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第32話 新鮮な情報があれば儲けることは簡単なんです

「親分さん。すごい情報をキャッチしたんです」

「お前のすごいは当てにならないからな」


ここは商業地区にある情報屋の一室。

強面の男が大きな机に座っている。


そこにやってきたのは、小柄な男。

みすぼらしい恰好をしている。

昨日、黒猫亭にいたひとりだ。


「今度のは本当にすごいんです。街の有力者に関する情報ですよ」

「どんな情報か知らないけど、前みたいに大銅貨1枚ってならないことを望むぞ」

「大丈夫ですって。今回は絶対、銀貨1枚の価値はある情報ですよ」


強面の親分は、信じていないような顔で話を聞いている。

どんな小さな情報でも、しっかり聞くのが強面親分の信念だ。


小柄男が話しているのは、黒猫亭で盗み聴きをした内容だ。


「だから、錬金術士がC級冒険者を使って薬草探しをするらしいですよ」

「それがどうした。そんなことはどうでもいいだろう」

「えっ、そ、そうなんですか?」

「誰が誰を使って素材集めをしたところで、俺にいいことがあるのか?」

「えっと・・・だけど、すごい話でしょう」


強面親分は、もうあきれてしまっていた。

やっぱり、こいつは使えないと。


しかし、情報屋はいかに新鮮な情報をゲットできるか。

それが情報屋を続けていけるかどうかの分け目になる。


街のあちこちにいる情報を集める奴らは、ある意味、宝でもある。

そういう意味で、大した意味がある情報ではないけど、こうやって情報を持ってきてくれる男を大切にはしないといけない。


「やっぱり、今回も大銅貨1枚の情報だな」

「ええーーっ、あ、待ってください」

「なんだ」

「そういえば、メリッシュ商会って言ってました」

「は?メリッシュ商会がどうした」


小柄男はあせっていた。

大銅貨1枚で終わってしまうとこだった。


だけど、メリッシュ商会の名前を出したら、親分の表情が変わったのだ。

ちょっとは興味を持ってもらえた。


「えっと、たしか、メリッシュ商会が邪魔するとかなんとか」

「はぁ?メリッシュ商会がなんで薬草採取を邪魔するんだよ。意味がないだろう」

「えっと、なんだっけなぁ~」

「メリッシュ商会というのはファッション系の大手商会だ。それも今、ブイブイ言わせている絶好調な商会だ。そんなところが薬草採取の邪魔なんてしないだろう」


思い出せ・・・なぜ、メリッシュ商会って言葉が出てきたのか。


あ、思い出した。そうそう、薬草の買い占めだ。


「思い出しました。買い占めです。たしか、錬金術士が中級ポーションを作るために必要な薬草を手に入れようとしたら、メリッシュ商会が買い占めしていたんです」

「おい。それは本当か」

「思い出しました。ジーンです。会長のジーンが買い占めしているんです」


強面の親方が、じっと僕の顔をみている。

嘘かどうか、見極めようとしているみたいだ。

しかし、嘘をついている人の特徴的な表情の動きはない。

やっと思い出すことができてほっとしている人の顔だ。


「確かに、メリッシュ商会の会長はジーンという名前のはずだ。しかし、買い占めだと。中級ポーションの?」

「はい。間違いないです。そんな話をしていました」


どうしてメリッシュ商会なのかは良く分からない。

たしか、あそこはポーションの様な冒険者向けの商品は扱っていないはずだ。


しかし、中級ポーションの価格がじりじりと上がっているのは確かだ。

品薄になっていて、高い値段でも売れていると情報が入っている。


それが起きている原因が、メリッシュ商会の薬草の独占にあるとしたら。

これは、面白いことになるかもしれない。


「よくやった!どういうことにつながるか分からないが、素晴らしい情報だ」

「えっ、本当ですか。じゃあ、銀貨1枚になりますか?」

「いや、この情報は銀貨1枚どころじゃない。金貨1枚の価値がある」

「本当ですかっ。金貨1枚。もらえるんですか」

「よし、金貨を情報代金として出そう。ただし、もっと詳しい情報を集めるんだ」

「任せてください」


強面親方は、今、手に入れた新鮮な情報をどう活用しようか、頭を巡らしていた。


メリッシュ商会の味方をするのか、敵に回るのか。

それとも、無関係を装って、漁夫の利を狙うのか。


まだ計画は立たないけど、面白そうな情報がころからりこんできたと、喜んでいたのだった。

情報屋の強面親分が再登場。やっぱり、こいつは敵なのか。


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