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第73話 大公様の会うことは本当に起きるのだろうか?

「大公様と会うと予報があったのは、今日だよな」


インスラの部屋の中で考えている。


「もし、本当に大公様に会うことができるとしたら……」


そう考えると、レンガ積みの仕事には行く気になれない。

夜は予報屋のお客さんがいるだろうから、予報はするけどレンガは「ごめんなさい」した。


だけど、することがないから部屋にいる。

この部屋に大公様がやってくるのだろうか。


いやぁ、こんなとこに来るはずないよな。


頭の中で大公様が来ると来ないがぐるぐると回っている。


時間はそろそろ、お昼になるくらい。

食欲がないから、買い置きのパンと水で朝は済ませた。

昼も同じでいいかな。


そんなことを考えていると、ドアをノックする音がする。


「はい。どちら様でしょうか?」

「予報屋のジュート様のお部屋はこちらでよろしいですか?」

「はい。どちら様?」

「大公様の使いの者です」


きたーーーー。

本当にきたーーーーー。

もひとつ、おまけにきたーーーー。


あまりにびっくりしてきたーを連発してしまった。


「あ、はい。今、開けます」


鍵を外して扉を開く。

そこには、黒いフォーマルな服装の60代くらいの男が立っていた。


「大公様の執事をしている者です。今、お話させていただいてよろしいですか?」

「はい。よろしいです。お話してください」


なんか言葉がおかしくなる。

緊張しているのだろう。


「実は、大公様がジュート様に興味を示されまして」

「ええっ、どうして僕に」

「ちょっと話が長いんですが、いいですか?」

「はい」


なぜ、僕のことを知ったんだろう。

まさか、あの夢予報を大公様も見たとか?


「そもそもは、情報屋なんです」

「情報屋というと、僕が予報試合をした相手の黒幕?」

「あ、そこまでは知っているんですね。それならば話は早いです」


情報屋というのは、商業地区で情報屋を開いたり、いいかげんな予報屋をしたりしているだけではないらしい。


貴族相手に有益な情報を提供して対価をいただく。

それが本業だという。


「大公様も情報屋の重要なお客様のひとりでしてな」


なんと、あの情報屋、大公様とつながっていたのか。


「情報屋というと、強面のおっさん、ですよね」

「いえ、小柄な紳士ですよ、情報屋のボスは」


あ、僕の銀貨3枚を巻き上げたのは情報屋のボスではないらしい。

あれは、商業地区の情報屋の店舗の店長だという。


「情報屋のボスが私に、大公様にとってとても大切な情報があると言ってきましてな」

「どんな?」

「すごい予報ができる男がいるという情報でして」


それって、僕のことだよね。

だけど、情報屋って、僕のこと、敵認識しているんじゃないのかな。


「あのボスは食えない奴でして。ライバルだろうが敵だろうが、有益だと思う情報は高い金をとって教えるのです」


すると、あの情報屋のボスは、僕のこと、すごい予報ができる男だと思っているってことか。


「珍しく笑っていましたよ、ボスが。『この俺を情報分野で出し抜いた奴がいる』ってね」


出し抜いたって……単に真面目に予報試合をしただけでしょう?


「あなたのおかげで金貨1000枚も損をしたと言ってました」


そんなに損したのか。まぁ、あのインチキ予報屋はお客さんが激減したって噂は聞いているけど。


「その損害の一部を補填するために、あなたの情報を大公様に売りつけた、ということです」


うわ。本当かよ。そんなことで商売するっていうのは、さすがに抜け目ないと言うべきか。


「ちなみに、僕の情報って、いくらくらいしたんですか?」

「金貨200枚です」


うわ、ありえない。

そんな情報価値あるというのか、僕の話に。


「正直言って、大公様はあなたの予報のことは信じていません」

「……」


信じてない。

なら、なんで、使いのあなたがここに来たの?


「ただ、金貨200枚を払って得た情報だから、ちょっとだけなら付き合ってもいいか、とおっしゃいました」

「うーん」


大公様と知り合う絶好のチャンスだ。

もし、帝国が攻めてきたら、大公様と知り合っていないと夢予報が成立しなくなる。

下手をしたら、帝国にこの国が占領されてしまうかもしれない。


「それで私が迎えにきました」

「はい。よろしくお願いします」

「会ってくれるのですね。それは良かった。予報をしてもらうことになると思いますが、いかほどになりますか?」


えっと。

金貨200枚なんてとんでもない話を聞いた後だから、値段がつけられない。

当然、大公様はお金持ちだろうから、高い値段を言ってもいい気がする。


だけど、あんまり高いとこの執事さんが怒りそうな気もする。


「普段は30分で銀貨1枚で予報をしているんです」

「ずいぶん安いんですね」


やっぱり安いか。

どうしよう。


ここはひとつ。

金貨10枚くらい、ふっかけてやろうか。


「金貨……1枚でどうでしょう」


あ、つい口に出してしまった。

なんで10枚って言わないんだよ、駄目じゃないか僕。


「そんなんでいいんですか? もっと高くても問題ないですよ」

「えっと、特別な形での予報ですから、特別料金がついて金貨1枚です」


うん、いいんだ。

お金じゃなくて、大公様と知り合うのが目的だから。


「わかりました。あ、大公様のスケジュールがあるので2時間ほど待機する可能性がありますよ」

「2時間ですか……それなら金貨2枚で」

「わかりました。金貨2枚ですね」


執事さんが懐から袋を出して金貨2枚を手渡してくれた。


「ずいぶんと謙虚な方ですね。そこも大公様に伝えておきますね」

「いえ、金貨2枚でも僕にとっては高い料金ですから」


しかし、大公様に会えると分かったら、急に怖くなった。

もし、予報が外れたらどうしよう。


緊張するな。大丈夫かな。


「それでは参りましょう。大公様とは個室料理店で会う手はずになっています」


いよいよ、大公様に会って予報することなった。

帝国を侵攻を食い止めるには、なんとしても大公様と知り合いにならないと。


情報屋ボスは主人公のことを認めていたらしい。



前回の予報屋リニューアル回はストーリー平均4.96。


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