第25話 新しいレンガ積みのテクニックが開発されたのか
体操ではありません。レンガ積みです。
「ガラスレンガは全部で210個ある。これを縦に14段、横に15個積んで欲しい」
「はい。レンガ積みなので、縦は半分サイズで凸ったり、凹んだりしますけど、いいですか」
「そうそう。その形で積んで欲しい」
「わかりました。それで、色なんですが」
「分かっているって。1段目を言うぞ」
「えっ」
「白、白、赤、白、白、黄、白、緑、白、黄、白、白、赤、白、白、だ」
「えっと、白、白、赤・・・なんでしたっけ?」
記憶力あんまり自信がないんだよな。
いつもは、同じレンガを積んでいるだけだし。
「白、白、赤、白、白、黄、白、緑、白、黄、白、白、赤、白、白、だ」
「えっと、紙に書いてくれませんか?」
錬金術士は、大きく手を広げて顔を横に振る。
「違う!いいか、レンガ積みはテンポなんだ。紙を見るなんてテンポが崩れるじゃないか」
「でも、覚えられそうもないんです」
「よし、まずは一段15個分の色を覚える特訓だ」
「ええーっ」
どうも、この特訓。
最初から考えていた様だ。
「頭で覚えようとするな!身体全体を使うんだ」
「はい!」
「まずは、アクションを覚えろ」
「はい!」
「白は両手を下げる。この形が白だ。やってみろ」
「はい、こうですか」
「よし、いいぞ。手を下げた瞬間に『白』と声に出す」
「はい」
「もう一度、アクション付きで『白』!」
「白!」
こんな覚え方あるんだ。初めて知った。
さすが錬金術士さん、頭いいんだね。
「よーし、次は赤だ。右手を頭の先くらいまで上げる、こうだ。そして声に出す。『赤』」
「赤!」
「こんどは、アクション付きで、3つ行くぞ」
「はい」
「白、白、赤だ」
「白、白、赤」
「いいぞ、できるじゃないか」
「はい」
「続けて、3つ、白、白、黄」
「白、白、黄」
「そうだ、その通り。黄色は左手が頭の先で正しい。説明しなくても分かるな」
「はい。分かります」
なんとかできるみたいだ。
「今度は15、3つづつくいくぞ。準備はいいか」
「はい。大丈夫です」
「白、白、赤」「白、白、赤」
「白、白、黄」「白、白、黄」
「白、緑、白」「白、緑、白」
「黄、白、白」「黄、白、白」
「赤、白、白」「赤、白、白」
ふう。
「よーし、これで15個だ。覚えたか?」
「えーと、どうでしょう?」
「続けてやるぞ」
「はい」
錬金術士さん、深呼吸している。
僕も真似して深呼吸。
くるぞっ。
「白、白、赤。白、白、黄。白、緑、白。黄、白、白。赤、白、白」
「白、白、赤。白、白、黄。白、緑、白。黄、白、白。赤、白、白」
「できたじゃないか」
「できました」
不思議だな。
身体を動かして、声に出すと覚えることができる。
同じ感じで、2段目もチャレンジしたら、3つづつを5回やって、その後15で、できてしまった。
「さすがに、頭より身体の方が記憶力いいな」
「それって・・・」
「気にするな。身体記憶ができるのも才能だ」
「そうなんですか?」
「次は、まず1段目を3つづつ15からの15連続。そして、イメージで15のレンガ積みだ」
「イメージレンガ積み?」
「こうやって、色を声に出してレンガを積む形をする」
実際にレンガは持たないけど、持ったつもりでレンガを積むふりをする。
そんなやり方らしい。
錬金術士さんが実際にやってみせてくれた。
僕も1段目は覚えていたので、やってみた。
「白。。白。。赤。。白。。白。。黄。。白。。緑。。白。。黄。。白。。白。。赤。。白。。白」
「素晴らしい。正解だ。それも、すごくテンポがいい。レンガを取る前の身体の動かしがシュールだ」
「シュールって。。。やれって言ったのは・・・」
「気にするな。それも才能だ」
うーん。才能でごまかされている感じがするぞ。
「よし準備は整った。色のレンガ積みに入る前に私がアクションで15のレンガの色を伝達するから、テンポよく行こう」
まずは普通にレンガを積む。しばらくすると、色エリアは入る。
「白、白、赤」
錬金術士がアクション付きで教えてくれる。
もちろん、アクション、声出しで応える。
3つを5セット。その後15を連続で。
これをやった後、ガラスレンガを積むと自然と次が何色か分かる。
ガラスレンガだから、取り扱い注意だけど、元々普通のレンガでも丁寧に扱っているから問題ないし。
特訓したり、途中に余計なアクションが入ったりしたから、出来上がるのがちょっと遅くなるかなと思ったら、いつもより早く出来上がってしまった。
どうも、錬金術士さんが色をアクションで教えてくれるテンポをちょっとづつ上げていたみたい。
最後の方はいつもより早いテンポで積んだらしい。
「できたな」
「できましたね」
アトリエの吹き抜けの二階部分のレンガ積みができあがった。
210個のガラスレンガと290個の普通のレンガ。
合計500個積み上げた。
不思議な色の組み合わせで、心地よい陽の光が入ってくる。
たしかに瞑想するにはいい感じがする。
「最高の出来だ」
「ありがとうござます」
「こちらこそ、ありがとう」
一緒に素晴らしいアトリエの壁を作り上げた。
そんな気持ちがして、とっても嬉しかった。
「よし。できあがった祝杯をあげよう」
「えっ、いいんですか?」
「ただ、あまり酒を飲む店を知らないんだ。どこか知らないか?」
「安酒場なら、いきつけのとこがあるんですが」
「そこにしよう。今日は、おごりだ」
「ありがとうございます」
昨日はお姫様の父上の村長さんがおごってくれた。
今日は錬金術士さん。
最近、お金払わないで酒飲んでいるなぁ。
「よし、片づけが終わったらいくぞ」
「あ、待ってください。すぐ片づけしますので」
道具を洗って、片づけて。
よし、飲みに行くぞぉ~。
こうして繰り出した黒猫亭。
そこには、また別の人が予報屋のレンガ屋を待っていたのだった。
『男女/太郎』のテンポで色の部分を読んでくださいね。
続きがどうなるのか気になる方は、
よかったら、ブクマや評価、コメントをしてくれるとうれしいです。




