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第61話 手伝ってくれた女性にはお礼しないとね

「洋服を選んでくれてありがとう」

「どういたしまして」

「お礼と言っては何ですが、晩御飯一緒にいかがですか?」


買い物デートの後は、ディナーデート突入か。

なんでいちいち実況中継が入るのかは不明だけど、女性を食事に誘うなんてもちろん初めて。

ドキドキして誘ってみた。


「うれしいっ。お腹もすいてきたし」

「ただ。このあたりのお店、全然知らなくて。どこかいいお店を知りませんか?」


お店選びを女性に頼んしまうのはどうかと思うけど、知らないものは仕方ないじゃないか。

誰に言い訳しているのか不明だけど、とにかく聞いてみた。


「あ、それなら、行ってみたいお店があるの。新しくできたお店で評判なのよ」

「へぇ、どんなお店なのかな」

「それは、行ってみてのお楽しみってことで」


そのお店が場所に連れていってもらった。

すぐ近くにあって、人だかりができている。


「カニDoLuck、本日開店です」


呼び込みのお兄さんは元気だ。


でも、お店の名前がカニドゥラックか。

もしかしてカニ料理の専門店なのかな。


「ほら見て。あれが評判の理由なの」


カニDoLuckと書いてあるらしい文字の下に、でっかいカニが手足を動かしている。

これは目立つな。


そして、僕は別のことを思い出してしまった。


カニと言えば、カニ仙人。このお店を教えたら、きっと食べにくるだろうなぁ、と。


「おおっ、ちょうど良いところに来たな。予報屋よ」


ドキッ。まさか……なんか、嫌な予感はあったんだけど。


振り返ったら、カニ仙人、いやいや、大賢者さん、おっと。物知り爺さんだったか。

まさに、あの人が嬉しそうに立っていた。


「物知り爺さん!どうしてここに?」

「あの看板は、ワシが捕獲したカニじゃ。その殻を使って魔法で動くようにしたのじゃ」

「じゃあ、お店の関係者ですか?」

「ただ、頼まれただけだ。しかし、ひとつ問題があってな」

「問題?」


いけない、ついつい、物知り爺さんの話に巻き込まれてしまった。

今日は、女性連れだったんだ。あんまり、この人と関わらない方がいい。


「そうだ、問題だ。あのカニの看板、小さすぎるとは思わないか?」

「えっと、そんなことないんじゃないですか。評判になっているみたいだし。実際にこの女性も評判を聞いて僕も連れてきてくれたんですよ」

「おや、女連れか?」

「こんばんわ。初めまして」


物知り爺さん。彼女を上から下までじろじろ見た。


「おっぱいだけは良いな、あとは中の上というところじゃな」

「やめてくださいよ。変な鑑定をするのは」

「それよりも、カニじゃ。今から行けば間に合うぞ。すぐに調達ができる」

「何がですか?」

「もっと大きいカニの看板じゃ」

「今からって。もう日は暮れてますからカニ獲りなんて無理でしょう」

「そんなことはない、ワシに不可能なんてない」


ヤバイ。なんか変なことに巻き込まれているようだ。


「お嬢さんは、あのカニ屋でちょっと待っておれ。なに30分ほどじゃ。ちょっとこいつを借りるぞ」

「無理ですってば。だいたい、カニ獲りに僕は必要ないじゃないですか」

「それが必要なのだ。お前がいないと、でかいカニがいるところが分からないんだ」


予報しろってことか。それなら、ここでもできるから、勝手にひとりで行ってもらおう。


「それなら、今、予報しますよ」

「ダメだ。それでは精度が悪すぎる」

「えっ、どういうことですか?」

「予報スキルというのは、距離と時間が精度に影響するのじゃ」

「そうなんですか」


知らなかった。

物知り爺さんによると、遠くで起きることや、遠い未来のことを予報すると当たりづらいという法則があるらしい。

いままで遠くのことなど予報したことがないから、分からなかった。


「あれ?だとすると、カニがいるのが遠くだってことですよね。無理ですよ、装備だってないし」

「装備なら、レンガニ鎧があるだろう。ほら、ここに」

「あれ?」


確か、寝ているベッドの下に置いてあるはずのレンガニ鎧。それが物知り爺さんの手の上にある。


「レンガニ鎧はちゃんとある場所が分かるようにマーキングしておいたのだ。これを着ていくぞ」

「だから……」


拒否しようと思っていたけど、有無も言わさず勝手にレンガニ鎧を装着されてしまった。

この人の魔法は本当になんでもできるな。


「何、それ? カッコ悪い」

「あ、クレアさん…」


もしかして、嫌われてしまったのか。

せっかくカッコいい服を着ていたのに台無しだ。


「それでは、出発じゃ」


どこでもパウダーを舞わせると僕の手を掴んで、でっかいカニにいる場所に瞬間転移した。


☆  ☆  ☆


それから30分後。


カニDoluckの前に戻ってきた。

カニ仙人になった物知り爺さんと一緒に。


ふたりの後ろには5mもある巨大ガニが縛られてシタバタしていた。


「ジュートさん。いきなり消えたから、びっくりしたわ。ずっと待っていたのよ」

「女よ、こやつはジュートではない。カニ戦闘員じゃ」

「カニ~」


もう、この役も終わりにしてもいいよね。

脱いでしまおう。


「ふぅ、いやぁ、すごい闘いでした」

「このカニをふたりで獲ったの?」

「いや、僕は予報しただけです。カニを獲ったのは、カニ仙人の魔法です」


そんな話をしていると、店の中からびしっとスーツで決めたロマンスグレーなおじさんが出てきた。


「すごいじゃないですか。カニ仙人様。こんな大きなカニを良く捕まえられましたね」

「それは、こやつの手柄じゃ。一番大きなカニを見つけおった」

「あ、あなたは予報試合に出ていた予報屋さんですね。このカニも予報でみつけてくれたのですか?」

「カニ仙人に無理やり連れていかれて予報させられました」

「ありがとうございます。実は、お客さんがたくさん来て、カニ肉が足りなくなりそうだんです」

「それは、ちょうどよかったのじゃ。すぐにこれを解体して殻だけワシに寄越しなさい。でっかい看板を作ってやろう」

「それは、ありがとうございます。予報屋さんもありがとうございました」


《感謝ポイント50を獲得しました。次のランクアップまで103感謝ポイントです》


おおっ、感謝ポイントが入ってしまった。


「それでは、この巨大カニ、当店で買取されてもらいますね。金貨10枚でいいですか」

「それでよかろう」

「それでは、10枚です」


いきなり、金貨10枚をカニ仙人に手渡している。

すごいな、30分で簡単に大金を稼いでしまったな、カニ仙人さん。


「では、お前の取り分は3枚じゃ」


なんと。僕にも分け前があるのか。

今日の服の分とその他、もろもろを入れてもプラスだ。


「ありがとうございます。では、このお金で彼女とカニ料理食べますね」

「何を言っておるのじゃ、この後はカニ宴会じゃ。それも店長のおごりでな」

「あ、もちろん、最高の宴会を用意させていただきます!」


クレアさんとふたりでディナーデートの予定が、クレアさんと一緒に参加するカニ宴会になってしまった。

まぁ、クレアさんも喜んでくれたから、いいか。


いきなりのカニ仙人再登場。この話は、続きません。笑

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