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第5話 予報は僕の人生をどうしようとしているのか

「金貨と銀貨か」


今は黒猫亭から帰ってきて、ベッドの上にいる。

一部屋に5つもベッドがあるから、部屋では寝ることくらいしかできない。


だけど、今日は寝付けないでいた。


「毎週銀貨1枚か」


C級冒険者パーティのリーダー、昨日予報で猛毒コウモリの話をした剣士さん。

彼が黒猫亭で言ったこと。


「私達のパーティのために毎週予報をしてもらえないだろうか」


予報の価値を認めてくれているC級冒険者パーティの方々。

だから、次の週の依頼を受けるにあたって予報を活用したいとのこと。


どんな活用の仕方をするのかこれから考えるということだが、土曜の夜に黒猫亭に来るから予報をしてほしいと提案されてしまった。


「銀貨1枚でお願いできないだろうか」


銀貨1枚といえば大銅貨10枚だ。

レンガを1日500個積んで大銅貨5枚。レンガ積み2日分。


それが黒猫亭でエールを飲みながら質問に予報で答えるだけでもらえてしまう。


先週までレンガ積みで週給銀貨3枚だった。

これに黒猫亭での予報のバイトを入れると銀貨4枚に跳ねあがる。


使うお金を変えなければ、毎週銀貨1枚と大銅貨3枚も貯められるようになる。

一気に生活が楽になる。


「もちろん私達にとって銀貨1枚というのは、それほどきつい金額ではない。これから予報の使い方をいろいろと試してもっと価値が出ることが分かれば料金を上げることもできるが最初は銀貨1枚でどうだろうか」


そんな提案をしてくれた。

試すだけで銀貨1枚。


正直言って、冒険者のお金の価値観がレンガ屋とは違うんだなと思った。


一回の依頼で金貨5枚を受け取る彼ら。ひとりあたり金貨1枚だ。

もっと多い時だってある。

1日金貨1枚を稼ぐ彼らと、週銀貨3枚の僕。


生きている世界が違うんだろう。


「しかし、彼らは命をかけてそれをやっている」


同じ冒険者でも、始めたばかりのG級や、その上のF級くらいだと1日銀貨1枚稼ぐのも大変だと言う。

そのうえ、装備をメンテナンスするのも消耗品を買うのも自分だ。

必要な物は支給されるレンガ屋とは違う。


依頼を成功させてもそんなもので、失敗したりするとお金をもらうどころかペナルティーを払わないといけない。


冒険者はそう簡単に稼げる職業ではない。


だけど、彼らは2年前に黒猫亭に出入りしていた頃。そんなF級冒険者だった。

ひとつひとつ依頼をこなしていって、ランクがあがりC級になって戻ってきた。

その間には、危ない状況が何度もあったと武勇伝を話していた。


僕はといえば、その2年間、レンガを積んで生きてきた。

僕の生き方が間違っていたとは言わない。

だけど、彼らの2年間と比べてしまう。


「あーあ。僕はこれからもレンガを積み続ける人生なのかな」


《ピンポーン》


「あなたはこれから予報屋となるでしょう」


ええーっ。予報屋。

つまり、冒険者に予報をする仕事なのか。


そのはじめとして、彼らに予報をする仕事を受けることになるのか?


だけど、彼らがずっとこの街にいる訳じゃないし。

彼らがいなくなったら、またただのレンガ屋に戻るだけだよな。


「僕はずっと予報屋としてやっていくことができるのかな?」


《ピンポーン》


「あなたは予報屋をしながら新しいユニークスキル「言ったら実現」を得て新しいことにチャレンジするでしょう」


なんだ?「言ったら実現」って?

ずっとレンガを積むことしかしてこなかった。

それなのに、いきなり物事がいろいろと起きてきて。


頭が混乱してきた。


「言ったら実現」

意味が分からない・・・聞かなかったことにしよう。


予報屋としての仕事を受けるかどうか。

回答は土曜日まで待ってもらった。


「だけど、予報の通りだと受けることになるんだろうなぁ」


予報屋か。

たしかに予報屋だったら夜だけでもできる。


予報屋をするのを黒猫亭だけと決めてしまって、昼はいままで通りレンガ積みをする。

もし、予報屋の収入が黒猫亭の支払いより多くなれば、毎日黒猫亭に通える。


週6日通って、大銅貨18枚か。

C級冒険者達がいるうちは、毎週銀貨1枚もらえるから、あと大銅貨8枚か。

あ、元々週2日通っているんだから、大銅貨6枚は元々使っているのか。


するとあと大銅貨2枚か。

貯金しているのが週に大銅貨3枚だから、大銅貨1枚に減ってしまうな。


あ、そうか。晩御飯がいらなくなるから、毎週4日分の夕飯代として大銅貨2枚よりはかかっているな。


「すると、冒険者の予報屋をすると毎日黒猫亭に通えることになるのか」


そう考えたら、冒険者の予報屋がすごく魅力的に思えてきた。

もし、そのうち冒険者が別の街に行って予報屋の仕事がなくなったとしたら。


また普通のレンガ屋に戻るだけじゃないか。

確かに毎日黒猫亭に通う生活に慣れてしまうと、また元に戻るのはつらいかもしれない。


だけど、そうなったとしても我慢すればいいだけのこと。

いいじゃないか。


それよりも明日のレンガ積みの話を考えなきゃ。

明日はふたりしかこないみたいだから、どうなるのかな。


予報を聞くこともできるけど、僕には責任がないから聞かなくていいか。

監督官が困るだけだろう。


ケチなあいつが困るのはいいきみだしな。


だけど、レンガ積みに行く前にもう一仕事があるとはこの時は気が付いてなかった。


新しいお仕事に悩んでいます。どうするのかな。


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