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第43話 レンガ積みの実績が認められてきたぞ

「実は設計士ギルドから指名依頼が入ったぞ」

「設計士ギルド?」


いつもの様に土木ギルドに行くと、知らないところから指名依頼が入っていた。

もっとも、指名依頼自体が2件目だけどね。


「建物とかを設計するのが設計士で、その集まりが設計士ギルドだ」

「そうなんですね。だけど、どうして、そんなとこから僕に指名依頼がくるのだろうか?」

「聞くところよると、あの錬金術士さんの紹介らしいぞ」


あ、錬金術士さんか。設計士さんに僕のこと、自慢したんじゃないのかな。


「設計士ギルドが関わる建物というと、複雑な建物で有名だ。きっと、ジュートのレンガ積みの正確性を評価しての依頼だと思うぞ」

「わお。それはうれしいですね」

「とにかく、まずは行ってみな。詳しい話は向こうの人がしてくれるはずだ」


わざわざ指名してくれたとなると、すぐにいかないとね。

もらった地図で設計士ギルドの事務所を訪ねてみた。


「こんにちは。レンガ屋のジュートです」

「お待ちしていました」

「ご指名ありがとうございます」

「いえいえ。ジュートさんのレンガ超絶精密積みを活かして欲しい物件があるんですよ」


レンガ超精密積みって、錬金術士さん、いったい、どんな話をしているのかな。


「僕にできるんでしょうか」

「大丈夫です。ジュートさんなら間違いなく素晴らしい出来になるはずです」


そんな期待をしてくれているが、設計士のミシェットさん。

20代後半くらいの綺麗なお姉さん。


「実は今、うちで設計した集会所を建築しているんです。でも、レンガのアーチ部分を積める職人さんが全然いなくて困っています」

「アーチ!」


アーチといえば、レンガ積みの華ではないか。

特別な職人だけが積むことを許されているレンガ積みの最高峰。

少しでもズレがあると崩壊すら可能性がある。難しさでは普通のレンガ積みの比ではない。


「そうです。アーチです。ジュートさんやってくれますか」

「えっと。正直に言いますとですが、アーチは積んだことがないんです」

「それは知っています。アーチ積み経験者はこちらですべて把握していますから」


となると。僕が初めてアーチを積むことを知った上で依頼してくれているんだ。

僕もアーチを積めるレンガ屋になるチャンスってことだね。


「やります!やらせてください!!」

「引き受けてくれますか。よかったぁ」


よし、アーチ積みのチャレンジはできそうだ。

だけど、本当に僕で出来るのかな。

ここはひとつ、ちゃんと確認しておかないとダメかな。


「すいません。ちょっとだけ、自問自答してみていですか?」

「自問自答ですか?どういうこと?」

「それは、こういうことなんです……僕はアーチ積みをしたら、うまく積むことができますか?」


《ピンポンパンポーン》


「最初にしっかりとした指導を受ければ、ベテラン並みにアーチ積みをすることができるでしょう」

「おお、それって。噂の予報ってあれ、ですよね」


錬金術士さん。予報の話もしていたんだ。話が早くていいな。


「そうです。予報ではアーチ積みは指導してもらえれば大丈夫みたいです」

「もちろん、ちゃんと指導しますよ。私が」

「ええっ、あなたが?レンガ積みもするんですか」

「はい。上手いんですよ、レンガ積み」


設計士さんと言うと、図面を書いて後は現場で文句だけ言っているイメージがある。土木職人の間では、設計士の入っている建物は文句が多くて面倒くさいというのが常識だ。


「それでは、しっかりとアーチ積みを教えてください」

「もちろんですわ。まずはアーチを積んで欲しい建物の図面を見てくださいね」


テーブルに一杯に大きな図面を広げる。

図面は大きな集会所の設計図。

建物の周りが回廊になっていて、柱が立ち、その柱の上がアーチになっていて隣の柱と結ばれている。

アーチだらけの建物だ。


「柱の部分まではレンガ積みが終わっているから、その上のアーチ部分をお願いしたいのよ」

「はい、やります。喜んでやらせて頂きます」


一体、アーチはいくつあるんだろう。図面で数を数えてみたら、全部で50もあった。


「すっごいアーチの数ですね」

「そうでしょ。このアーチがデザインのキモなのよ」


デザインのことは良く分からないけど、このアーチが続いている建物はきっと美しいものになるだろうと思う。


「この建物は街の北地区全体の総合集会所になるのよ。多くの人が利用するから、喜んでもらえる建物にしたいのよ。そうなるかしら?」


《ピンポンパンポーン》


「建物のアーチの美しさで大人気になるでしょう。若い人のデートスポットとしても人気になります」

「本当?うれしいっ」


やっぱり、人気になるんだ。

さて、設計図も見たし、早くアーチ積みしたくて仕方がない。


「あの。はやく現場、行きたいんですけど」

「そうね。今日も一杯アーチ積みしてもらわないとね」


やった。いよいよ、アーチ積みの体験ができるぞ。

すっげー、楽しみだ。


レンガって言ったら、アーチを忘れちゃダメだよね。

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