第31話 未来を知ると運命が変わるって知っていた?
書き溜めがなくなってきたので、今日から1日1話投稿になります。
よろしくです。
「それでは、銀貨1枚ですね」
錬金術士は銀貨を出してテーブルに置く。
「ありがとうございます」
「それでは質問を行くぞ」
「はい」
錬金術士はふぅと深呼吸をすると、質問を始めた。
「月向草はこの街の近くだと、どのあたりにありますか?」
《ピンポンパンポーン》
「月向草は街に近いところでは黒い森の南部、周辺部から徒歩20分ほどのところにあります」
「あれ、その質問って予報できるの?」
あ、冒険者の皆さんは、予報がランクアップしたの知らないんだっけ。
「できる様になりました。『どこ』や『いつ』、『どれ』なども予報できそうです」
「そんなことより、月向草のことだ。やばいじゃないか。黒い森ってなんだよ」
「あ、そうだった。あそこは魔物の森じゃないか」
普段なら魔物がそんなに多くない場所で月向草は採取できる。
だから、それほどランクの高い依頼にはならない。
だけど、黒の森にしかないとなると、高ランクの冒険者じゃないと危険だ。
「あなた達はC級冒険パーティですよね。黒の森の20分くらい入ったところでの採取というのはできるものなんですか?」
「黒の森となると危険が多いですね。ただの薬草採取では行きたくないですね」
「そうそう。どうせなら、魔物を討伐する方が割りがいいですから」
冒険者としては依頼の報酬が多い方を優先する。
それは当然だろう。
「だけどさ。月向草がないと中級ポーションが作れなくて、討伐のときに中級ポーション無しに戦うことになるぞ」
「それも嫌だな」
錬金術士さんは、だいたい黒い森の危険性を把握しているみたいで、やはりという顔をしている。
「これは冒険者ギルドも含めて、特別な依頼を立てないとダメですね」
本来、中級ポーションの納入価格は決まっている。だけど、素材を入手するのに高額な報奨金が必要となると、通常の納入価格では赤字になってしまうのだ。
「さて、ここは予報を使いましょう。錬金術ギルドと冒険者ギルド。あと、薬師ギルドと防衛隊の人達も含めて、月向草の入手をできる形を私が提案する形で進めようと思います。うまくいきますか?」
《ピンポンパンポーン》
「うまくいかないでしょう」
え、ダメなの?
なんでだろう。
「はて。それはなぜですか?」
《ピンポンパンポーン》
「邪魔をする人が出てくるでしょう」
「やっぱり。月向草がやたらと無いのが不自然だと思っていました。誰か月向草を独り占めしている人がいるってことですか?」
《ピンポンパンポーン》
「そのとおりでしょう」
なんと。そんなことをしている人がいるってことは・・・なんか良くない相手がいそうだな。
「それはズバリ誰ですか?」
《ピンポンパンポーン》
「メリッシュ商会の会長のジーンです」
「「「メリッシュ商会!」」」
最近、王都からこの街に進出していた新しい商会だ。
街の3箇所にいきなり新店を立ち上げて話題になっている。
ご婦人方には王都の最先端ファッションが手に入ると評判がいい。
逆に男にとっては、余計な出費が増えると評判が悪い。
そんな商会がメリッシュ商会で、そのリーダーである会長がジーンなのだ。
「全くファッションとか疎いので初めて聞きました」
街の商業地区ですら、ちょっと前に初めて行ったくらいのジュートにとって、まったく異世界の情報でしかない。
「あの商会が絡んでいるとなると、あまり話をあちこちにすると邪魔される可能性が高いな」
「しかし、なんでメリッシュ商会が月向草を独り占めなんてするんでしょうか」
「もしかして、メリッシュ商会としては、討伐がうまくいかない方がいいのかもしれませんね」
「なにか、陰謀の様な臭いがするな」
錬金術士さんは、街の商会の専門分野や力関係、裏世界とのつながりについて情報があるみたいだ。
冒険者の面々も僕も、錬金術士の次の質問を待っていた。
「それでは、ごく一部の関係者だけで月向草の採取を実践する形で私が取り仕切って進めていくのはうまくいきますか?」
《ピンポンパンポーン》
「裏切り者が出てうまくいかないでしょう」
「うわっ、そう来る?」
「やっぱり大きな商会の絡みだとややこしいことになるんだな」
僕の理解できる範囲を超えてしまっている。
どうしたらいいのだろうか。
「それでは極秘で進めてくいしかないようですね。ここにいる5人だけで月向草の採取を実践するのはうまくいきますか?」
《ピンポンパンポーン》
「うまくいくでしょう」
「ちょっと待ってくれ。この5人って。あと2人メンバーがいるんだけど、そいつらにも言ってはいけないんかい」
「うーん。どうだろう。知る人が増えると失敗の確率が上がりそうだ。予報に頼るって手もあるだろうけど、ここはそれよりも、情報を極秘にすることで失敗を避けたい」
なんか、錬金術士さん、楽しそうな顔になってきた。
ちょうど、ガラスレンガを見せる直前の様な・・・。
「とにかく、この話は5人だけの秘密にしてほしい。それと、報酬に関してはお互いの納得する額を出すので、月向草の黒い森での採取をギルドを通さずに依頼したい。受けてくれるか?」
「うーん。ちょっと予報を聞いていいですか?」
「それもそうだな。どうぞ」
「それでは、予報屋さん、聞きたいことがあるんですが」
「ダメです」
「えっ?」
「銀貨1枚です」
あっ、という顔をしたけど、素直に銀貨1枚出してきた、
「それじゃ改めて。黒い森での月向草の採取は、細かい話を予報できくことを前提にして、危険がなくうまく採取できますか?」
《ピンポンパンポーン》
「魔物に襲われることはありますが撃退できて、採取もうまくいくでしょう」
「よかった。正式には、他のメンバーも含めて検討が必要なので明日になりますが、内定ということでよろしいですか」
「はい。それでは、予報を使いながら報酬も決めていきましょう」
「そうしてください」
そんな感じで盛り上がっている5人だった。
しかし、予報は万全ではないということを見落としていた。
そのやり取りをこっそりと聞いていた客がいたのだ。
そこまで見通す精度は今のジュートの予報スキルにはなかった。
なんかヤバそうな終わり方だなぁ。
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