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第74話 大公様に僕のことを信じてもらえるのか?

「うわ、すごいとこ来てしまった。場違い」


今いるのは、執事さんに連れてこられた高級料理店の個室。

このお店は、全部個室らしくて、密会に使われるところらしい。


「大公様と面会は1時間後を予定しています」

「はい」

「面会時間は10分です」

「えっ、たったの10分?」


うわっ、短い。


普通の予報で30分。

ブームのときの短縮予報でも15分。


10分だけだとは思わなかった。


「大公様は忙しいんです。正直、ちょっとした好奇心で会うだけですから。大した期待もしていないので、安心ください」


安心してと言われても。

失礼があって、死刑! なんてことも起きないとは限らない。


「それでは私は用事があるので、ここでお待ちください」


お茶とお菓子が出ている。

飲食して待っていろということだな。


うわー、どうしよう。

雲の上の人を予報することになってしまった。


ちゃんと予報スキル機能してくれるんだろうなぁ。

もし、予報できないなんて言ったら大変だ。


そんなことばかり考えていたら、1時間はあっと言う間に過ぎてしまった。


1時間を過ぎて、さらに20分ほどして、執事がやってくる。


「さて、行きますかな」


大公様がいる個室に連れていかれるらしい。


とにかく10分しかないんだ。

しっかりとやらなければ。


「入ります」

「入れ!」


部屋はやたらと広い。

真ん中に豪華な2人掛けテーブルがひとつだけ。

そのテーブルの奥に大公様が座っている。


「おまえが情報屋が言っていた予報屋か」

「はい。ジュートと言います」

「そんなことは言わんでもいい」

「あ、はい」


うわ、すごく気難しそう。

椅子を勧められたから座る。


執事さんは大公様の後ろに立っている。


「予報ができるそうだな。未来を当てられるという」

「はい」


うん、大公様の予報の認識は正しく伝わっているらしい。


「もちろん、わしはそんなこと信じてはいないがな」

「えっ」


信じていないの?

じゃうなぜ、予報を聞こうなどと思ったの?


「まぁ、なにかの話のタネにもなれば、とな。そのくらいの期待だ」

「あ、はい」


なんか、気が抜けた。

難しい相談じゃなさそうだ。


「時間がない。予報をしろ。明日のわしの昼食は何をたべることになるのか?」


《ピンポンパンポーン》


「明日の大公様の昼食は、かつ丼でしょう」

「かつ丼? それはどんな料理だ?」

「えっと……知りません」

「おまえ、知りもしないでわしが明日、かつ丼を食べるなどとほざいたな」


あ、怒らせてしまった。

困った。どうしよう。


「失礼ながら、かつ丼のことを説明してよろしいですか?」

「おまえ、知っているのか?」

「はい。極東の島の料理の中にその名前の料理があると聞いたことがあります」

「極東の料理か。この街では、そんな遠方の料理を出す店があるのか?」

「私が知る範囲ではありません」


あー、伝説の調味料が入らなくてマスターが辞めちゃったからなぁ。

明日、かつ丼を大公様が食べるとなると、マスターが作るのか?


「ほう。それでは、どうやってわしがかつ丼を食べるというのか」

「わかりません」

「なにもわからないんだな。情報屋のボスも、いい加減な情報を高い金で売りつけたものよのぉ」


あ、その件に関してのクレームは、情報屋さんにお願いします。

僕は関係ありません。


「よかろう。かつ丼だな。どんな料理が分からないが、もし調べてみて提供している店があったら食べることにしよう」

「ええと、大公様。極東料理は重要な食材がこの街では手にはいらないと思います。食べられるとすると、王都にでもいかないことには」

「残念だな、予報屋。予報は外れだ。時間も終わりだ」


執事さんに言われて追い出されてしまった。


大公様に外れ予報屋と覚えられてしまった。

ヤバいな。


これじゃ帝国軍が攻めてきたとき、僕が横にいるはずがない。

いつか、大公様にまた会って、ちゃんと予報ができるのかな。


とぼとぼと歩いて、僕のインスラに戻る。


あれ? 黒猫亭が開いている。

まだ、開店時間じゃないんだと思うけど。


「あ、ジュート、ちょうどよかったぁ」


ミリーちゃんが僕をみつけて、店の中に引っ張っていく。


「お、ジュート、おまえも食べてみるか?」


店の中には男の人がひとり。

あ、米とかいう食材を買いにいった商会のひとだ。

もう米を手に入れて帰ってきたのか。


「うまいぞ」

「なんですか、それは?」

「かつ丼だ」


やっぱり。


「明日、昼時に市場で売り出そうと思ってな。これがうまいんだぞ」

「市場ですか? 大公様が市場に来るってことかな」

「何、バカなことを言っているんだ。大公様じゃない。普通に市場にいる人に売るんだ」


うーん、となると。

どうやって、そのかつ丼が大公様のとこまで届くのだろうか。


「もう、要所、要所には噂を流しておいたから、きっと明日は大人気になるはずだ」


あ、もしかして、情報屋がその噂を聞きつけて……。


「かつ丼ですか。それなら私が手にいれて進ぜよう。金貨20枚になりますがよろしいですか」


なんてことするのかな。

まぁ、気にすることはないか。


予報だと大公様はこのかつ丼を明日のお昼に食べる。

事実はただそれだけだ。


だれがどう関係するかは、僕には関係ないことだからね。


大公様と知り合いました。この後は直接絡むことはあまりないとかな。

すごい人と知りあうことで、ジュートの予報の世界が広がり始めています。


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