第47話 好事魔多しっていうけどさ
月曜日になった。
今日は錬金術士さんのとこで1000個積みをチャレンジしようと思っていたんだけど、まだ錬金術士さんは忙しいみたい。
中級ポーションを作るというのは、思ったより時間が必要な物らしい。
だから、別の現場でレンガ1000個積みにチャレンジしてみた。
時間はギリギリだけど、クオリティーに問題なくレンガ1000個積みは成功した。
「すごいな。普通の倍速でこのクオリティーかよ」
監督官に褒められて気持ちがいいな。
賃金はもちろん2倍の銀貨1枚。
普通のレンガ積みで銀貨をもらえるのはすごいことじゃないかな。
アーチ積みといい1000個積みといい、レンガ屋としての実力がついてきているのがうれしいな。
だけど、明日はレンガ積みをお休みにした。
土木ギルドの職員さんには朝、そう告げてある。
その理由は、初めての昼の予報屋をスタートさせるから。
火曜日を昼予報屋の日にしようと決めていた。
最初は昼もやっていることを知っている人があまりいないだろうから、あまりお客さんが来るとは期待はできないけど。
だけど、だんだんと増えて行ってくれたらうれしいな。
火曜日に昼予報屋をしても待っているお客さんが減らない様だったら、金曜日のお昼も予報屋の日にしてもいいかなと思っている。
レンガ屋は週4日に減ってしまう。それ以上は減らすつもりはない。
やっぱり、レンガ屋も好きなんだよね。
「さて、今夜の予報屋はどれだけお客さんが来るかな」
日曜日でお休みがあったから、その分お客さんが多いのかもしれない。
その人達に明日の昼予報屋の話を伝えると、口コミで昼もきてくれるかなと。
だけど、また、お客さんが一杯っていうのは、ちょっと怖い気がする。
そんなことを考えていたら黒猫亭に着いた。
「いらっしゃいませ」
いつもの様にミリーちゃんが出迎えてくれる。
いつもの様に……
あれ?お客さんがあまりいない。
最近、黒猫亭に行くと常連以外のお客さんがたくさんいるのが普通な感じになっていた。
そのほとんどが予報屋のお客さんで黒猫亭に着いたとたんに囲まれてしまうっていうのがパターン化していた。
だけど、今日はそれがない。
「あれ?予報屋のお客さん、いないのかな?」
「まだ来ていないの。おととい、整理券配ったから、予報してもらいたい人達もそんなに急いでこないのかもね」
昨日は日曜日で黒猫亭もお休みだ。
だから、今日来る予定なのは、土曜日までに整理券を配ったお客さん達。
それだけで10人以上いるから、何人かは待っていてもおかしくないと思っていた。
「整理券ない人でも、今ならすぐ予報が受けられるんだけどなぁ」
「そういう時って、意外とお客さんが来なかったりするよね」
「あるある」
忙しいときに限ってお客さんが後から続々と来る。
分散してきてくれたら助かるし、待たないで済むのに、どうも気持ちが一致するものらしくて、混んでいることに限ってさらに人が集まってくる。
「じゃあさ、お客さんが来る前に食事しておこうかな」
「それがいいわね。エールは、仕事前だから無しかしら?」
「もちろん、無し。今日は肉料理にしよう。何があるかな」
「あ、おいしいバァッファローステーキがあるって、マスターが言ってたわよ」
「それ、お願い。うまそう」
バァッファローステーキだと、銀貨1枚。レンガ屋だけの収入だと、とても頼めないメニュー。
でも、最近はレンガ屋も予報屋も収入が増えたから、値段を気にしないで食べたい物を頼むようになっている。それがとっても嬉しい。
なんと言っても、肉。肉ってとにかく美味いからね。
「はい、バァッファローステーキお待たせ」
「わーい。うまそうだな」
分厚いステーキに喰いつく。歯ごたえがあるうまい肉だ。
ガツガツと一気に食べていく。
セットのサラダとパンとスープも一緒に食べる。
「でもなんか、全然お客さん、来ないね」
「おかしいな。昨日休みだったから、今日はすごく混んでいるんじゃないかって思っていたんだけどな」
「お客さん達は、どうしたのかな」
その後、結局1時間ほど待ったけど、お客さんは来なかった。
その代わりに、お客さんが来ない原因を教えてくれる人がやってきた。
それは・・・。
今日の予報屋は開店休業です。




