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第34話 黒い森は危険が一杯あるという

「いらっしゃいませ。皆さん、お待ちですよ」


いつもの様にマスターが迎えてくれる。

奥のテーブルには、C級冒険者の2人と錬金術士がいる。


「あれ?昨日よりひとり少ないですね」

「彼は用事があるというので、今日はふたりで来ました」


リーダーのマセットと女魔法使いのセシルだ。

一緒に錬金術士さんも座っている。


「黒い森のマップを買ってきました」

「おっ、なかなか詳しく書きこんであるね」


錬金術士さんが地図を覗き込んで言う。


「はい。冒険者用のマップですので」


大きい羊皮紙に描かれた地図には、大木とか蒼い岩とか、目標になる物と一緒に遭遇する魔物が書いてある。


「これによると、魔物化した野獣が多いですね。ワイルドボアとか、ビックホーンとか」

「書き込まれている魔物は黒い森の中心に行くに従って強くなっています。中央部だとB級魔物も出現していますから、そこは危険です」


リーダーが説明する。


「予報で言っていた月向草が採取できるのは、どのあたりですか?」

「この辺りのはずです。だから、C級魔物が少しとD級魔物が普通に遭遇する感じですね」


もうだいたい作戦はできているみたいだ。

もちろん、錬金術士さんの依頼を受けるということだろう。


「それでは正式に依頼を出しましょう。月向草を最低10束は欲しい。成功報酬は金貨5枚。もし、10束以上の月向草が採取できたら、1束銀貨3枚で引き取ろう。他のとこにはもっていなかないと約束して欲しい」

「わかりました。その条件で受けましょう。ただし、ギルドで黒い森で達成できそうな別の依頼も受けていいですよね」

「その方がありがたい。黒い森に行くのが自然になるからな」


リーダーと錬金術士との間で依頼の詳細は決まったらしい。


「それで、どのギルドの依頼を受けるか、予報して欲しいんだが」

「はい。了解です」

「では、銀貨1枚だ」


リーダーが銀貨を手渡してくれる。


「えっ」

「これは、別の予報の依頼だ。当然だよ」

「ありがとうございます」


今回の黒い森の話は昨日の続きだから、もう予報代はもらった気でいた。

これはこれで別らしい。


「月向草を採取するのと同時に、漆黒イタチ2匹の依頼は成功しますか?」


《ピンポンパンポーン》


「弓矢を2人以上が携帯すれば、成功するでしょう」

「よし、弓矢だな。うちのパーティなら3人弓矢は使えるから、そのうち2人に持たせよう」


うん。漆黒イタチを狩るんだね。毛皮になるのかな。


「次いくぞ。月向草を採取するのと同時に、香木採取の依頼は成功しますか?」


《ピンポンパンポーン》


「香木はみつからないのでうまくいかないでしょう」

「やっぱり、そうか。黒い森にあると言われているが、そう簡単には見つけられないか」


香木って、木なのかな。なんに使うんだろう。


「これはどうだろう。地図屋の黒い森の情報提供。成功するかな?」


《ピンポンパンポーン》


「一部分の情報になるので、依頼内容からすると成功としては認めてもらえないでしょう」

「ダメか。まぁ、依頼ではなく、直接、情報を持っていけば買い取ってくれるかな」


《ピンポンパンポーン》


「銀貨4枚で買い取ってくれるでしょう」

「よし、それならば詳細な情報をメモすることとしよう」


そんな依頼まであるんだ。


「大蜂のハチミツ採取の依頼はどうかな」


《ピンポンパンポーン》


「大蜂の巣を見つけることは、可能性はありますが、確実ではないでしょう」

「ん?そんな予報も出るんだ。どっちなんだ?」

「さぁ?どっちもありうるって予報ですね」

「これも、依頼を受けずに採取できてから、ギルドに持ち込めばいいか」


黒い森、および、そこにいる魔物や採取できる物に関する依頼はそれだけらしい。


うまく行きそうなのは、漆黒イタチだから、その依頼を明日受けて黒い森に行くと決まった。


「黒い森の月向草がある辺りで、何か危険なことは起きることはありますか?」


《ピンポンパンポーン》


「中央部にいる赤駆竜と遭遇する可能性があります」

「ええっ、赤駆竜はB級だぞ。もし出会ったらどうしたらいいのか?」


《ピンポンパンポーン》


「赤駆竜は嗅覚によって獲物を認識するので、臭い粉をぶつけるといいでしょう」

「おおー、そんな手が。臭い粉なら道具屋で売っているから、用心のために買っておこう」

「そうしてくださいな」


だいたい予報を聞くのが終わったと感じたのか、女魔法使いが口をはさんでくる。


「もし、漆黒イタチが3匹以上狩れたら、今度は毛皮の首巻ゲットできるかしら?」


《ピンポンパンポーン》


「毛皮の首巻はゲットできないでしょう」

「あら、残念」


ネルシャのバッグと同じ様に・・・と思ったのかな。

さすがにそんな都合の良い話は続いて起きないらしい。


「そうそう。リーダーさん。もうひとつ予報で聞いておいてほしいんだが」


錬金術士さんがいう。


「なんでしょう」

「月向草は、どのくらい採取できるのか、を聞いて欲しい」

「あ、確かにそうですね。成功するって言って昨日言っていたけど、どのくらい採取できるかは聞いていなかったですね」

「そうそう」

「それでは、今回の黒い森の冒険で、月向草は何束くらい採取できるでしょう」


《ピンポンパンポーン》


「30束くらいは採取できるでしょう」

「そんなにか。ありがたい」


えっと、10束で金貨5枚でしょ。追加10束で金貨3枚だから、20束で金貨6枚。合計で金貨11枚。予報どおりなら、すごいね。


「もし、全部うまく行ったら、明日の夜、祝杯をあげよう」


それって、取らぬ羊の皮算用だと思うけどなぁ。


こうして、この夜の予報の依頼は終わった。


この日はまた錬金術士さんにおごってくれた。

マスターの新作だという「肉じゃが」を食べた。

ほくほくしたじゃがいもが伝説の調味料を吸って美味かったぁ~。


バリバリ予報しています。レンガ屋と予報屋のダブルワーク。うまくいっているね。



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