第46話 今日は石探しの日
今日は日曜日。レンガ積みの仕事はお休みだ。
夜の予報屋もお休みにした。
お休みだから、久しぶりに石探しに近くの川に来ている。
石探しは、この街に来てからずっとやっている僕のたったひとつの趣味だ。
でも、最近はなんだかんだで石探しができていない。
今日は、思いっきり石探しをするぞと、珍しい石が見つかる川にやってきた。
5mほどの幅の川で綺麗な水が流れている。
やっぱり自然の中にいると癒されるなぁ。
ずっと街の中にいると疲れがたまってしまう感じがする。
たまには石探しをしないとね。
とにかく今週は忙しかった。
予報屋の募集を1日10人にしたら、あっと言う間にその枠が埋まるようになってしまった。
今も、整理券で待っている人が10人以上いる。
日曜日はお休みだと言ったらブーイングだった。
でも、ちゃんとお休みをとらないとダメだよね。
レンガ積みの方はアーチ積みを3日間して、全部で50のアーチが完成した。
僕が積んだのはそのうち39アーチ。
50のアーチが囲む集会所は美しい建物になるだろうなぁ。
計算してみると先週はなんだんだ言って、金貨6枚も稼いでしまった。
普通にレンガ500個積んでいるだけだったら、4カ月分の賃金だ。本当にびっくりした。
「でも、これ以上稼いでも仕方ないか」
今まで週給銀貨3枚の生活してきた。
倹約することなら慣れているけど、逆にお金があるっていうのが落ち着かない。
週給金貨で6枚も収入がある生活は全くイメージできていない。
「それだけ収入あるなら、もっといいところに移らないの?」
昨日、ミリーちゃんに聞かれた。
そんなこと、考えたこともなかった。
今の住処は大部屋のベッド貸で1日大銅貨1枚。
インスラって呼ばれる集合住宅だとキッチンが付いた1部屋が月で金貨2枚。
今週の収入だけで3カ月分のインスラ家賃が払えてしまう。
「インスラ住まいか。それもいいかも」
隣の男のいびきを気にすることもない。
インスラなら誰の目も気にしないで生活できる。
インスラに住むなら、黒猫亭の近くがいいかな。
あのあたりは、周りにインスラがたくさんあるし。
そういえば、黒猫亭の上もインスラだったな。
そんなことを思いながら、河原で石探しをしている。
別に特別な石を探している訳じゃない。
綺麗な石だったり、不思議な形の石だったり。
そんな石を探している。
元々は、お金のかからない趣味ということで始めた。
石探しをしていると、集中してきて楽しくなってくる。
いつもはね。
だけど、今日はダメだなぁ。
15歳で大人になって3年。
その間に起きたこと以上のことがここ数週間で起きてしまっている。
「このまま、レンガ屋と予報屋を両方やっていくのがいいのか」
もちろん、収入のことを考えたら予報屋一本に絞った方がいいのに決まっている。
だけど、予報屋はお客さんが来なかったら仕事がなくなる。
今は、黒猫亭に来ている時間を予報屋にあてているから、お客さんがいなくても別に気にならない。
これがもし、場所を借りて、予報屋一本にしたら、お客さんが来なくなったら嫌だな。
こないお客さんを待っているのは、苦痛だろう。
「やっぱり、レンガ屋はやめられないな」
では、逆に今のままだと、お客さんがさばききれなくなってしまう。
もっと、時間を増やさないとダメか。
黒猫亭のマスターにお願いして、黒猫亭が始まる前の時間に場所を借りるのはどうだろう。
もちろん、毎日って訳ではなく、最初は週1日で。
その日は、プラス3時間、予報屋を増やして20人の予報をする。
レンガ屋をお休みして。
別にレンガ屋は毎日いかないといけない仕事じゃない。
ほとんどのレンガ屋をしている人は気分でお休みをしている。
僕みたいに、一年間、雨の日と日曜日以外は休まないってレンガ屋は珍しくて、ほとんどいない。
だから、週末に翌週レンガ屋を休みにする日をあらかじめ伝えておこう。
そうすれば、人数の調整とかもしやすくなるはずだろうし。
本当は石探しに来ているんだけど、全然石に目がいかない。
頭の中で現状を整理している。
だけど、川はいいなぁ。
水の音を聞いていると、気持ちが安定してくる。
その日は結局、石探しもしないで、河原でぼーっとしていた。
石探しの回、だったけど。石探しはしていないなぁ。




