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第50話 敵情視察は大切な情報収集の手段だよ

「ここか」


今、冒険者ギルドの斜め前にある予報屋にやってきた。

あのインチキ情報屋が運営していると言う予報屋だ。


「どんな人がどんな予報をしているのか、すごく気になる」


そして、もうひとつ気になったことは、こっちの予報屋のお客さんの入り方。

僕の方が開店休業状態になっているところをみると、こっちの予報屋は行列ができているんじゃないか。

そう思って、敵情視察をするつもりでやってきた。


元々、今日は昼予報屋をする予定だったが、昨日の夜に二組しか予報屋に来なかったから、ほとんど知っているお客さんがいない。

昼予報屋をしても開店休業だろうから、中止した。


本当はレンガ屋をすればいいんだけど、それよりも気になっている新しい予報屋を見てみようと思い立ったのだ。


「だけど、思ったほどお客さんが集まっていないのか?」


行列はできていない。お客さんがそんなにいないのかと思ってみていると、ふたり組の男が予報屋の建物に入って行った。

しばらく観察していると、また、ひとりの女性が建物に入っていく。


「どういうことだ?もしかしたら、建物の中に行列があるというのか」


外から見ているだけでは分からないので、中に入ってみることにした。


「いらっしゃいませ」


入口を入るとすぐにカウンターがあって、背が高くて綺麗な女性が座っていた。


「あ、あの。噂の予報屋はここですよね」

「はい。予報屋です。まずは、どんな予報をしてほしいのか教えてください」

「えっと、仕事をどうしたらいいのか迷っていて……」

「仕事の予報ですね。冒険者ではないですよね」

「はい。レンガ屋をしていまして」

「それでは、3番の部屋に行ってください」

「3番はどこですか。この部屋ですね」


建物の地図でどこに行ったらいいか、指示をだした。

受付の綺麗な女性はにっこりと笑って送り出してくれた。


示された地図の辺りに来ると、ドアがたくさん並んでいる。

全部で6つ。一番奥は廊下が右に曲がっているからその先がどうなっているのか、分からない。


字は読めないが数字だけは読めるから、3と書かれたドアをノックした。


「はい。お入りください」


ドアの向こう側は、小さな部屋になっていた。横並びで座れるテーブルと椅子がふたつ。

ひとつの椅子には、大きな胸の女性が座っている。


「こちらにお座りください」


横の椅子を勧めてくる。

椅子と椅子の距離がなかなか近い。

部屋が狭いので、距離をとることはできなかったのだろう。


「はい。ありがとうございます」

「この予報屋を利用するのは初めてですよね」

「はい。噂に聞いて、どんなところだろうと」

「そういう方、多いんですよ。ここのシステムをはお話してもいいですか」

「お願います」


予報には3つのコースがあり、そのうちひとつを選らぶ。


1.トライアルコース 10分大銅貨5枚

2.ベーシックコース 20分銀貨1枚

3.スペシャルコース 50分銀貨2枚


どのコースを選んでも、途中から上のコースに切り替えることができる。


そんな話をしてくれた。

でも、話の内容より、その女性が胸を強調する服を着ていて、上からのぞくで谷間が見えてしまうから、気になってしかたない。



「どのコースにしますか?」

「すみません、トライアルコースでお願いします」

「わかりました。10分のコースですね」

「はい」

「大銅貨5枚になります」

「あ、はい」


大銅貨5枚を手渡すと、それまでにこやかに笑っていたのが、真剣な顔に変わる。


「それでは、どんなことを悩んでいますか?」

「えっと、仕事のことです」

「仕事ですね。どんな内容でしょう」


レンガ屋をしていること。だけど、こちらの予報屋さんみたいに、ひとの悩みに乗る仕事もしたいと思っているんだけど、レンガ屋とどっちがいいのか教えて欲しい。


そんな内容を細かいことは隠して質問してみた。


「レンガ屋と相談屋ですね。どちらがいいか予報を聞いてみましょう」


どっちなんだろう。実際、今、悩んでいるし。


「相談屋はお客が来ないでしょう」


あ、当たっているな。今は全然お客さんがいなくなってしまった。


「レンガ屋の方は確実に仕事ができて、評価もされるでしょう」


うーん。当たっている。

もう少し、突っ込んだことを聞いてみたいなと思った。


「それじゃ、レンガ屋をやりつづけて空いた時間に相談屋をするのはどうでしょう」

「ごめんなさい、トライアルコースは質問はひとつだけなんです。どうしましょう。ベーシック、もしくはスペシャルコースにしますか?」


