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第29話 ネルシャのバッグって高いんですか

「いらっしゃいませ」

 

マスターが新しいお客さんに声を掛ける。

今度はC級冒険者パーティの面々だ。

全部ではなく3人だけ。


リーダーのマセットと女魔法使いのセシル。

もうひとりは槍使いだけど、名前は忘れた。



「あ、予報屋さん。今日もいたんですか」

「今日は、この先生のお供で来ています」

「じゃあ、予報屋さんはお休みですね」

「そうでもなくて、今までやってました」


そんな話をしていたら、やたらとセシルが手に持った物をアピールしてくる。


「えっと、セシルさん・・・新しいバックですね」

「そうなのよ。見てみて、すごいでしょう」


たしかに前回もっていたハンドバックは、布製でそんなに良い物には見えなかった。

だけど、今日のは赤く染められた革製で、ぴかぴかで新品ぽい。


「ネルシャ工房のバッグよ。すごいでしょう」

「えっと、有名なバックなんですね」


全然知らない。だけど、あんなに喜んでいるところを見ると高いのだろう。


「おいおい。そんなに見せびらかすなって。うれしいのは分かるけど」


そんなに高いバックなんて買って大丈夫なの?

冒険者って装備に金がかかるんだよね。


「すっごく割安で手に入ったのよ。びっくりするくらい」

「それも、予報屋さんのおかげだな」

「そうそう。お礼が言いたくてきちゃった。いないかも、って思ったけど」


となると、岩トカゲの予報が当たったんだ。

よかった。


「だけど、残念ながら予報は外れたよ」

「ええっ!?外れでしたか」


今日、依頼を受領して岩トカゲ狩りに行ってきたらしい。


岩トカゲを探したら、すごく時間がかかった。

だけど、大きな群れに出会って、戦いが始まった。

目標は予報の9匹、最低でも依頼の4匹。


岩トカゲは大きな身体のわりにすばしっこくて、その上、鋭い歯を持つ。

身体は岩の様に固い革に覆われていて、ダメージを受けづらい。


「とにかく、時間がかかる闘いだった。一匹倒すのに30分かかったりしたんだ」


ダメージを受けづらいから、攻撃で少しづつ体力を削っていくしかない。

当然、こちらもやられるから、僧侶のヒールとポーションで治癒しながらの闘いだ。


「結局、倒せたのが7匹。予報より2匹少なかった」

「そうよ。もっと頑張ってくれたら良かったのに」

「おいおい、無茶いうなよ」


9匹の予報に対して7匹か。

「依頼は成功する」って予報は4匹で依頼達成だから、そこは当りだね。


「だから、予報は半分だけ当たったってこと」

「それは、ちょっと、すみません」

「何を言ってるのよ、7匹だって十分。ありがとう」


赤いバッグを大切そうに抱えたセリル。

よっぽど欲しかったのだろう。


「じゃあ、そのバッグは依頼の報酬で買ったの?」

「そうじゃないのよ。報酬程度じゃ、とても買えるような値段じゃないのよ」


話を聞くと、岩トカゲは依頼者に依頼数の4匹を渡したらしい。


残り3匹をどうしようか迷ったけど、ギルドに引き取りしてもらわなかったらしい。


「実はね。前から、このバック欲しかったんだ」


このバックを売っているのは、ネルシャ工房の販売店。

そして、このバックの素材が岩トカゲの革なのだ。

だから、ネルシャ工房も岩トカゲの革は欲しいかもしれないと思って、3匹分を持って行った。


すると話を聞いてくれた工房主さんが言った。


「これは、岩トカゲ。それも品質のいい革ですね」


実は、残した3匹のうち一匹は、たまたまリーダーの会心の一撃が当たった個体。

革が綺麗で、きっと良い値が付くんじゃないかと期待していた。


工房主と買取交渉をマセットがしていると、セシルがチラチラと工房にかかっているバックを見ている。

そのこに気づいた工房主にこんなことを言った。


「どうでしょう。買取にあのバッグを付けるというのは、もちろん、金貨で3枚は別に出しますよ」


さすがに高級バッグを作っている工房主さんだ。

セシルがあるバッグが気に入っているのを気づいたらしい。


「えっ、このバッグを付けてくれるんですか?だって、そんな値段じゃないですよね、あれ」

「ええ、正規価格は金貨10枚です」

「ですよね。どうして?」

「実はこれ。失敗品なんです」


工房主は、バッグを手に取り、バッグの下の部分をみせる。


「ほら、ここの模様がずれていますよね」

「えっ、そうですか?」


言われても、よく分からない。

指でさしてもらって、初めて分かる。


「正式には売ることはできません。そのことは、バッグの裏に印が押されているから分かります」


見せてくれたのは、バッグのブランドプレートの真裏。

そこに、Bの印が入っている。


「B級品だから、売りに行っても売れません。自分で使うことが条件ならお付けしますよ」


欲しい!

絶対欲しい!!


みんなに交渉して、今回の報酬と買取金の分配をすべて放棄するから、バッグだけ欲しい。


「よし、オッケーだ」


リーダーのマセットが判断して、バッグと金貨3枚で決定した。


「そんな感じで手に入れたのが、このバッグなの」

「よかったですね」

「それも、予報のおかげね。ありがとう」


《バッグ入手で感謝ポイント3を獲得しました。次のランクアップまで917感謝ポイントです》


えっ、そんなんでも感謝ポイントが入るんだ。あんまり多くないけど。

だいたい、依頼が当たったけど感謝ポイントは入らないのか。


「いえいえ。どういたしまして」


そんな話をしていたら、錬金術士さんが割り込んできた。


バッグ入手で3感謝ポイントでした。


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