表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/112

第26話 予報を使うのはいいことなのか違うのか

遅くなってすいません。今日の2話目です。

「いらっしゃい。あれ?今日は火曜日ですよ」

「ええ。この方に誘われてきました」

「いらっしゃいませ」

「はじめまして。この店の店長さんですか?」

「ええ。マスターです」


錬金術士さん、じっくりとマスターの目を見ている。

マスターもしっかり見返している。


「この人の料理ならうまそうだ」


そんなの目を見ただけで分かるの?


「魔法関係の方ですか?」

「ええ。錬金術士です」

「ああ。魔法研究者かと思いました」

「まぁ、似たようなものです」


マスターはだいたい目を見ると何をしている人が分かるのかな。


「それでは、ちょっと失礼かも、と思うのですが。こんな物を持ってきました」


錬金術士さんが懐から小瓶に入った黒い液体を出す。


「これは何ですか?」

「わかりませんか?」


挑戦的な目でマスターを見ている。


「味、確かめていいですか?」

「もちろん」

「!」

「わかったみたいですね」

「もしかして、これは・・・伝説の調味料ですか」

「その通り!」

「ショウユウ、ですね」


なんか、小瓶の調味料でふたりは盛り上がっている。


「だけど、このショウユウの原産国の東海島国はいけなくなったんですよね」

「ええ。原産国とは交易がストップしています。東海の魔物のせいで」

「じゃあ、これはどうしたんですか」

「こんな噂を聞いたことないですか?伝説の調味料を錬金した者がいるって」

「そんなの噂でしょう・・・本当だったんですか!」

「その証拠がこれですよ。私は錬金レシピを教わっただけですが」


マスターは感動して声が出ない。


「この伝説の調味料に合う料理は作れますか?」

「わかりました!あれを用意しましょう」

「なに?伝説の調味料に合うあれ、ってことですか」

「あれです。ただし、30分待ってください。素材を用意します」

「もちろん、待ちますよ。その間エールを飲んでいていいですか」

「あ、ミリーちゃん。おふたりにエールを」


そういうと、マスターは買い物かごを持って跳びだして行った。


「これ、すごいものなんですね」

「ええ。ある種の料理人にはたまらない調味料ですよ」


伝説の調味料の小瓶を見ていてると、ミリーちゃんがエールをふたつ持ってくる。


「ありがとう。料理は後ですね」

「ええ。マスターが帰るまでお待ちくださいね」


錬金術士さんとエールで乾杯する。


「あ、忘れてました。レンガ屋さんに、あちらのお客さんがお話があると言うんですが」

「えっ、僕?」


ミリーちゃんが手で示したテーブルには、3人の男が座っている。

年の頃は20代前半くらいか。

目が合うと、その中のひとりが会釈する。

僕も会釈を返す。


「なんの用かな、ミリーちゃん」

「それはご本人からお願いします」


ミリーちゃんが3人の男に手を上げると、そのうちのふたりの男がこっちのテーブルに来る。


「初めまして。冒険者の剣士をしている者です」

「初めまして。レンガ屋をしている者です」

「レンガ屋?」


なんか、とまどっている。

ミリーちゃんを見て、人違いじゃないのかって合図をしている。

ミリーちゃんは、人違いなんかじゃないって合図を返している。


「えっと、予報屋さんではないんですか?」

「あ、すいません。予報屋もしています」


あ、ほっとした表情になった。

予報をしてほしいんだな、って分かった。


「えっと。基本的に冒険者向けの予報は銀貨1枚なんですが」

「ええ。聞いています。知り合いの冒険者がここで予報を聞いてうまくいっていると知りまして」

「あ、じゃあ。知り合いって、マセットさんのところのメンバーですね」

「ええ。僕らにも予報をしてほしいと思いまして」

「えっと。どうしよう」


悩んでしまった。

予報屋はマセットさんたちのためにはじめたもので、他の人に予報をするなんて考えていなかった。


「お願いします。僕らにも予報してください。このままじゃまずいんです」

「どうしたんです?」


話を聞くと、彼らはD級冒険者パーティだけど、依頼を続けて2回失敗してしまったとのこと。

もう一度失敗するとE級に降格になるという。

この街の冒険者ギルドはランク管理に厳密らしい。


「それで予報を、となったんですね」

「そうなんです」

「やっぱり、よした方がいいんじゃないか?」


ふたりの男のうち、ひとりと話していたら、もうひとりの男が話に割り込んできた。


「なにを言うんだ。いまさら」

「だって、リーダー。銀貨1枚だろ。それだけあったら初級ポーションが買えるじゃないか」

「だから言ったろ。銀貨を出すのは俺だ。俺の金の使い方に文句つけるなよ」

「それだって、そんな予報みたいなあやふやなものを頼るなんて・・・」


あれ?パーティの中で意見が違っているのか。


「あの~、リーダーさん。パーティの人が反対しているなら、よした方がいいんじゃないですか?」

「そんなことはない。ちゃんと意見は一致しているよ」


どうみても納得していない顔。

ひとの金だから、仕方ないって顔になっている。


「とにかく。この銀貨1枚を捧げますので、予報をお願いします」


捧げるって、それ教会のお布施みたいな感覚だなぁ。

そういうのと違うんだけど。


「えっと。もし、どんな予報が出ても、お金はお返ししませんよ」

「もちろんです。まずは銀貨をお納めください」


そこまで言われてしまうと断るのも悪い気がする。

だけど、同行者の意見も聞かないと、だね。

だいたい、ここの支払い主でもあるし。


「すいません。ちょっと席を外していいですか?」

「もちろんだよ。マスターが帰ってくる30分後くらいには終わるかな」

「そのくらいあれば大丈夫だと思います」

「ところで、予報屋って何?」

「それは、また後で説明しますね」


どうみても好奇心旺盛な錬金術士に予報屋の話をしたら、長引きそうだ。

その話は、マスターが帰ってきて料理が出てからにしよう。


3人の冒険者達の席に予報屋として僕が移った。


この席でランクアップした『予報』スキルの実力が明らかになったのだった。


ショウユウとランクアップ効果、どっちが気になりますか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