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第52話 インチキ予報屋に反撃するには?

あれから3日が経った。

昼間に街道歩道のレンガ敷きを1500個行って、夜は黒猫亭で予報屋をする。


予報屋と言っても、前と違って毎日1組か2組しかお客さんが来ないから気楽だ。

それでも、レンガ屋と合計して銀貨2枚か3枚稼げている。


今の僕には十分な収入だ。

ただ、自分の部屋を持つインスラ住まい当分はお預けだ。


このペースの収入でインスラ住まいはぜいたくすぎる。

もっと予報屋のお客さんが増えないと家賃のために無理をすることになってしまう。


レンガ屋の方は順調だ。

毎回、エナジーポーション・ネオを一本もらう。

飲んだふりして、持って帰っている。

もう4本貯まってしまった。


今は、レンガ屋の仕事が終わって黒猫亭に向かっている。

予報屋のお客さんは来てくれるかな。


「いらっしゃいませ」


いつもの様にミリーちゃんが出迎えてくれる。

店を見渡すけど、常連さんが数人いるだけで予報屋のお客さんはいない様だ。


「何にします?」

「えっと、パンとスープをお願いします」


お客さんがガンガン来ていたときは、迷わず肉料理を頼んでいたけど、今は一番安い食事を選んでしまう。

予報屋のお客さんが来るかどうか、わからないから無駄使いはできない。


「あんまり予報屋さんのお客さん、来ないわね」

「うん。やっぱり、冒険者ギルド前の予報屋に行ってしまっているみたいだね」


あっちの予報屋に行ったことはミリーちゃんは話した。

ミリーちゃんも「そんなインチキに決まっている」って言う。

僕もそう思う。


だけど、インチキだろうと本物だろうと人気があるのはあっちの予報屋だ。


「いらっしゃいませ」


僕と話していたミリーちゃんは新しいお客さんが入ってくるのを見てそっちの方に向かう。

あれ?入ってきたお客さん、どこかで見た気がする。


「あ、予報屋さん。今日もいてくれましたか。よかった」

「えっと、誰でしたっけ?」

「私は、冒険者ギルドのギルド長です」

「あ、そうでした。月向草作戦のとき会いましたね」


顔は見おぼえあるけど、誰だったか思い出せなかった。

そんなことってあるよね。

特にあの時はたくさんの人が関わったから、顔を覚えきれなかったんだ。


「あの・・・ギルド長さんが予報ですか?」

「あ、いや。予報ではなく相談がありまして」


冒険者ギルド長の相談というと、また何か大規模な作戦があって、その予報とか。

あ、予報ではなく相談だっけ。


「実は、冒険者ギルドの前に予報屋ができまして」

「知っています。一度偵察に行ってきました」

「それなら、話が早い。あの予報屋っていい加減ではないですか?」

「えっと。あんまり他のとこの悪口は言いたくないんですけど」

「あ、そういうんじゃなくて。同じ予報屋として、どう見えました?」


なんと答えたらいいのかな。

あんまり思ったことを言うと、自分のとこが人気がないのに妬んでと思われるのも嫌だし。


「正直に言ってもいいですか?」

「お願いします」

「あれは、予報ではないと思います」

「予報ではないというと、何なんでしょう」


なんなんだろう、あれは。

うーん、いい言葉がないな。


「単に若い女性とお話しするだけ?」

「あ、そういうことですか。そういう印象ですよね」

「僕の個人的意見ですよ」


ギルド長さん、何か考えている。

あの予報屋がどうしたのだろうか。


「実は、あの予報屋はちょっと困っていまして」

「そうなんですか」

「無茶な依頼を受ける様に予報を出す人がいるんです」


あっちの予報屋はたくさん予報をする人がいるけど、その中の何人かが大胆な予報をするらしい。

ひとつ上のランクの依頼を受けて上手くいくと予報をする。

すると、冒険者達はそれを信じて無茶な依頼にチャレンジする。


どうも最初の頃にそんな予報で無茶な依頼にチャレンジしたら、成功した冒険者パーティがいたらしい。

その冒険者達が予報屋を「すごい」と持ち上げたから、あんまり経験がない冒険者が予報を聞いて信じて無茶な依頼を受けてしまう。


「結局、ランクの上の依頼を受けたパーティに損害がたくさん出るようになってしまって」

「それは、まずいですね。僕のとこに予報を聞きにきた人の中にも、上のランクの依頼の予報を聞いた人が何人もいます」

「それって、どうなるんですか」

「予報と言うのは、結果を他の人は話すことは厳禁なんですが」

「そこをなんとか」

「他言無用でお願いしますよ。全部の人に、『その依頼は上手くいかないでしょう』って予報になりました」

「それはよかった」


しかし、そんな無茶な依頼にチャレンジする様に予報を出すなんて、危険なことだろう。


「どうも、予報をしているのが女性で冒険者の世界に疎いみたいなんです」

「本来、予報って知っているかどうかはあまり関係ないんですが」

「そうなんですか?」

「私も元々は冒険者の世界は全然わかりませんでした。今は、だいぶ分かりましたけど」

「だけど、知らなくても、無茶な依頼にはうまくいかないってなるんですよね」

「そうです」


うーん、そんないい加減な予報が出てしまっているのか。

単にお客さんをとられただけなら仕方ないと思うけど、同じ予報をしている人が迷惑をかけているとなると、なんとかしないといけないと思う。

だけど、どうしたらいいのか、全然分からない。


「なにか、対策ってあるんですか。その無茶ぶりをする予報屋に」

「それが、いい策が見つからないで困っていまして。このまま、冒険者達に被害が続くのは困るんです」

「うーむ。どうしたら、いいんでしょうか」


ふたりに唸っていたら、お客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませ」


D級パーティに出戻りした剣闘士兼業のロンだ。

僕のところに近づいてくる。


「あ、予報中でしたか?あっ、ギルド長さん!」


僕の話し相手がギルド長だと知ってびっくりしている。


「予報中じゃないけど、ちょっと込み入った話をしていて」

「でも、ちょっとだけいいですか」

「なんでしょう?」

「やりましたよ、予報の試合。実現しそう。これであのインチキ予報屋をやっつけられるぞ」

「なんだ、その話は。君も冒険者だったね。インチキ予報屋っていうと、冒険者ギルドの前のあれか?」

「その通り!」


タイミング良く、あの予報屋対策が飛び込んできたのだ。

ギルド長を交えて試合の話になった。



偽物は、公開処刑が一番ですね。

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