者のひとりだけがちょっと遅いけど、綺麗には積めている。

よし、合格だ。


それぞれが、それぞれのペースでレンガを積んだ。


その結果、今日1日で積んだレンガの数は……


「師匠、全部で8400個だよ」

「すごいじゃないか」


今日の目標5000個を大きく上回る8400個。


このペースなら3日もかからずに2万個のレンガを積むことができる計算だ。


「シバ君達、冒険者の皆さん、お疲れ様」

「「「「「お疲れ様」」」」」


冒険者達もシバ君達も仲良く、ハイタッチしている。


レンガで心が一つになる。

いい感じだな。


「師匠!」

「なんだ、シバ君?」

「僕、ランクアップしたよ。Eランクになったってアナウンスがあった!!」

「なんと。まだ5日くらいなのにすごいじゃないか」


僕はEランクになるまで3カ月もかかった。


シバ君すごい!

シバ君の友達の名前が判明した!



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