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第58話 錬金レシピは予報できるのか?

「実は、これなんだが」


錬金術士さんはふたつのポーションを取り出す。

ひとつは良く知っているポーションだ。


「これがエナジーポーション・ネオ。これは中級ポーション・ネオ」

「エナジーポーション・ネオは僕も持っていますよ」


街道レンガ敷きの時にもらったポーションと全く同じだ。


「ほう。ジュートさんも持っているのか。土木作業員に配られているというのは本当なんだな」

「はい。街道づくりのときにもらいました」

「このふたつのポーションが最近、急激に普及し始めているんだ」

「何か、問題があるんですか?」

「どっちも、習慣性があるのは分かっているんだが。他にも副作用があるのではないかと言われているんだ」


どうも、錬金術ギルドで問題になっているらしい。


「何が一番問題なのかと言えば、レシピが全く知られていないことなんだ」

「錬金術士さん達でも、分からないんですか?」

「それほど錬金レベルが高いアイテムではないのに、レシピが不明。これは普通ではなくてな」


錬金術士さんはポーションのボトルを指を回転させている。

きっと、レシピが分からないということは、錬金術士さんにとって不安なことなのだろう。


「では、そのレシピを予報するんですか?」

「ああ。だけど、そんなこと、予報にできるんだろうか?」

「えっと。どうでしょう。質問してください」

「では、銀貨1枚」

「あ、ありがとうございます。だけど、分からないかもしれませんよ」

「それは仕方がないことだ。分からないというのも予報だからな」


錬金術士さんは考え込んでいる。

どんな質問をすればいいのか、考えているのだろう。


「まずは普通に聞いてみるか。このエナジーポーション・ネオのレシピは?」

「・・・・」

「あれ?予報はでない?」

「はい。それだと予報できないみたいです」


予報というのは、ただの質問じゃなくて、未来を観るもの。

人に関することだと、それでも予報できるんだけど、物に関してはダメらしい。


「えっと。何がダメなんだろう」

「たぶん、人が絡んでいない質問だからじゃないですか?」

「人か。分かった。質問を変えてみよう。このポーションを私が錬金できるようになりますか?」


《ピンポンパンポーン》


「できないでしょう。材料が不足しているので錬金できません」

「おおっ、予報が出た。しかし、できないか。でも、原因がはっきりしたな。材料不足か」

「それなら、その材料を入手する方法を聞いてみたら?」

「それはいいかもな。私がこのポーションを錬金するときに不足している材料は何ですか?」


《ピンポンパンポーン》


「タイマー草です」

「タイマー草?」

「もしかしたら、時間を計ることができる草ですかね」


この世界では、容器に穴をあけて、水が落ちることで時間を計る器具がある。

タイマーと呼ばれている。


「タイマー草という名前ならそうかもしれん。しかし、聞いたことがない草だな」

「僕も聞いたことありません」

「それでは、もう少し予報してみよう。私がタイマー草を入手することはできますか?」


《ピンポンパンポーン》


「無理でしょう。どこで採取できるか分からないでしょう」

「そうなんだけどさ。それを教えて欲しいんだが」

「聞いてみたら?月向草の時みたいに」

「そうだな。タイマー草を採取できるのは、ここから一番近いのはどこでしょうか?」


《ピンポンパンポーン》


「帝国の西端にある草原でしょう」

「「帝国!」」


帝国というのは、この街が所属している王国の西に隣接している大国だ。

王国と帝国は敵対関係にあり、特別な許可をもった人とか行き来できない。


「帝国にあるということは、普通で考えると入手は困難だな」

「でも、それならば、このポーションは帝国製ってことになりませんか?」

「そういうことか。何かの意図があって帝国が我が国にポーションを流しているということか」


なんか、ずいぶんと大それた話になってきたぞ。

帝国という国が隣にあることは、さすがに僕でも知っている。

30年前まで戦争状態にあって、そのときの戦いの話を吟遊詩人が話している。


「すると、このポーションに関わっている人は帝国の手先ってことですか?」

「いや、商人なら儲けが出るなら喜んで売りつけるはずだからな」


そういえば、予報をした商人の中にも中級ポーション・ネオを扱うかどうかって人がいたな。あの人が帝国の手先には見えないな。


「どうしたらいいんでしょうか?」

「この話は我々のレベルでは処理しきれない内容だ。錬金術ギルド長から、しかるべきところに伝えてもらおう。もちろん、このことは他言無用だぞ」

「はい。もちろんです」


予報の内容を他の人に言うなんてできないし。


その後、中級ポーション・ネオも同じこと予報をしたら、タイマー草が必要だとの予報になった。

ネオが付くポーションは要注意だということだな。


「ご苦労だった。私は錬金ギルド長にこのことを報告してくる。ジュートはどうする?」

「僕は用事があるので」

「そうか。では」


錬金術士さんと別れて、僕は商業地区に向かった。

まだ日が暮れていないから、ちょっと買い物をしようと思っていたのだ。


実は予報試合をするときに、服の話をされて全く人前に出れるような服を持っていないことに気づいた。

ボロボロの作業着しかない。

予報試合の時の服は、主催者が用意してくれたからよかった。


いつもの予報をするときも、ボロボロの作業着だったから、さすがになんとかしないと、と思うようになってきた。

まずは、どんな服があるのか、下見をしてこようと思っている。


そんなことを思って、商業地区に向かっていると、声を掛けられた。


「黒猫チームの予報者さん」


振り返ったら、女性がいた。


ヤバそうな錬金素材が登場しました。

そして、謎の女が・・・


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