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第66話 いつの間にか店長になっていました

「今日は予報屋は6人受付しておいてくださいね」

「はい。わたしも黒猫予報屋デビューね」

「よろしく、クレアさん」

「よろしくお願いします、店長」


えっ、店長?

予報屋と言っても、黒猫亭に間借りしているだけの存在。

お店がある訳ではないから店長は変だろう。


「そんなことはない。れっきとした人気予報店の店長だわ」


そういうものなのだろうか。

ただ、予報屋の方針は僕が決めると最初に言ってあるから、店長と言えば店長なのか。


「クレアさんのお仕事はね」


まずは、僕が店に出る前に、黒猫亭の前で待っている予報希望者に抽選をして予報する人を決めておくこと。


僕はレンガ屋をしているので、今は予報屋のお手伝いしかしていないクレアさんの方が余裕がある。

だから、抽選はお任せした。


予報する人数は少しづつ増やす予定。


今回は6人で、僕の予報は25分。その前に10分間のクレアさんの依頼内容聞き取りが入る。


僕が予報をしている時ははじめの15分はクレアさんも一緒にいる。

最後の10分は僕だけになって、その時クレアさんは次の人の依頼内容を聞き取りをする。


「いらっしゃいませ。クレアさん、もう来ているよ」


ミリーちゃんが出迎えてくれる。

最近は、予報屋が人気になって黒猫亭のお客さんも多くなってきた。

マスターも、ミリーちゃんも嬉しそうだ。


奥の席にはクレアさんがひとりの男性と話をしている。

その席に向かう。


「こちらの方は、お子さんの相談です」

「えっ、珍しいですね。どういう相談ですか?」

「お子さんが15歳になってユニークスキルをもらったんですけど、《俊敏》だったそうで冒険者になると言っているそうです」

「はい。できれば、そんな危険な仕事はやめて欲しいんですが」


そのお父さんは商会の帳簿係をしていて、安定した収入があり危険も特にない。

息子にも、同じような仕事をしてほしいと思っているんだけど、冒険者になると聞かない。

どうたしたらいいか、相談に来たらしい。


「えっと。何か質問ってあります?」

「ですから。どうしたら、息子が冒険者をあきらめてくれるか、教えてください」


うーん、予報が反応しない。

そうだろうなぁ。

勝手に息子とは言え他の人の気持ちを変えることは予報ではできない。


「お父さん。それでは予報できないと教えたわよね。ダメですよ。教えた通り質問してくれなきゃ」

「そうでした。すいません。ついつい、気持ちが先走りしてしまいました」

「それでは、あらためて。質問してください」

「もし、息子が冒険者になったら、大丈夫でしょうか?」


《ピンポンパンポーン》


「息子さんは冒険者として立派に活躍するでしょう」

「そ、そうなんですか?私の息子ですよ」

「親と子は、別な人間なのよ。お父さん、心配しすぎだわ」

「そうでしょうか。でも、冒険者になるなら、私にできることってありますか?」


《ピンポンパンポーン》


「良い防具を用意してあげると息子さんは喜ぶでしょう」

「防具か。それは大切ですね。命を守る装備。一番安全なフルプレートの鎧を買いましょう」

「それはダメですね。重たい鎧は逆に危険ですよ」

「そうよ。お父さん、冒険者の世界をしらないわね。わたしが親切な防具屋さん知っているので、そこに行ってみては?」

「ありがとうございます。早速、息子を連れて行ってきます」


喜んでくれた。

うん、こういうケースだとクレアさんがいてくれてよかったな。

父親が子供を心配するっていうのは、単に予報だけではどうしようもないからな。

ちゃんと相談にのってあげないと。


そういうの、僕は苦手だし。

予報はあっさりと終わってしまったから、次の人は最初からクレアさんと一緒に話を聞こう。


「俺はB級冒険者のパーティの一員なのだが、独立して自分のパーティを持ちたいと思っている。うまくいくのだろうか?」


《ピンポンパンポーン》


「パーティメンバーを集めることができないでしょう」

「なんだと。バカにするのか!」

「違うわよ。予報よ。あなたの未来を予報しただけよ」

「なんで、ダメなんだよ。今のパーティのリーダーは生意気な奴で人の意見を全く聞こうとしない奴なんだぞ」


うーん、このパターンはめんどくさい。

予報が納得できないで絡んでくるタイプだ。


「そんなリーダーであっても、パーティを束ねているのよね。何かいいところもあるんじゃないかしら?」

「そりゃ、やさしいとこもあるさ。俺が失敗したケガを負ったときなんか、ずっとついていてくれたりしてくれたしな」

「やさしい人なんですね。なんでそこから出ようと思ったの?」

「俺がみつけてきた指名依頼をケリやがって。絶対、うまくいって儲かるはずなのに」

「どうなのかしら。それ、予報で聞いてみましょうか」

「ああ。指名依頼を受けたら、どのくらい儲かるでしょうか?」


《ピンポンパンポーン》


「その指名依頼を受けたら、あなたは死ぬでしょう」

「「「ええっ」」」


すごいショックを受けていた。

クレアさんを話し相手に残して、僕は次の人の予報に入った。


こんな感じで、最初クレアさんというのは必ずしもそうはならなかったけど、同じ時間で6人の予報を聞いて僕ひとりで30分予報をするより間違いなくクオリティーが上がっている。


やっぱり、単に予報するよりちゃんと話が聞ける人がいるっていう方がいいんだ。


なかなか、うまく行きそうな予感がした。

ちなみに、クレアさんの予感スキルもうまくいくって言ってたし。


クレアさん、いい感じみたいです。



レンガの回評価は193ポイント 46人 平均4.2。

あれ、あんまり評価、よくない。評価してくれた人、多いんだけどね。


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