第63話 クレアさんに合う仕事って何?
「それでは、銀貨1枚です」
正式に予報が始まった。
「これから、どんな仕事をしようと思っていますか?」
すでに新しい仕事をする人の予報は何度かやったことがある。
しっかりとした予報をするためには、どんな仕事をしたいと思っているか確認することが重要だ。
単に「どんな仕事がいいですか」って質問すると、予報が出ないってことは確認済み。
曖昧な質問では答えがひとつにならないのが原因だと思っている。
「それが……全く、思いつかなくて」
「いままでどんな仕事をしてきたんですか?」
聞いてみると、接客関係の仕事が多い。
洋服屋さんの店員や、レストランの店員。
飲み屋のホステスもしているらしい。
「飲み屋の仕事は、たぶん向いているみたいだけど、あまり楽しくなくて」
「お店の店員さんはどうなんですか?」
「入ったばかりのときは、お店のやり方や商品のことを覚えるのでがんばるんだけど、そのうち慣れてくるとつまらなくなって」
店員をしている頃の話をいろいろとしてくれた。
たぶん、うまくこなすことができる人なのだろう。
「接客の仕事は向いているんですね。ただ、あまり楽しくないと」
「そうなの。他にいい仕事ってないかしら」
「物を作るような仕事ってどうなんですか?」
「あ、それは苦手なの。同じことを延々と続けていくことはできなくて。ジュートさんがレンガ積みの仕事もしていると聞いてすごいなと」
レンガ積みの仕事がすごいと言う人はあまりいない。
誰でもできる仕事として認識されているんだ。
予報屋をする前は、僕みたいに不器用だとレンガ積みの仕事くらいしかできなかった。
彼女は器用だから、いろんな仕事ができてしまう。
だからこそ、どんな仕事をしたらいいのか悩んでしまうんだろう。
「予報屋の仕事はどうでした?」
「話を聞くのは得意なのよ。どんなことに悩んでいるのか聞いて。だけど、予報を出すときに予感スキルが発動しなくて。全然予報にならないのよ」
「だけど、他の予報者も似たようなものじゃないんですか?」
「ええ。予報スキル持ちの人はいなかったから、似たような感じね」
「でも人気が出る人がいたんでしょう?」
「あれは、依頼者が喜びそうなことを言っているみたい。冒険者だと難しい依頼でもうまくいくって」
「ああ、知っています。冒険者ギルド長が困っていました」
「やっぱり、そうよね。あんな予報を出したら」
「そんなことはできなかったのが人気がでなかった理由なんですね」
「そう。だけど、予報を聞きに来るお客さんの話を聞くのは楽しかったなぁ。また相談に乗る仕事ができたりするのかな?」
《ピンポンパンポーン》
「この先、予報の仕事をすることになるでしょう」
「えっ、どういうこと?」
「どういうことでしょう?」
お互い、顔を見合わせてしまった。
「だって、もうあの予報屋には戻れないわ。他に予報屋っていうと黒猫予報屋さんしかないわ。もしかして、他にも予報屋ができるってことかしら」
《ピンポンパンポーン》
「この街に予報屋は新たに作られることはないでしょう」
「そうよね。じゃあ、わたしが自分で予報屋を始めるってこと?」
《ピンポンパンポーン》
「クレアが予報屋をはじめてもうまくいかないでしょう」
「そうよね。そんなことできると思わないし。じゃあ、わたしが黒猫予報屋で働くってこと?」
《ピンポンパンポーン》
「クレアは黒猫予報屋で働くことになるでしょう」
「「ええーーー」」
びっくりした。
黒猫予報屋でクレアさんが働く。
どんな仕事をするのか。
予報を使って探っていったら、お客さんの話を聞くというパートだけをする仕事だという。
たしかに、予報をちゃんとしようと思うと、予報をしている時間はそれほどなくて、ほとんどはお客さんの話を聞いている時間だ。
時間を短くすると、どうしてもお客さんの話を聞くことができなくて、単純に予報だけしている形になってしまう。
それだと、本当に必要な予報をすることができない。
前回のブームのときに失敗したのは、その点。
だから、今回は予報時間30分は絶対に変えないって決めていた。
それだと、こなせる人数が1日5人が限度だ。
予報を望んでいるお客さんを待たせてしまうことになる。
もし、もうひとり予報ができる人がいたら……
そう考えたことはある。
だけど、いままで予報スキルを持っている人は僕以外に会っていないし、聞いたこともない。
人数を増やすことは考えられなかった。
「でも、話を聞くパートと予報するパートをふたつに分けたらどうか?」
最初、クレアさんがお客さんの話を聞いて、予報をする質問をいくつか作っておく。
それを受けて、僕が予報をする。
予報を前半と後半に分ければ、30分でふたりの予報をすることができるし、話を聞くなら僕よりもクレアさんの方が上手い。
あとは、僕とクレアさんの連係の問題は残るけど、うまく乗り越えることができる気がする。
「その形で僕とクレアさんが一緒に予報をするとうまくいきますか?」
《ピンポンパンポーン》
「うまく予報を出すことができて今より人気になるでしょう」
おおーーっ。
予報もうまくいくって言っている。
「わたしもその形、うまくいく予感がするの」
予感スキルもうまくいくって言っているのか。
これは、新しい可能性が生まれてきた。
「それでは、黒猫予報屋に就職を希望しますか?」
「えっと。給料はいかほどでしょう?」
女性って、現実的なのね。
楽しい仕事であっても、金銭のことをはっきりさせる。
そこを全く考えていなかった僕は、すぐには答えられなかった。
クレアさん評価に協力ありがとうございました。
結果は平均4.4でした。通常が4.5なので、微妙な結果でした。
コメントでも評価してくれた方が多くて、ヒロインではなく、レギュラーキャラ希望が多かったので、
この話になりました。
読者さんの意見でストーリーが変わっていく形、書く方としても面白いです。
この形で良かったのかな。引き続き評価に入れてもらえると、うれしいです。
 




