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第51話 レンガをうまく、たくさん積める方法があるらしい

胸の谷間が気になる予報屋さんに行った日の夜。

黒猫亭で待っていたけど、予報屋さんのお客さんは来なかった。残念。


次の日は、普通にレンガ屋で仕事をしようと思って土木ギルドを訪れてみると。


「今日は新街道の歩道部分のレンガ敷きだ」

と、職員さんが宣言した。


街道の歩道部分はレンガでできている。

街道は長いから、完成するのに何年もかかる。


だから、急ぎの仕事がないときは、街道づくりのチームに派遣される。


「そうだ。ジュートさん。街道づくりに参加する人には、これを支給するように言われているんだ」

「なんですか?」


職員さんが出してきたのは、一本のポーション。

黄金色の液体が入っている。


「エナジーポーション・ネオっていうポーションなんだ」

「ポーションって、傷を治すんですよね」

「それはヒーリングポーション。単にポーションっていうとヒーリングポーションのことだけど、これはエナジーポーション」

「エナジーポーションだと、効果ってどんなものになるんでしょうか」

「力がみなぎって疲れなくなるんだ。それに集中力が出る」

「それ、タダでもらえるんですか?」

「本当は大銅貨1枚くらいするらしいんだけど、新発売するポーションらしくて試供品なんだ」

「それはうれしいですね」


どうなんだろう。無料で配るっていうのは。

ちょっとなんか怪しいな。

まぁ、効果を実感してもらって、お金を払って買ってもらいたいって思っているんだろうけど、レンガ屋にとって大銅貨1枚って安くないしなぁ。


職員さんが他の人の説明に向かった隙に、予報を使って判断してみた。


「このポーションを使うと、何か問題はありますか?」


《ピンポンパンポーン》


「軽い習慣性があります。一度使うと又使いたくなる効果があります」


うーん、やっぱり。

それで試供品を配っているんだな。

やっぱり、使用するのは控えよう。


「それでは、街道レンガ敷きのチームに合流する人、こっちに集まってください」


おっ、今日はみんなで一緒に行くらしいぞ。

全部で6人で、監督官はソニンか。ソニンなら元レンガ屋で気ごころが知れてるからやりやすいな。


街道を造っている現場に着いた。

街道を少し掘り下げる人、そこに砂を入れていく人等々、たくさんの職人が働いている。

僕らレンガ屋は本線の左につくられた歩道にレンガを敷き詰めていく作業だ。


レンガ積みは上に向かってレンガを積んでいくけど、レンガ敷きは横に敷いていく作業。

下の砂を平にしてレンガを置いて、レンガとレンガの間にも砂を入れていく。

レンガを敷いた後には、大木を切って作った丸太で上から押して、安定させる。


僕らレンガ屋の仕事は砂を敷いてあるとこに、レンガを敷くところまで。

だから、セメントを使う現場より、レンガを敷くのが簡単で時間節約ができる。


だいたい、普通で1.5倍は敷ける。賃金も150個敷いて大銅貨1枚だ。

普通のレンガ屋さんで、1日750個敷くのが基本だ。


どうしよう。僕は今日の予定を何個にしようか。

迷っていたら、一緒に働くおっさんが個数の予定をソニンに申告した。


「いつもなら750個だか、今日はエナジーポーション効果で900個だ」

「おおっ、すごいな。初チャレンジだな」

「おうよ」


僕はエナジーポーションを使う気はないけど、また倍で行こうか。

1500個だな。


「僕もエナジーポーション効果で1500個行きます」

「おい、1500個とは大きく出たな」


僕はもともと倍数ができるって分かっているからね。


「お互い頑張りましょう」

「おうっ」


おっさん、腰に手を当てて支給されたポーションを飲んでいる。

僕は飲んだふりだけしょう。


「身体にパワーがみなぎってくるな」

「はい。感じます」


おっさん見ていると、確かにパワーがみなぎっている様子。

顔がほんのり赤くなって、体温が上がっているみたい。


「よし、やるぞ」

「僕も始めます」


砂・レンガ・砂・レンガ・押し!


たくさんの人が働いているから、さすがにテンポ獲りを声に出すのは恥ずかしい。

心の中でテンポ取りのリズムを刻む。


砂・レンガ・砂・レンガ・押し!


レンガを2つ敷いたら、後ろに押し付けるように寄せていく。


砂・レンガ・砂・レンガ・押し!


うん、テンポがいい。できあがったレンガ敷きも綺麗だ。


砂・レンガ・砂・レンガ・押し!


このペースなら、1500個は余裕で敷けるな。


砂・レンガ・砂・レンガ・押し!



一時間弱で150個積んだところで一休み。

隣で作業しているおっさんを確認してみる。


「よし、もう少しで100個だ」


なんと。1000個ペースのスピードで敷いている?

おっさんにしては早くないか?


「順調みたいですね」

「だろ。あのポーション、すげーな。スピードも集中力も格段にアップするぞ。そのうえ、疲れないし」

「本当ですね」


飲んでいないから、自分では実感できないけど、おっさんを見ていて効果がすごいと思う。


「これなら休憩なしで200個はいける。お先に」


あら。抜かれてしまった。

休憩している僕より早く敷いている。


おっさんが敷いた部分を確認してみると、たしかに多少凸凹はあるけど、そのくらいは最後の大木がなんとかしてくれるはず。問題なさそうだ。

すると、あのおっさん、900個ではなく1000個くらい敷けてしまう計算だ。

普段より相当多い。


ちょっと競争心が刺激されるけど、自分は自分でいかないと。

しっかり丁寧に、そしてスピーディに。

1500個ペースで敷いていこう。


結局、夕方ちょっと前に僕は1500個敷き終えた。

おっさんは途中からペースは落ちたけど、僕よりちょっと遅れて1000個敷き終えた。


「やったな、同士よ!」

「はい。やりましたね。1500個。ちょっと疲れました」

「何言っているんだ、若いの。これしきで疲れるとは。俺はまだまだいけるぞ」


さすがにもうすぐ日が暮れるから、終わりにするみたいだけどね。


僕は1500個敷きで、銀貨1枚もらった。


監督官のソニンに確認したところ、今日のレンガ職人の平均敷きレンガ数は、1000個くらいだという。


いつもの750個に比べてる1.5倍まではいかないけど、すごい数だ。

エナジーポーション・ネオ効果がすごい。


「いやあ、今日1日監督していて、私も使ってみたいなと思ってしまいました」


ソニンは監督官だからポーション支給がない。

体験できなくて残念らしい。


もしかしたら、このポーション。土木職人の働き方の革命が起きるかも。

そんなことを思いながら、隠し持った黄金色の液体が入った容器を眺めていた。

ネオ・シリーズのポーション。だんだんと正体が分かってくるね。

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