うわ。もうトライアルコースは終わってしまったんだ。10分も話していない気がするけど、そういうものらしい。

もうちょっと調査を続けたいから、スペシャルコースにしてみよう。


「それでは、スペシャルコースにしてください」

「えっ、スペシャルですか。ありがとう、嬉しいです」


やっぱり、スペシャルコースはうれしいんだ。

すごい笑顔で身体も近づけてくる。

当然谷間がもっと覗き込みやすいとこに来ている。


「あ、えっと。そうそう。もう一度質問しますね。レンガ屋と相談屋、両方をするのはどうでしょう」

「両方ですね。はい。ちょっとお待ちください。予報を聞きます」


真剣な顔になって、目をつむる。


「両方でも、相談屋の方はお客が来なくてダメでしょう」

「ダメなんですね。僕が相談屋をするのは」


ちょっとむかついて、強めな言葉で確認した。


「えっと。これは予報ではなく、私の意見なんですが。相談屋も予報屋っていくつか条件がある人がお客さんが集まるんです」

「どんな条件ですか?」

「まずは、容姿端麗。男でも女でも、です。続いてコミュニケーション能力」

「だけど、予報とかが当たればお客さんって増えませんか?」

「当たるかどうかの前に、誰の予報を受けるかってところで、差が出てしまうんです」

「そうなんですね。お姉さんも予報屋さんだから、そのあたり良く分かるんですね」

「そうなのよ。やっぱり美人が得なのよ。あとお話が上手い人。残念ながら私はあまり両方ともなくて」

「そんなことないですよ。綺麗だし話しやすいし」

「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいです」


なんか、慰める形になってしまった。

こんなに綺麗で胸も綺麗なのに。もしかしたら、他の部屋にはもっと美形な女性がいるってことか。


「このお店ってまだできたばかりですよね」

「はい」

「それならば、お客さんたくさん来ているでしょう。お姉さんにもたくさん予報の依頼があるんじゃないのかな」

「店長がね。今はお客さんが多いからって安心するなっていうのよ」

「あー、店長さん、良く分かっているんだ」

「そうなのよ。だから、予報に来てくれた方がどのコースを選ぶかっていうのが重要なの」

「あ、そうですよね。もしかしたら、お姉さん、スペシャルコースはあまり選んでもらえないとか」

「そうなのよ。ここだけの話、スペシャルコースはあなたが初めてなの」


あ、それであんなに喜んでくれたのか。

予報だけじゃなくて、いろんな話に応えてくれるのも、それかな。


「もしかして、このお店。売り上げとかでランクづけとかしているのかな」

「わかります?そうなのよ。昨日の私のランクは12人中9位なのよ」


ええっ、12人もいるの?すごい。

だから、行列できずにすぐに入れてもらえたんだ。


「するとランク1位の人はすごい美人さんなんですか?」

「残念でした。1位の方は男性です。すごいイケメンで女性にすごい人気なの」


ここは、うちと違って女性のお客さんが多いのかも。

うちは、2割くらいしか女性はいないからなぁ。


その後も、予報屋さんのことをいろいろと聞いてしまった。

50分のうち、予報してもらったのは、最初の10分くらいだった。


「あ、ごめんなさい。予報全然していないのに時間になっちゃった。つまらない話ばかりでごめんなさい」

「いえいえ。僕も予報屋って仕事を良く知りたかったからちょうどよかったです」

「そう?じゃあ、最後にひとつだけ予報をしましょう。何がいいですか?」


あ、予報内容は全然考えてなかった。

どうしよう。

また、いろいろと教えて欲しいから……。


「また、お姉さんに会うことはありますか?」


真剣な顔に戻ったお姉さん。目をつむって予報を聞いている様だ。

目を開いて、言う。


「あなたと私は何度も会うことになるって予報に出ているわ」

「本当ですか?」

「また来てくれますか?」

「あ、もちろん。何度も会うことになるんですよね」

「そう」


顔を近づいて、にっこり笑ってくれた。

なんか、予報なんて関係なく又来ちゃいそうだ。


「今日はありがとうございました」

「あ、そうそう。スペシャルコースの料金頂くのを忘れていました。頂いた分を引いて銀貨1枚と大銅貨5枚になります」


料金を払って、予報屋を出た。

そして、思ったんだ。


この予報屋の予報が当たるとは思えない。

だけど、この予報屋が繁盛するのはとても良く分かるな、と。


今回はちょっと長いなぁ。

予報屋は、精度だけじゃなくて、システムが重要だということが分かりました。

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