第65話 レンガ職人の弟子ができました
「とにかく、人に教えるのは苦手なんですよ」
「分かっているって。だけど、見てくれよ、今日のメンバー。他に誰か教えられるような職人いるかい?」
土木ギルドに行くと、監督官のソニンがいて、いきなり新人の指導を頼まれてしまった。
そういうのは、やりたくないってことは、昔、一緒にレンガ積みをしていたソニンは良く知っているはずだ。
でも、ソニンが僕に頼んできたのも、良く分かる。
今日のレンガ積みをするメンバーが悪すぎる。
まだ自分もちゃんと積めるか心配な青年と、すぐ喧嘩するおっさん。
他には、耳が遠い爺さんしかいない。
この中で誰かが新人の指導をしなければいけないとなれば、ソニンが僕を選ぶのも分かる。
「よろしくお願いします」
まだ14歳だという、シバくんはどうしてもお金が必要だから、ソニンに頼み込んでレンガ積みの仕事をもらったらしい。
「どうして、お金がいるんだい?」
「お姉ちゃんが病気になってしまって」
いけない、余計なことを聞いてしまった。
ソニンを見たら、してやったりという顔をしている。
僕がそんな話を聞いたら、断れないってことを読んでいやがるな。
「仕方ないなぁ。真面目にやらないと追い返しますよ」
「わかりました。よろしくお願いします。師匠様」
師匠なんかじゃないって。
今日だけ、ちょっと指導するだけだから。
その少年は少なく見積もって200個。
僕は指導しながらだから、100個だけ減らして900個。
レンガ積みをする数をソニンに申告した。
「よろしく頼むな。お姉ちゃんというのがさ、俺の妹の友達でさ。俺も断り切れなかったんだ」
まぁ、大銅貨1枚分、賃金は減ってしまうが、そのくらいはソニンに貸しができるからいいか。
「それでは、見本を見せるぞ。バルモルをこうやってコテに載せて…」
最初は言葉で説明してレンガを積む。しかし、言葉で説明するのはどうもやりづらい。
一通り言葉をつけて説明した後、実際のテンポで積むのを見せよう。
「いいか、慣れてくるとこのくらいのスピードで積めるというのを見せるぞ。しっかりと見ておけよな」
「はいっ」
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
「す、すごいです。美しいです。まるで舞を見ている気がします」
「おおげさだな。もう少しいくぞ」
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
「うわっ、まったくズレがない。人間技とは思えません。魔法を使っているんですか?」
「レンガ積みに魔法なんか必要ないぞ。もっと行くぞ」
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
「速い!速いです。一気にレンガが積まれてしまいました。神業です」
「おまえ、おだてるの上手いな」
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
「こんな素晴らしいレンガ積み、初めてみました」
「それはまぁ、そうかもしれないな。おっといけない。おだてられて、ひとりで積んでしまった。お前も積むんだよ。ほら」
少年にコテを持たせて、レンガ積みをさせる。
レンガ!・レンガ↓・レンガ?
「ちょっと待った。変にテンポを付けようとして失敗していないか?」
「えっ、レンガ積みはテンポじゃないんですか。師匠のをみて同じようにしてみたんですが」
「そこはいいから。下手に真似しないように。ひとつひとつ、ズレないように積んでいくこと」
レ~ン~ガ、確認・・・・レ~ン~ガ、確認。
「ちょっとずれているぞ、ここ。もっとしっかり確認をするように」
「はい、師匠」
レ~ン~ガ、確認・確認・・・レ~ン~ガ、確認・確認。
「まぁ、いいだろう。まだ多少ずれはあるが、そのくらいならオッケーだ」
「ありがとうございます。初めてレンガを積めました」
「とにかく、確認をしっかりとやること。ズレが見つかったら、すぐに直すこと」
「はい」
まぁ、指導はこんなものか。
あとは、100個積む毎に確認しに来ればいいか。
「その調子で積んでいくこと。僕は僕で積むからな」
「はい。分かりました!」
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
「やっぱりすごいです。コテが流れるような動きです」
「いいから、こっち見ていないで、自分のを積め!」
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
レンガ・レンガ・レンガ・確認!
後はレンガ積みに集中してテンポ良く積んでいった。
なんか、またスピードが上がっている気がする。
100個積んだところで少年のところに行く。
「どうだ?」
「あ、師匠。確認はしっかりとやりました。どうでしょう」
まだ10個しか積めていないが、確認をやったというだけあって、ズレは少な目だ。
下手なおっさん職人より、綺麗な出来だ。
「よし、合格だ。次はもう少し速く積むことを意識してみろ」
「テンポですか!」
「あ、まだテンポを気にしすぎるなよ。じっくりでいいから。少しだけ早く積むつもりで」
「分かりました」
この日は夕暮れまでレンガ積みをして、僕はレンガ900個、少年は予定よりは多い250個を積んだ。
「はい、シバくん。今日の賃金大銅貨2枚と銅貨5枚だ」
「ありがとうございました。また明日よろしくお願いします」
僕も大銅貨9枚の賃金をもらって仕事を終えた。
また、レンガ積みました。




