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第20話 ひとの心には怖いものが隠れているんだよ

「村長!開けてください!ミリーちゃんがお姫様を助けることができる方々を連れてきてくれました」

「本当かっ」


ガタガタと扉のカンヌキが外れる音がして、扉が開く。

中から、50代くらいの上品なおじさんが出てくる。

きっと村長さんだろう。


「えっ?」


僕らを見て村長さん、固まってしまった。

魔道士とか、怪しげな連中はいくらでもいるが、カニな人達の怪しさはそんなものじゃないのだろう。


「こちらはカニ仙人とお付きの者です。おふたりはお姫様を助ける秘術を知っているんです」

「ほ、本当か!」


怪しさより、娘を助けたい一心が勝った様で何も言わずに奥の部屋に通してくれた。


青い顔をした女性がベッドに寝ている。お姫様だ。

メイドが2人、様子を見ている。


カニ仙人はお姫様の頬を軽く触れて告げた。


「思った通りじゃ、ころり病じゃな」

「やはり、そうですか」


村長もころり病だと分かっているようだ。


「それで、治せるんですか」

「カニ仙人に不可能はないのじゃ!」

「心強い言葉、ありがとうございます」


これからの治療は周りに人がいるとやりづらいので人払いをしてもらう。

村長さんだけ残ってもらう。


「おい、そこのちょっと美しい女!」


お姫様に向かって話しかける。

お姫様がすこし反応する。


「そこの。15人のうち2番目くらいに可愛い女」


なんだ、その微妙な順位は。


お姫様の目がカッと空いた。

でも、瞳が燃える様に赤く、その周りはどす黒い。


「私はこの国で一番美しいのだ」


お姫様が上半身を起こし、顔をカニ仙人に向けて叫ぶ。


「はて。この国一番とな。そんなことはないだろう」

「私は一番、美しいのだ」


お姫様には全く見えない。

怒りの表情でねじ曲がった顔で言い放つ。


「それではなぜ、一番美しいと言われている、そのお姫様に取り憑いているのだ?」

「一番美しいのは、この女じゃない。私だ!」


あ、取り憑いた精神生命体と話しているのか。

でも、どうやったら、そいつをお姫様から追い出せるのだ?


「さて、お前はその女をどうするつもりだ?」

「どうするもこうするもない。ただの宿り木だ」


宿り木と言っても、この場合は宿っている方の人間の精神を吸い取って死なせてしまう。


「お前がいるところは、そこじゃない。元の所へ帰れ!」

「元の所などない。ここが私の居る場所だ」


やばい。なんか、黒いもやみたいなのが集まってきた。

成仏できない霊か何かだろう。


「こいつは我々の敵だ。取り殺してしまえ」


怒りの表情のお姫様は集まってきた霊に指令を与える。

カニ仙人の周りを黒いもやがぐるぐる廻りだす。


「帰るべき場所を忘れてしまったみたいだな。教えてやろう」

「なんだと」

「お前は、ベネックス=セレスティーヌだ」


その一言で、お姫様が苦しみだす。

喉をかきむしって、のけぞっていく。


「よし。うまくいった。後、もう一発だな」


喉をかきむしっていたお姫様の動きが止まる。

お姫様の後頭部あたりから、どす黒い煙状の物が湧いてきて天井に向かって上がっていく。


「ベネックス=セレスティーヌ、本来の居場所に戻れ!」


黒い煙状の物が天井を突き抜けて飛んでいった。


パタンとお姫様が倒れる。

目は閉じている。


青い顔は変わらないが、それまでの苦しそうな表情が消えていて、安らかな寝顔になっている。


「これで、もう大丈夫だ」

「本当ですか。もう大丈夫なのですか」

「ああ。取り憑いていたものは元の所に戻ったからな」

「もしかして、ベネックス男爵の令嬢ですか?」

「ああ。間違いない」

「令嬢がうちの娘に呪いをかけたんですか?」

「呪いじゃない。もっとやっかいなものだ」


取り憑いていた精神生命体の話を詳しく話す。

それを取り除くには、精神生命体の真名が必要になる。


普通のころり病は、不特定多数の恨みの念が集まった精神生命体が取り憑く。

その精神生命体の真名は知ることは困難だ。


だけど、今回のケースは、ひとりの強い恨みの念が核になっているから、念を送り出している人の名が、その念を中心に成仏できない霊が集まった精神生命体の真名になる。


精神生命体は真名を知られて、真名で呼びかけられて指令が与えられると、拒否ができないのだ。


「令嬢さんはこんなことが起きていることを知りません。心の奥底にあったどす黒い心が念を生み出し、送ってきたのだ」


村長さんは、衰弱はしているけど、安らかな寝顔になった娘さんを見て安心している。


「ありがとうございました」

「その娘はじきに目を覚ますだろう」

「娘を助けてくれてありがとうございます。ぜひ、お礼をさせてください」

「必要ない」


カニ仙人は僕の手を取り、どこでもパウダーを舞わせた。

強く光って、ミリーちゃんの故郷村から瞬間移動して、賢者さんの家に戻ってきた。


お姫様は助かったようですね。だけど・・・


続きを読みたいと思ってくれたら、

ブクマと評価をしてくれるとうれしいです。


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