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第2話 C級冒険者は僕らのヒーローなんだ

「まだF級だった頃は、毎日の様来てましたから」


僕はこの店に来るようになって、まだ2年しか経っていない。

だから、彼に会うのは初めてだ。

2年前は彼が常連だったのだろう。


当時からこのお店に通っていた常連いて、冒険者に「立派になったな」と声を掛けている。


「それで、この街には里帰りかい?」

「それもあるけど、近くの洞窟で依頼があってさ」

「洞窟って、もしかして、あの魔の洞窟なのかい?」

「実は、そうなんですよ」


この街の近くにある洞窟で魔物が出ると言われている所。

なりたての冒険者には危険が多いから立ち入り禁止になっている。


だけど、C級冒険者なら大丈夫なのだろう。


「あそこにはどんな魔物がいるのか、ここにいる頃は気になっていたので明日行くのが楽しみです」

「大丈夫か?危険なんだろう?」

「一緒に冒険している仲間は実力者ぞろいだから大丈夫さ」

「そうだ!レンガ屋。危険はないか、占ってやれよ」

「えっ、占いですか」


占いじゃなくて、予報なんですが。


「彼らは洞窟に入って無事帰ってこれるのかい?」


《ピンポーン》


「ひとり、犠牲になるでしょう」

「ええーーっ」


うわっ、なんて予報だ。参ったな。


「おいおい、不吉な予報出すなよ」

「そんなこと言ったって」


こういう時、困ってしまうんだ。

まさか、やめましょうとも言えないし。


「もしかして。私達が考えていない危険があるってことですか?」


《ピンポーン》


「そのとおり。危険があってひとりが犠牲になるでしょう」

「なんと。どんな危険なんだ?魔物か?」


《ピンポーン》


「そのとおり。危険な魔物がいるでしょう」

「魔物か。もしかして、猛毒こうもりがいるっていうのは本当か?」


《ピンポーン》


「そのとおり。危険な猛毒こうもりがいるでしょう」

「やっぱり!噂は本当だったのか」


猛毒こうもりというのは魔物化した吸血こうもりで血を吸われると猛毒が身体に廻り1時間以内に解毒しないと死に至ると言われている魔物だ。


「この街の一番大きい道具屋で毒消しポーションはてに入るのか?」


《ピンポーン》


「手に入るでしょう」

「よし。明日、買ってから洞窟に入るとしよう。それだと大丈夫か?」


《ピンポーン》


「苦戦はするけど大丈夫でしょう」

「そうなのか。占い屋ありがとう。本当にいるかは別にして安心のために解毒ポーションは買ってからいくことにするよ」


さすがC級冒険者。

当たるかどうか分からない予報にもちゃんと対策をするんだ。

冒険者をして生き残っている人は違うな。


「彼にエールを一杯。お礼だ」

「ありがとう。いただきます」


たぶん年齢は同じくらいだろう。しかし、冒険者をしていろんな困難を乗り越えてきたのだろう。しっかりとした受け答えは僕よりずいぶんと大人に見える。


この居酒屋に集まる連中は僕と同じ肉体労働者がほとんどだ。時々まだ収入が少ないE級以下の冒険者が来たりする。

C級冒険者になるとひとり金貨1枚くらいの依頼をしていたりする。1日大銅貨5枚のレンガ積みと比べると1日で月収を稼ぐくらいの差がある。


「いつかは冒険者になって金を稼ぎまくるぞ」


そんなことを思っている常連連中も多い。だから、元ここの常連でC級冒険者になった彼はヒーローなのだ。

みんなに冒険談を聞かれて楽しそうに話す彼を見ていて、「僕はできそうもないな」と思ってしまった。


毎日レンガを積むのが僕には向いている。過大な夢を持つよりしっかりと生きていけるレンガ積みが僕には天職だと思う。


そんなことがあった翌日。


いつもの様にレンガ積みの現場に行くと監督官がいきなりこんなことを言い出した。


「今日はひとり病気で来れない奴がいる。お前らいつもより20%多くレンガを積むように!」


ええっー。500個ではなく600個?

そんなの無理だ。


まだ外れスキルだから、地味な話です。


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