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第35話 ドワーフ製は、もしかして贅沢なのだろうか

今日はいつもより早起きをした。レンガ積み700個チャレンジの日だからね。


仕事の前に、朝一番で行こうと思っているところがある。土木道具屋さん。


レンガ積みをするとき、バルモルをレンガとレンガの間に入れるんだけど、そのバルモルを載せるためにコテを使う。


いままでは土木ギルドの人があらかじめ、他の材料と一緒にコテも用意しておいてくれた。だけど、お金に余裕ができたから、マイ・コテを持とうかと思ったんだ。


コテの値段は知らないけど、売っている所は知っている。そのお店は僕ら土木作業員が現場に入る前に買えるように朝早くから開いている。便利だね。


「ここが道具屋さんか」

「いらっしゃいませ」


おや、店員さんがかわいい。歳は僕と同じくらいかな。丸顔で笑顔がかわいい女性。土木作業員のためのお店だから、店員はおっさんだと思っていたのにびっくりだ。


「今日は何をお探しですか?」

「えっと、コテを見たいんだけど」


店員とはいえ若い女性に声を掛けられるとドキドキしちゃう。


「どんな用途のコテでしょうか」

「あ、レンガ積みをするときに使うコテです」

「それなら、こちらに並んでいます」


女性店員の後をついていく。ふわっと、いい香りがする。それだけでまた、ドキドキしてしまう。


「ここから、ここまでがレンガ積みに使えるコテです」


うわっ、すごい。

コテがたくさん壁に掛けられている。全部で50はあるだろうか。良く見てみると、ひとつひとつ違っている。


「こんなにあるんですね」

「はい。ここに来る職人さんはこだわりがある人が多いので」

「どれがいいのか分からなくて迷ってしまいます」

「私がお選びしましょうか?」


あー、選んでもらうのもいいけど、やっぱり自分で選びたいな。


「大丈夫です。なんとか」


うん。自分で選んで、最後に予報を使ってみよう。どんなに気に入っても、使いづらいのを買ってしまったらダメだからね。


「そうですか。それなら、分からないことがありましたら、なんなりと聞いてくださいね」

「はい」


まずは、大きさだ。別に大きな物である必要はないな。特に数を作るなら小回りが効いた方がいいから、ギルドが用意してくれるコテより一回りだけ小さいのがいいと思う。


「そのあたりのコテはスピードを重視する方、もしくはディテールを重視する方に好評です」


うん、やっぱり、このあたりのコテで正解だな。

だけど、まだ10本もあるぞ。違いはというと、値段か。一番良いコテになると、金貨1枚と銀貨2枚となっている。高い!1か月分の賃金じゃないか。鋼鉄製だと書いてある。


さすがに、それは無理として、そのふたつ下のランクのこれ。


「ドワーフの匠が丹精込めて鍛え上げた逸品」


そんな売り文句が書いてある品。鋼鉄製ではなく、鉄製だけどやっぱりいいな。銀貨で3枚。

同じ鉄製のコテだと安いのは銀貨1枚からある。

だけど、ドワーフ匠製のコテはなんか、品格があるというのかな。オーラが違うというのかな。端々にこだわりを感じる仕上げになっている。


「あ、それに目を付けましたか。いいでしょ、それ。さきっちょの尖り方、素晴らしいですよね」

「うーん、いいなぁ、これ。だけど高い」

「確かに値は張りますが、いい道具を持つと仕事が丁寧になるといいます。このコテを買った方が仕事が丁寧だと褒められたと、うれしそうに報告にきたことがあるんですよ」


たしかに。このコテを使えば仕事が丁寧になるのは間違いない。丁寧なだけではなくスピードも上がるだろうなぁ。


だけど、予算オーバーだ。

本当のことを言うと、銀貨1枚くらいでなんとかならないかって思ってきた。たしかに、ギルドで用意してくれているコテよりは良い品が銀貨1枚で売っている。

でも、ドワーフ匠の逸品を見てしまうとそっちを選べなくなってしまう。


「うーん、予算オーバーだなぁ、欲しいけど」

「ちなみに予算っておいくらくらいですか?」

「出せて銀貨2枚なんです。本音は銀貨1枚でなんとかならないかと」

「お分かりだと思いますが、銀貨1枚のもありますけど・・・これを見てしまうと選べませんよね」


うう。なんとも、商売上手だな、この人も。


「どうでしょう。初めて来店してくれた記念にこれをお買い上げいただくというのは」


やっぱり勧めてするのは、ドワーフ匠印がついたコテだ。


「銀貨3枚か・・・」

「特別に銀貨2枚と大銅貨8枚に値引きしましょう」

「えっ、値引きしてくれるの?」

「ただし、他言無用ですよ。他の人に言われても値引きはしませんから」

「なぜ、僕にだけ値引きしてくれるのですか?」

「わたしは道具の声が聞こえるのです。この人に使って欲しいとあのコテがアピールしているんです」


えっ、そうなの?たしかに、そんな声が聞こえる気がする。

おっと、いけない。もし、コテがそう言っているのだとしても、僕に使いこなせないと仕方ない。ここは、予報でしっかりと確認しておこう。


「このドワーフ匠印のコテは僕に使いこなせるでしょうか?」

「もちろんですとも」


あ、先に女性店員さんに答えられてしまった。


《ピンポンパンポーン》


「このコテを持てば、あなたはレンガ積みのクオリティとスピードは格段にアップすることでしょう」

「えっ?」


女性店員さん、きょとんとした顔をしている。自分で質問しといて自分で答えた。変に思われても仕方ないよね。


「あ、なんでもありません。やっぱり、このコテが僕に合っているとこを確認しただけです」

「へぇ、不思議な確認の仕方ですね。だけど、素晴らしい相性ということですね」

「はい」


よし、決めた。このドワーフ匠印のコテにしよう。今週だけで、予報の銀貨が3枚手に入っているから、これを買っても大丈夫だ。そのうえ、仕事が捗るなら、元は確実に取れるだろうし。


「これ、ください。銀貨2枚と大銅貨8枚ですね」

「はい。お買い上げありがとうございます。わーい、うれしいっ、とコテが言ってます」


コテを手に取ってみてた。初めて手にしたとは思えないくらいしっくりと来る。これで今日はレンガ700個積みにチャレンジしてみるぞ。


コテを肩掛け袋に入れて、土木ギルドに向かうことにした。


道具にこだわると、きりがなかったりして。


続きが読みたいなって思ってくれたら、ブクマや評価、コメントをよろしくです。

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