第41話 感謝はされてもポイントが入らないのはどうしたことか
「月向草大量採取作戦の成功を祝して、乾杯!」
冒険者ギルド、錬金術ギルト共催の祝賀パーティが作戦実施の日の夜に開催された。
関係しているだけで60人にもなる大規模作戦だ。
結果は、作戦通りに月向草を大量に採取できた。
「これで中級ポーション不足は解消になりますね」
僕はパーティに参加している錬金術士さんに聞いてみた。
「いや、それは無理だろう。せいぜい普段の討伐月の流通量の半分になるくらいだ」
「その程度なんですか?」
「それでも大した量ではあるが。元々は、ほとんど流通してなかったんだからな」
しかし、現在、採取できる月向草はほぼ採取した形だ。
これ以上は月向草は手に入ることはない。
「では、どうするんですかね」
「すでに、王都をはじめ、あちこちの街で中級ポーションを買い入れる手配はしているそうですよ」
「それなら、安心ですね」
いろいろな形で足りない中級ポーションをなんとかしているらしい。
「それで邪魔しているメリッシュ商会の問題はどうなんですかね」
「予報では証拠にはならないから、今は証拠集めをさせているところだ」
さすがに、相手も簡単にしっぽを出すこともないだろう。
盗賊がメリッシュ商会の指示で動いたことを証明するのは困難だろう。
「頭にきますね。メリッシュ商会」
「なに、今回の件でメリッシュ商会も損を被っているからな」
「そうなんですか?」
「中級ポーションを買い占めたり、月向草を採取しまくったり。そうとう経費が掛かっているはずだ。中級ポーションが出回ってしまったら、高く売ることができないですしね」
今回の作戦は、それを狙った作戦でもあったのだ。
不当に買い占めをする商会がまた出てこないように、買い占めで利益を与えることはしてはいけないのだ。
「とにかく、今回の作戦の功労賞はあなただ。関係者を代表してお礼を言わせていただこう。ありがとう」
《感謝ポイント5を獲得しました。次のランクアップまで845感謝ポイントです》
今日だけで多くの人の感謝の言葉をいただいた。
その度に感謝ポイントを獲得した。
なかには、感謝の言葉を言っているのだが、ポイントが入らない人がいた。
気持ちと言葉が合っていないのかなと思ったりする。
「そうそう。明日はうちの工房のレンガ積み、やってくれますか?」
「もちろんです。明日は普通のレンガ積みなら1000個積みにチャレンジしたいんです」
「おおっ、そんなにか。それだと予定より早く完成できそうです」
今日は結局、月向気採取のことがになってレンガ積みをしなかった。
その分も含めて、明日2倍積みにチャレンジするのだ。
「あ、いたいた」
ワインのグラスを持ったマセットが僕を見つけて声を掛けてくる。
一緒にマセットより少し年上の男がいる。
「この人は私の先輩の冒険者で、B級なんだ」
「あなたが、今回の作戦の予想をした人ですか」
「予想ではなく、予報です。主に月向草のある場所を予報しました」
これで予報を予想と言った人が今日だけで3人もいる。
他にも、占いだったり、予感だったり。いろいろと間違えてた人がずいぶんといる。
その度に予報と言い直しているけど、なんだか面倒くさくなって、もうなんでもいいや、とも思ったりする。
「そのうち、黒猫亭にお邪魔して、予報をお願いすると思います」
「はい。30分までなら銀貨1枚で予報しています」
「たのみましたよ」
まぁ、本当に予報を受けにくるかどうかは微妙だけど、お世辞でもそう言ってもらえるのはうれしい。
僕の予報には銀貨1枚以上の価値があると感じられるからね。




