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第42話 予報屋は大盛況です

次の日、レンガ積みを終わらせて黒猫亭に行くと大変なことになっていた。

店に入るなり、ミリーちゃんがようやく来たって顔で言う。


「ジュートさん!予報を希望している方が一杯来ていますよ」

「はい?」


ミリーちゃんの言葉で僕が予報屋だと分かったんだろう。

我先にと、近づいてくる。


「お願いです。予報をしてください」

「何を言っているんだ!俺が先だ」

「ずっと待っていたんだから、私から」


8人くらいのお客さんが僕の周りに集まる。


「ええー、みなさん、予報を求めている方々ですか」

「おうよ。すげー当たると聞いてな」


見た感じ、冒険者がほとんどみたい。


「どの方が最初に来ていたんですか?手を挙げてください」


みんな手を上げている。

これじゃ、誰から予報したらいいか分からないじゃないか。


「この人です」

「そうだ。俺だ」


ミリーちゃんが教えてくれた。

ミリーちゃんに頼んで来た順番で5人を選んでもらう。

パーティで来ている人は代表者ひとりだけにしてもらう。


「ひとり銀貨1枚30分までです。今日は5人だけ予報をします」


こういうことは最初にちゃんと言わないと揉める原因になる。

レンガ積みだって、ちゃんと最初にいくつ積むのかを言わないとおかしなことになる。

レンガの様に形がない予報屋なんてもっと揉めるだろう。

最初が肝心なんだ。


「代表者は全部で4人ですね。今夜、皆さん予報しますので、お待ちくださいね」


しっかりと言うと混乱が収まってきた。

順番が後の人は、大人しくお酒を飲んでいる。


「まずは俺だな。俺はD級冒険者をしていて、どの依頼を受けたら一番金になるかを知りたいんだ。装備を新しくしたからとにかく金がなくてな」

「予報代は銀貨1枚で前払いです」

「おっと、そうだな。これで」


懐から銀貨を1枚取り出して机に置く。

それを僕は財布にしている袋に入れた。


「だいたいの状況は分かりました。次は質問の形で聞いてください」

「えっと、今の俺たちのパーティで一番金になる依頼はどれだ?」


《ピンポンパンポーン》


「オーク狩りの依頼が一番お金になるでしょう」

「おおっ、オーク狩りか。確かに気になっていた依頼だ。ただ、オークだと群れで襲われてしまうと俺たちのパーティでは戦力不足になりかねないと思ってな」

「あ、それも質問してみてください」

「おっと、そうだった。俺たちのパーティで戦力不足になるほどの数のオークと遭遇しますか?」


《ピンポンパンポーン》


「一度にパーティメンバー数以上のオークとは遭遇しないでしょう」

「よし!それならオーク狩りで決定だ!」


うれしそうにガッツポーズをしている。

うーん、大丈夫かな。


「あの。もしかするとオーク狩りをすると何か危険があったりするかもです。そのあたりも聞いてみませんか?」

「おっと、それはいいな。オーク狩りの時に何か危険は起きるのか?」


《ピンポンパンポーン》


「特別な危険なことは起きないでしょう。普通にアクシデントは起きますので、注意は怠らないでください」

「ずいぶんと丁寧に教えてくれるんだな。もちろん、注意は怠りはしないぞ」


納得している様子だな。

他に何か聞いた方がいいことはあるかな。

そうだ。


「お金が必要だと言ってましたよね。もしかしたらオーク狩りの時、他に何か採取だったり、狩りだったり、できることがあるんじゃないですか?」

「おおー。素晴らしいアドバイスだ。よし、それも聞いてみよう。オーク狩りの時、オーク以外で金になる物はあるのか?」


《ピンポンパンポーン》


「光り苔がある洞窟が見つかる可能性があります。洞窟をチェックしてみましょう」

「ほう。光り苔か。たしか、錬金術の素材になると聞いたことがあるぞ。ちゃんと調べてみよう」


うんうん。そうした方がいいだろうなぁ。

一石二鳥を狙った方がおいしいからね。


「もう大丈夫ですか?」

「おう。大丈夫だ、ありがとうよ」


冒険者の予報はずいぶんと慣れて来た。

初めて予報を受ける人が気づかないことも、アドバイスして予報することができる。


必要な予報を受けて冒険すれば危険が減って、報酬は増えるだろう。

冒険者って仕事は、リスクが多い仕事だけど、成功すれば報酬も多い。

だから、予報屋の良いお客さんになってくれる気がする。


「はい、次の方」


次の方も、その次の方も、冒険者だ。

この夜は、後から来た1人もいれて、5人の予報をしたけど、すべて冒険者だった。


C級とD級の冒険者で、その中のひとりは月向草採取の作戦に参加した人だった。


「あの作戦に参加した冒険者で予報屋の噂が飛び交っていたんだよ。ほとんど見つからないって言われていた月向草のある場所を予報したってね。予報屋スゲーって」


あ、いきなり予報屋のお客さんが増えたのは、やっぱりそこからか。

噂ってありがたいことでもあるんだな。


だけど、いきなり増えすぎっていうのも、ある。

この日、予報依頼のお客さんは後から続々と来て、全部で7組になった。


予報ができるのを5組に絞ったから、2組は翌日の予約として帰ってもらった。

せっかく予報を求めているのに、断るのは気が引ける。


だけど、ひとりひとり、しっかりと予報をしたいから数は絞らないとね。

冒険者の予報というのは、命がかかった予報なんだから。


この日は結局、予報屋として銀貨5枚を売り上げた。


今週だけで予報屋の収入は金貨1枚と銀貨9枚になった。

今まで、レンガ屋の収入は毎週銀貨3枚だったから、格段の高給取りになった。


「お金ができたから、節約生活を少し変えてもいいかな」


そうは思ったけど、今の予報屋人気は続くとは限らないからまだまだ早いかなとも思っていた。


予報屋さん人気です。儲かりまっせ。

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