第76話 ミリーちゃんのユニークスキルはとんでもないものだった
「どうかしら?」
クレアさんに教わった洋服店で、店員さんとミリーちゃんが選んだ
今日のスキル授与式のための服。
試着室で着替えて、ミリーちゃんが出てきた。
スカートの裾が長いふわっとしたワンピース。
裾と袖の部分が広がっていて、回転するとひらひらとなる。
色は純白で、裾と袖と首回りの部分だけ薄いピンクの帯が入っている。
「かわいい!」
ミリーちゃんにぴったりな感じ。
「じゃあ、これにしようかな」
「うん、僕もそれが一番だと思う」
「決めたわ!これにするっ」
あっさり決まった。
これがクレアさんだとすごいことになりそう。
一日中、あちこちの洋服屋さんに行って比べるんだろう。
「じゃあ、それ下さい。このまま着て行きますので元の服を包んでください」
値段は銀貨5枚。
もちろん、僕が買ってあげんだ。
いろいろと予報屋に協力してくれているミリーちゃんのために。
「ありがとう。うれしい」
やっぱり、女の子だな。
新しい服を着るとニコニコしている。
「こんなかわいい服、初めて着たわ」
テンションがあがったところで、スキル神殿に向かった。
洋服店がある商業地区からは歩いて10分くらいのところにある。
スキル神殿の大きな真っ白い神殿が見えてきた。
スキル神殿とは、15歳になった男女にユニークスキルを授ける神殿。
聖職者の方がひとりいて、大きなクリスタルのドームを使ってユニークスキルを判別する。
そのことを世間ではユニークスキル授与式と呼んでいる。
ユニークスキルを授けてもらうと同時に成人として扱われるようになる。
仕事も正式に採用されるようになるし、お酒類も解禁になる。
もっとも、仕事もお酒も、成人前にやっている人も多いけどね。
ミリーちゃんは、黒猫亭の仕事はお手伝いとしてやっている。
もし、成人して続けるならウエイトレスという仕事になる。
「ほら、見えてきた。あれがスキルの神殿だよ」
「なんか緊張してきちゃった」
分かるなぁ、緊張するんだよね。
どんなスキルなのかは、聖職者に教えてもらうまで分からない。
僕の場合は、冒険者になるって夢があったから、剣術とか魔法とか、そういうスキルが欲しかった。
だけど、予報スキルだった。
「むむむ。これは!スーパーレアスキルのようだ」
スキルがどんなものか判明する前に、スキルのレア度が判明する。
クリスタルドームの輝きで分かるらしい。
レア度は、コモン・アンコモン・レア・スーパーレアの4種類がある。
スキルがコモンな人は95%ほどだ。
100近くのコモンスキルがあるから、
ひとつのコモンスキルはだいたい100人にひとりくらいの頻度になる。
同様に、アンコモンだと、5000人にひとりで、レアは20万人にひとり、
スーパーレアは1000万人にひとりだ。
だから、僕のユニークスキルがスーパーレアだと判明したとき、すごくうれしかった。
もしかしたら、とんでもなく強力なスキルかもしれない。
もしかしたら、ゆくゆくは勇者って呼ばれるかもしれない。
だけど、『予報』って聞いたとき、思ったのは「なんじゃ、それは」だった。
聖職者の方も、予報スキルはどんなものか答えてくれなかった。
他の人に聞いても知らなかった。
だから、自分で体験していくしかなかった。
勝手に発動して、喧嘩になったりして、だんだんとスキルの使い方が分かってきた。
今になると、すごく良いスキルだったと分かるけどね。
授かったときは、微妙だったな。
あの時のことは今もまだ覚えている。
クリスタルドームの前に立つときの緊張感と言ったら、それはもうすごい。
だから、ミリーちゃんのスキル授与式に一緒に来たんだ。
スキル授与式は日曜日と決まっているから、レンガ屋も予報屋もお休みだしね。
「ミリーさん、こちらへ」
ミリーちゃんは、クリスタルドームの前に立つ聖職者の方に誘導される。
ドームの頂上にミリーちゃんが手を載せる。
ドームが輝きだした。
いよいよだ。
あれ?
ドームの色が金色になってきたぞ。
もしかして、僕の時と一緒か?
金色がどんどんと強くなって輝きが激しくなってくる。
「おおっ。あなたのは、スーパーレア・スキルのようですね」
やっぱり。
スーパーレアだ。
どんなスキルなのかな。
ミリーちゃんの頬が赤く染まって上気しているのが分かる。
1000万人にひとりのスーパーレアだからな。
「あなたのユニークスキルは『テンプレ』です」
なんじゃ、そりゃ~。
聞いたことないぞ、そんなスキル。
だいたい言葉も意味不明だし。
『テンプレ』って一体どういうスキルなのか。
聖職者の方が説明してくれるだろう。
「えーっと、テンプレというのは…………ごめんなさい。わかりません」
うわ、僕のときと一緒だ。
聖職者さんも分からない謎スキル『テンプレ』。
ミリーちゃんも苦労しそうだな。
ミリーちゃんのユニークスキルは、スーパーレア・スキル『テンプレ』。
どんなスキルなのかは、これからだんだんと判明していきます。
「きっと、こんなスキルだ」と分かってしまった方は、コメントに書いてくれると嬉しいです。




