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第37話 大人の女になるために必要なこと

「あら、いらっしゃい」

「こんにちは、ミリーちゃん」


今日で連続3回、黒猫亭に来ている。

収入が増えたから、毎日来ても大丈夫な流れだ。

もっとも、錬金術士さんにおごってもらったりしているから、出費が増えた訳でもない。


「お店は、もう開いているの?」

「うん。だけど、まだ誰もお客さんいないの」


元々、黒猫亭は夜7時くらいにならないとお客さんが集まらない。

今はまだ5時ちょっとすぎだ。


「仕事が早く終わってしまってね。部屋にいても暇だから来てしまったんだ」

「わーい。じゃあ、ミリーとお話しましょうよ」


ミリーちゃんが嬉しそうに言う。

最近、冒険者相手に予報ばかりしていたら、あまりミリーちゃんとお話ししてなかったなぁ。


「あのね。来月ね。私の誕生日があるの」

「来月だったんだ。じゃあ、プレゼント探さなきゃ。何が欲しいのかな」

「えっと、プレゼントもうれしいんだけど・・・」

「何?どうかした?」


なんか言いづらそうにしているミリーちゃん。

なんだろう。


「えっと、来月の誕生日は特別なの。ほら、15歳だから」

「あ、15歳の誕生日!」


15歳の誕生日というと、特別な日で成人になる日だ。

お酒や賭博場など、成人でないとできないことも多い。


「そうかぁ。ミリーちゃんも大人か」

「ええ。大人の女になるのよ」


初めて、黒猫亭に来たときは、まだ12歳だったはず。

子供だと思っていたけど、もう大人になるんだ。


「それこそ、お祝いしないとね」

「それもあるんだけど。ちょっと不安で・・・ユニークスキルのこと」


そうか。ユニークスキル。

人は誰でもひとつだけのユニークスキルを持っている。

ただ、15歳になるまではそれが何かは分からない。


15歳になった次の日曜日にスキル神殿に行って、神官さんにユニークスキルを授けてもらうのだ。


僕の場合は、子供の頃の夢は商会に入って商売を仕事にしたいと思っていた。

だけど、15歳のとき授けられたのは予報スキル。

商売をするのにも役立つも思っていたけど、商会に入るための面接で予報が余計なことを言ってしまった。

おかげで商会に入って商売するって夢はやぶれてしまった。


「ミリーちゃんは大人になったら何をしたいの?」

「私は料理の仕事をしたいな。何か料理に役立つユニークスキルがもらえたらいいんだけどね」


望んでいるスキルと与えられるスキルが一致するとは限らない。

時には、思ってもいないスキルを授けられてしまうこともある。


「だけど、どんなスキルが授けられるかは神様しか知らないのよね」

「そうだね。15歳で人生変わってしまったって人も多いからね」


僕もそのひとりだし、冒険者になりたいと言っていた幼馴染みはユニークスキルが冒険に役立たないという理由で、冒険者になるのをあきらめてしまった。


「料理人になれるスキルだといいね」

「うん。でも、ひとりでスキルを受け取るの、心配で」

「あ、よかったら、僕が一緒に行こうか」

「えっ、いいの?」


どんなスキルになるか分からないから、一緒に来てくれる人がいると安心っていう気持ちが分かる。

僕もスキルを授けられるとき、友達と一緒に神殿に行ったんだ。


「一緒にいこう。どんなスキルでも、ミリーちゃんはミリーちゃんだからね」

「ありがとう」


うん。ミリーちゃんの親はもう亡くなっていると聞いている。だから、僕が親代わりで一緒にいくのは良いことだよね。


「それでもうひとつお願いがあるんだ」

「なに?」

「スキルを授かった日。デートして欲しいの」


真っ赤になって言う。

えっ、デート・・・それは困った。

僕はデートなんてしたことない。

もちろん、女の子と付き合ったこともない。


「デート・・・。ごめんね。僕、そういうこと疎くて。女の子が喜ぶようなとこ全然知らないんだ」

「ううん。いいの。公園でもどこでも。ジュートさんと一緒なら」


真っ赤な顔でいう。

えっと、それって・・・。

なんと答えたらいいのか、迷っていると後ろの方から声がする。


「あんた!なに女の子に言わせているのよ。男なら自分から誘うのがマナーってものでしょ」


なんと、いつの間にか、女冒険者のセシルが来ていたのだ。

どうも、セシルはふたりの話を盗み聴きしていた様子。


「あ、セシルさん。いらっしゃいませ」


ミリーちゃん、顔を真っ赤にしたまま、奥に引っ込んでしまった。

マセットも来ていて、こっちを見ている。


「おいおい。ふたりの邪魔をするんじゃないぞ、セシル」

「邪魔じゃないわよ。あまりにもどかしくて手助けしただけじゃない」


そんなふたりの会話を聞いていても、どうも頭に入ってこない。

女の子からデートに誘われるという初めての経験で頭がぼーっとしてしまっていた。


頭が真っ白だ。

ずっとレンガ積みしかしていなかったから、女性の扱い方は下手です。

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