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第72話 予報屋のルールを変更しました

『予報屋・黒猫』


小さな看板ができた。


黒猫亭の上にあるインスラの住民になったのを機会に、黒猫亭の横にある小さな倉庫を借りる話が出ている。


幅1.2mで奥行が3mの細長いところだけど、小さなテーブルふたつとイスが4つ置ける。


その場所を予報屋・黒猫として借りるって話になっている。


インスラの部屋が月に金貨2枚。

予報屋になる倉庫部分が月に金貨4枚。

合計金貨6枚。


そんなに毎月出費が出て大丈夫なのか、心配はある。

だけど、いつまでも黒猫亭の片隅を借り続けるのも迷惑だなぁ~と。


幸い手ともに金貨20枚ほどがある。

そのうち12枚を敷金と前家賃にした。


まだ、倉庫の改造ができていないから、今日と明日は黒猫亭で予報屋をするけど、来週の月曜日にはオープンの予定だ。


「これからは少し稼ぎを増やさないとね」


予報のやり方をちょっと変えた。


まずはクレアさんによる予報してほしいことの聞き取りを15分。

その後、僕が15分で予報をする。


合計で30分。


聞き取りに関しては僕よりクレアさんの方が上手いから予報の質が落ちるとは思わない。


1日10件の予報を銀貨1枚で行って、全部うまると金貨1枚になる。


「クレアさんの報酬は2割でいいですか?」

「はい。それなら生活費がなんとかなるわ」


クレアさんの生活費をぎりぎりまで削ると月金貨4枚らしい。


クレアさんはインスラに友達とふたりで住んでいて、その家賃が金貨1枚。

食費その他で金貨2枚。

あと、服代その他で金貨1枚。


「服って毎月買うものなんですか?」

「女はね。服を買わなくなると、女ではなくなるの」


よく分からないけど、そういうことらしい。


今回、僕がひとりでインスラに住むようになったから、だいたい同じくらいの生活費になった。

レンガ屋だけの時と比べると4倍くらい生活費が増えている。


普通の庶民の生活費って高いものなんだなぁ。



あと、予報屋の予約システムも用意した。

一度、予報を受けたことがある人限定のシステム。


1日に予報する10件のうち、3件は予約可能な枠にした。


ただし、予約するためには予報した結果を報告にくることが条件。

報告したときに次の予約を受け付けるようなった。


これは実は、感謝ポイントを増やすために決めたこと。

報告にくると、うまくいったなら感謝の言葉が聞けるだろうと。


いままで、報告の仕組みがなかったから、予報してもその結果が分からなかった。


結果を聞くことで、どんな予報をすると結果につながるか知ることにもなるから、

予報の精度向上にもつながるはず。


「今日の最初のお客さんは予約のお客さんなのよ」

「誰?」

「マセットさん」


マセットは予約システムの提案者でもある。


「抽選もいいけど、常連枠を作ってくれないか」


そう言ってマセットが提案してくれた。


早速システムを活用して、マセットが予約を入れたらしい。


そんな話をしていると、来た来た。



「いらっしゃいませ」


入口でミリーちゃんが迎えたのがマセットだ。


「こんばんわ。ジュートさん。さっそく来たよ」

「あ、最初はクレアさんに相談内容をお願いします」

「あ、そうだったね」

「マセットさん、相談内容を聞かせてね」


最初のお客さんなので、僕もクレアさんの横にいる。

だけど、最初の15分は僕はただ聞いているだけ。


「来週末からの秋の魔物討伐、僕らのパーティも参加するんだけど、どのレイドに入るか迷っていて」


魔物討伐はレイドと呼ばれるチームに分かれて行われる。

ひとつのレイドはだいたい200人ほどで、今回の討伐では5つのレイドが参加する。


冒険者パーティはパーティごとにどのレイドに参加したいか要望を出す。

希望者が多いレイドは、レイドリーダーが選択して漏れたパーティは別のレイドに要望変えをする。


「一番人気はレイド・レッドなんだけど、あそこは競争率が高いからどうしようかと迷っているんた」

「そうは言っても、レイド・レッドがいいんじゃないかしら。あそこは毎年一番結果をあげているレイドよね」

「そう。レイド・レッドのリーダーの指揮が素晴らしいっていう噂だ。あそこに参加すると本当に誰もが活躍できるというんだ」

「それなら、やっぱりレイド・レッドね。だけど、レイドリーダーに選ばれるか、そこが心配なのよね」

「そうなんだ。だから予報をしてもらおうかなと」


うん。話は分かった。

では、予報してみよう。


「ちょっと待って。予報をする前に、どんなことを目指しているのか明確にしてほしいわ。報酬が多いことか、有名になることか、危険が少ないことか」

「それもそうだな。今回は有名になるを選ぼう。そろそろ俺たちもB級冒険者ライセンスが近くなってきているんだ。だから、指名依頼が増えて欲しいと思っている。有名になると指名も増えるからな」


さすがクレアさん。

単にレイド・レッドに入れますかって質問しないのはいいね。


レイド・レッドに入れても活躍できなきゃ意味がない。


「それではジュート、質問するね」


予報パートに入ったので、クレアさんは次のお客さんのとこに行く。


「僕らのパーティーが魔物討伐で一番活躍して有名になるためには、どのレイドに入ったらいいですか?」


《ピンポンパンポーン》


「それは、レイド・イエローでしょう」

「うわっ、イエロー? 考えもしてなかった」


レイド・イエローは一番新しいレイドで、今年春の討伐から編成されたレイド。


春の討伐の結果はさんざんで駄目レイドの噂がたっていた。


「目立つためには一番人気がないレイドの方がいいってことかしら?」

「だけど、目立っても損害が大きいのは嫌だな。えっと、レイド・イエローに参加したら、討伐で損害はどのくらいになりますか?」


《ピンポンパンポーン》


「軽傷程度ですむでしょう」

「それはいいな。損害も少なくて目立てるのか。イエローにしようかな」

「得られる報酬も聞いてみませんか?」


「そうだね、イエローに参加したら、僕らのパーティの報酬はどのくらいになりますか?」


《ピンポンパンポーン》


「ひとりあたり、金貨7枚になるでしょう」

「すげーな。そんなになるのか!」


C級冒険者だと討伐で得られるのは金貨1枚~2枚が普通だ。

7枚というのは破格だ。


「よし、決めた。今回の討伐はレイド・イエローだ」

「がんばってくださいね」


この日はあとひとり、予約の常連さんがいて、8人の抽選の人を予報した。


クレアさんとの連携もうまくいって、新しいルールでの予報屋『黒猫』は順調な滑り出しをした。



いよいよ、予報屋がお店を構える流れになってきました。


どうなるのかな。



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