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第77話 大人の女になったらデートしましょう

「それじゃ、約束通り、今日1日一緒に遊びましょう」

「わーい。うれしいわ」

「最初はどこにいきたい?」


ミリーちゃんのリクエストで、デートスポットは市場になった。


商業地区なら、もっと女の子が喜ぶ場所も多いんだけど、

僕もミリーちゃんも慣れていない。


だから、ミリーちゃんが黒猫亭の仕入れでちょくちょく来ている市場になった。


「ほら、あそこの露店。ハニードーナツが美味しいの」


大きな鍋に油が入っている。そこに丸くくり抜いた生地を入れる。

しばらく待っているとぷくーっと膨らみだす。

美味しそうな薄茶色になったら取り出して、蜜を掛ける。


「それ、ふたつ頂戴」


露店のおじさんが揚げたての美味しいのを葉っぱで来るんで渡してくれる。


「大銅貨1枚だよ」

「はい」


今日はミリーちゃんの誕生日だから、全部僕のおごりだって言ってある。

ミリーちゃんが行くところはそんなに高い物がないから安心だ。


「甘い~。おいしいね」

「うん。うまいなこれ」

「ずっと食べたかったんだ。市場に来たとき。でも無駄遣いしちゃダメだから我慢していたの」


今の僕は、このドーナツは簡単に買えるだけの収入がある。

だけど、レンガ積みだけしていた頃は、大銅貨1枚は大金だった。

未成年でお店手伝いでお小遣いをちょっともらっているだけのミリーちゃんだと高い買い物だろう。

ドーナツを食べながら市場をミリーちゃんとふたりで歩く。


「ミリーちゃんは、成人しても黒猫亭を手伝うのかい?」

「うん。すぐに別の仕事につくつもりはないの」

「でも、いつかは別の仕事をするんだよね」

「うーん、たぶんね」

「どんな仕事がしたいのかな?」


ミリーちゃんは考えている。


「まだ、分からないわ。本当はスキルを授かったら、スキルが活かせる仕事がしたいなって思っていたの」

「あー。だけどスーパーレアスキルだったからね」


僕と同じだ。

スーパーレアスキルだと、どんな仕事が向くか誰にも分からない。

自分でスキルを使ってみて考えるしかないんだ。

僕の場合はスキルを活かした仕事になるまで2年もかかってしまった。


「『テンプレ』ってスキルだと何が向くのかな」


僕にも分からないから、黙っていた。


「きっとわたししかできない仕事があると思うの。あせらず探さなきゃね。ジュートさんみたいに」

「僕? 僕の場合はたまたま、予報屋って形になったけどね」


僕のスキルが『予報』だから、予報屋。

ミリーちゃんだと、『テンプレ』だから、テンプレ屋か。


全く何をしてくれるのか分からないな、それじゃ。


「そうだ!」


横に並んで歩いていた、ミリーちゃんがちょっと先に行って、くるっとこっちを見た。


ワンピースのすそがふわっと広がって。

かわいいな。


「何?」

「カフェに行きたいの」


カフェか。

それなら、市場を出たところに何軒かあったな。

そのうち一軒はかわいい雑貨が並んでいてミリーちゃんが喜びそうだ。


「よし、カフェに行こう。今日からミリーちゃんも大人だからね」


カフェはお酒も出すけど、メインじゃない。

だから、大人じゃないと行ってはいけない場所じゃない。


だけど、子供にとってカフェは働いている人が行くお店という認識がある。

だから、成人したミリーちゃんが行きたいっていうのだろう。


「ここだよ、どうだい?」

「かわいいお店。入ろ、入ろ」


僕はお店でハーブティーを頼んだ。

ミリーちゃんはオレンジジュース。


「ねぇ、ジュートさん。わたしが予報屋で働きたいって言ったら、雇ってくれる?」

「うちかぁ……どうなんだろう」


たしかに今は、予報を求めるお客さんが一杯来てくれているから、収支はプラスだ。


だけど、予報屋のネックは予報するのが僕だけってこと。

だから、1日の客の人数が限られている。


「すごい人気店よね。ジュートさんの予報屋は」

「今はいいけど。またいつ、お客さんが来なくなるか分からないからなぁ」


正直言うと、クレアさんを雇ったときも勇気が必要だった。

彼女の賃金を稼がないといけないから。

レンガ屋みたいにレンガ積めば賃金がもらえるのと違って先が読めない。


「ダメかぁ~。やっぱりお仕事探さなきゃかな」

「もっと、予報屋が儲かるといいんだけどなぁ」

「人気なのに、売り上げ足りないの?」

「ほら、うちって1日で予報できる人数が決まっているでしょう。そりゃ、一回の料金を値上げしたり、予報時間を減らしたりすれば売上あがるけどね」

「それはしないのよね」

「そうそう。前回それやってお客さんがいなくなったから。もちろんあっちの予報屋が原因でもあんだけどね」


僕が考えているのを静かにミリーちゃんは見ている。


「なんか、いい方法ないかな」


《テンプレスキルが発動しました》


「それならば金貨1枚の予報コースをつくりましょう」

「えっ?ミリーちゃん?」


なんか、急に大人ぽい声を出したからびっくりした。


「あれ? なんかテンプレスキルが発動したみたい」

「もしかして、ピンポーンとか鳴った?」

「ううん、テンプレスキルが発動ってアナウンスが聞こえたの」

「僕には聞こえないから、頭の中のアナウンスだね。僕の予報と一緒だ」


そうなると、今のミリーちゃんの言葉がテンプレスキルだってことらしい。


「予報屋で金貨1枚のコースを作るのがいいってテンプレスキルが言っているんだよね」

「うん」

「だけど僕の予報みたいに『なぜ、そう思うのかは分からない』とか?」

「ううん、分かるみたい」

「どうして金貨1枚なの?」


ミリーちゃんが説明を始めた。


金貨1枚の理由は、普通の予報の10倍だから。


今朝、服を買いに入ったお店で、バッグを売っていた。

銀貨で数枚のバッグ。


いいなあと思ってみていたら、上の棚に似た感じバッグが売っていた。

だけど、値段は金貨で数枚。


「なぜ、あれは高いの?」


お店の人に聞いてみたら、こんな答えだった。


「あれは、同じ工房で作られた高級品なのよ」

「ずいぶん高いんですね」

「あのバッグの工房は高級品を作っている工房なの。だけど、あの値段だとお金持ちしか買えないから、同じデザインをベースにした普及品も作っているのよ」


そんな話をミリーちゃんが聞いて覚えていたみたいだ。


「だから、ジュートさんの予報屋も高級コースとして金貨1枚の予報を用意したらどうかなと思って」


「だけど、そんな高いコース、誰も頼まないと思うよ」

「あのお店の店員さんにもわたしがそう聞いたの。そしたら、数は少ないけど売れるんだって。売り上げだとだいたい同じ金額になるって言ってたわ」


バッグと予報って違うんじゃないか。

そう思うところもあるんだけど。


せっかく、ミリーちゃんの初スキル発動だから、クレアさんと検討することにした。


大人になったミリーちゃんとデート回でした。



テンプレスキル発動したよ。

どんなスキルなのか、この回で分かるのかな?

ちなみに、主人公もミリーちゃんも良く分かっていませんが。

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