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第48話 ライバルが登場していた

「ほら、やっぱり。でも、言った通りでしょう。予報屋さん、お暇そうね」


黒猫亭に入ったきたのは、セシルだ。後ろからリーダーのマセットも入ってくる。

今日はふたりだけやってきたみたいだ。


そういえば、マセットのC級冒険者パーティに最後に予報をしたのは月向草の大採取の時だから、先週の水曜日あたり。今週の予報を聞きに来てくれたのかな。


「先週はすごい人気だと聞いていてね。予報を聞きにくるのを遠慮していたのよ」

「お気遣いありがとうございます。そうなんですよ。今週になったら、なぜかピタリとお客さんが来なくなってしまっていて」

「うふふ。その理由なら、私、知っているわよ」

「本当ですか!それ、教えてくださいっ」


なんと予報屋にお客さんが来ない理由をセシルが知っているらしい。

お願いしたらその理由を教えてくれたんだ。


なんと、ライバルが登場していたと言う。


「それがね。冒険者ギルドの斜め前にあった、さびれた食堂が『予報屋』って、でっかい看板を出していてね。すっごくお客さんが入っているのよ」

「なんと別の予報屋が。いつの間に、そんなお店ができたのか」

「きっと、あなたの予報屋が人気だと、どこかで知って真似したのよ、きっと」


そんな良い場所に大きな予報屋ができたのなら、そっちに行ってしまうのは仕方ないか。

だけどさ。予報スキルを持っている人ってそんなにいるのかな。


「それだけじゃないのよ。冒険者ギルドの噂では、『黒猫亭の予報屋』ってことで、ここの話がでているのよ。それも『あそこはダメだ。当たらなかった』って言いふらしている冒険者パーティがいるのよ」

「あちゃ、予報が外れた人が出てしまったんですね」

「それがね。その人に話を詳しく聞いてみたんたけど。たぶん、ここには来たことがないってすぐ分かってしまうのよ。お店のことを聞くと全然違うことを言うし」


すると、誰かが悪評を流してここへお客さんが来ない様にしているのか。

妨害しているってことだな。そんなことをして利益があるのは、新しい予報屋か。


「たぶん、新しい予報屋に金でも、もらって嘘の噂を流しているんでしょう。元々ね、言いふらしているのがあまり良くない評判がある冒険者達だからね」

「うーん、そんな手を使ってくるのか」


そうなると、僕のとこには当分、お客さんが来ないのかもしれない。

いったい、どうしたら、いいのかな。


「セシルが知っているのは、そこまでかい?」


あれ?いきなり、セシルと僕の話にマセットが割り込んできた。あまり、そういうことしない人なのにな。


「何よ?もっと何かあるって言うの?」


なんか、セシルがムキになっている。

話の腰を折られたって奴だね。


「俺は、あの予報屋を作った奴らの情報をゲットしたんだけど、知りたくないかな?」

「おおっ、そんなことまで調べてくれたんですか」

「やり方がずいぶんとあざといからね。悪評をバラまいたりね。きっと、どこかヤバイ筋が関わっているんじゃないかと思ってさ」

「どこなんですか?関わっているヤバイとこって?」

「ジュートは情報屋って聞いたことがあるかな」


情報屋っていうと、賢者さんのとこに行く前ら騙されて連れていかれたところだ。

銀貨3枚、騙し取られた。


「それって、商業地区にある所ですか」

「おっ、知っているのか。どんな情報でも扱うところだ。裏世界の情報も詳しいところでもある。どうも、あそこが裏で糸を引いているらしいぞ」

「そうか。あの、ガタイが良いボスのとこか」


あの情報屋のポスが新しい予報屋を作ったのか。

すると、予報と言ってもいい加減な物だろうな。

予報スキルなんて全然関係していない人が予報をしているんだろう。


「どうする?何か反撃したいと思うのかな」


正直言うと、相当むかついている。

人のはじめたことを真似しておいて、そのうえ邪魔をしてくる。

あの情報屋がやりそうなことだ。


だけど、同時にお客さんが来なくなったのはそれだけじゃないんじゃないか、って思ったりする。

あまりにお客さんが増えすぎて、時間を半分にしてしまったし、予報を出すのをただこなしているだけになっていた感じがする。


「今は、やめておきます」


どうせ、あの情報屋なら、いい加減な予報しかできないのだろうから、当たらないって評判がそのうち立つはずだ。

別に僕が何かをしなくても、そのうち潰れるだろう。


「きっと、僕の予報を信じてくれるお客さんはいると思います。たから、今はそのお客さんだけに予報していこうと思います」

「ほぉ、すごいな。頭に来ないのか?商売を邪魔されて」

「それは頭に来ますけど。でも、やたらとお客さんが来てしまって、丁寧な予報ができていなかったのも事実なんです。マセットさん達のように僕の予報を信じてくれている常連さんも、予報を受けづらくなっていたし」

「それはそうなんだが。俺達にしたら、このくらいお客さんが少ない方が嬉しかったりするけどな」


たくさんのお客さんじゃなくて、信じてくれる常連さんを大切にする。

それが商売の基本じゃないか。


レンガだって、予報だって、一つ一つ、丁寧に行う。

それをしなければ、信用なんて得られるはずがない。


「今の僕の予報は、このくらいのお客さんがちょうどいいのかもしれません。最悪、マセットさん達は毎週来てくれるんですよね」

「もちろん来るさ。これからもよろしく頼むな」


うん、そう言ってもらえるお客さんを大切にする。

予報屋を続けていくにしても、いきなりお客さんがたくさん来るより、ひとりひとりと常連さんが増えていく。

その方が、僕らしいな、と。


そんなことを考えていたら、もう一組、予報屋さんにやってくるお客さんがいた。

前に予報をしたことがある人達だ。


それは・・・


わーい。この話で10万文字を超えた。応援してくれている読者さん達のおかげです。

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