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第22話 無気力の原因って人との関わりがほとんどなんだ

「いらっしゃい」


黒猫亭の扉をくぐると、マスターがいつも通りに大きな声で迎えてくれる。

ミリーちゃんはもう故郷の村から帰ってきていて、店を手伝っている。


マスターの声を聞くとなんか心が温かくなる。

ほっとする時間がそこにあるから。


しかし、今日はマスターが続けて言葉を投げてきた。


「レンガ屋さんのこと、女性がお待ちだよ」

「えっ」


マスターが手で示した方に、白い服を着た若い女性がひとり。

薄ピンクの髪に蒼い瞳。透き通るような白い肌。

たったひとつ、キラキラ光る石のペンダントをしている。

一緒にテーブルに座っているのは男性でスーツ姿だ。


「お、お姫様!」

「昨日は本当に助かりました」


綺麗な女性に接することがまずない僕にとって、光り輝いてみえて近づけない。


「あ・・・・・」


とまどいが強くなって、つい無意識にUターンして帰ろうとする。


「なにやっているのよ、レンガ屋さん!帰っちゃダメ」


料理を運んでいたミリーちゃんに怒られてしまう。

本当だ、何をしているんだろう。


「あ、すいません。つい・・・こんばんわ」


やっと、それだけ言うとお姫様がにっこりと笑ってくれた。

綺麗な瞳に見つめられる。


だめだ。耐えられない。やっぱりUターンしたくなる・・・いやダメだ。我慢、我慢だ。


「ミリーちゃんに聞きました。レンガ屋さんが私を助けてくれたと」

「カニ仙人さんには口止めされていたけど、レンガ屋さんには口止めされていなかったら、しゃべっちゃった」


いたずらっこみたいな目をしたミリーちゃん。

嬉しそうな笑っている。


「こんな汚いとこにすみません」

「汚いとこで悪かったな」


マスターがこれまた笑った顔で言う。


「あわわ」


何をいっているのか、僕。

もう全く頭が回らないでぼーっとしている。

美しい女性は、目の前の男の思考力を奪うものだと、この時、初めて意識した。


「娘とふたりでお礼を言いにきました」

「昨日は娘を助けていただきまして、本当にありがとうございました」

「ありがとうこざいました」


《ピンポーン》


えっ、なんで?

なんで、ここで予報?


《予報スキルDランクになりました》


うわ、今、ランクアップなの?

やっぱりEランクだったのね。


《予報精度がアップしました》


わ、予報精度って上がるんだ。

もっと、当たるようになりそうだな。


《感謝ポイント報告がプラスされました》


なんだ、それ?

だいたい感謝ポイントって何かな。


《今回のお姫様救助ミッションで320感謝ポイント獲得しました》


あ、もしかして、お姫様たちがお礼を言ってくれたから、感謝ポイントが入ったってこと?

感謝ポイントなんてのがあったんだ。いままで出てこなかったから分からなかった。


《次のランクアップまで920感謝ポイントです》


えっ、920って、それは多いのかな。少ないのかな。

要は、今回のお姫様救助くらいのを3回すればランクアップ?

なんか、無理な気がする。


《新しいサブスキル、夢予報を習得しました》


えっ、なに、それ?

夢予報だよね・・・


「どうかしましたか?」


頭の中でいきなりアナウンスが連続して流れたから、いきなり動きが止まってしまった。

そんな僕をみて、お姫様が声をかけてくれる。


「あ、いや。予報がランクアップしまして」

「それは、よかったですわ。素晴らしいスキルです、予報スキルって」

「素晴らしいスキルって、外れスキルですよ、予報スキルは」

「そんなことありません。あなたの予報がなかったら、私はここにいませんから。本当にありがとうございました」


すっごく感謝しているのが伝わったきた。

320感謝ポイントだったっけ。

きっと、すごい感謝の心、なんだろうなぁ。


実際にお姫様の目をみれば分かる。

心から感謝していることがね。


「私がやったことは大してありません。ほとんどが賢・・・じゃなかった、カニ仙人さんがやってくれたことです」

「でも、カニ仙人さんを見つけて連れてきてくれたのがジュートさんですよね」

「あ、はい」


美人さんに名前を呼ばれたら、ぞくっとした。

きっと、いろいろとミリーちゃんに聞いているのだろう。


「今日はお礼ですので、マスターにいろいろと作ってもらいました」


メニューにすら載っていないような豪華な肉料理が出てきた。

もちろん、肉料理だけでなく数々の料理がテーブル一杯に並ぶ。


貧乏な僕らは、肉料理なんてほとんど食べたことがない。

野菜の煮物とかシチューとか安くて量のあるものばかり頼んでいる。

こんな豪華な料理、見たことがない。


「うわっ、すごいわ。マスター、こんな料理もできたんですね」

「おいおい。俺はちゃんとした料理人だって知らなかったのか?」


ミリーちゃんが突っ込みを入れる。

僕も同じことを感じていたが、先に言われた。


この日は初めて本格的な肉料理を食べた日になった。

それも、横に最高に美しいお姫様がいて、僕にお酒をついでくれる。

お酒もいつもの薄いエールじゃなくて、いい香りがするワインだ。


僕にとって初めての贅沢な食事。


残念ながら、おいしいと感じるだけの余裕はぜんぜんなかった。


ランクアップしました。まだランクDだから進化には遠いですね。


予報スキルがどう変わるのか・・・続きが気になるって方は、

ブクマや評価、コメントをよろしくお願いします。


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