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第18話 あなたがもしカニが好きだとしたら

最近、レンガ積みの話を書いていない・・・ちょっと書いてみました

「まず、これからは、一切、賢者と呼ぶのは禁止する」

「それではなんとお呼びしたらいいんですか?」


そんな宣言をした後、賢者さんは、衝立の後ろに入って、ごそごそやっている。

何をやっているのか、気になって仕方ない。


だけど、覗いたりしたら、絶対怒られるなと思うから、静かに待つしかないよね。


5分ほどして、やっと衝立の後ろから出てきた。


「これからは、私のことをカニ仙人と呼ぶように」


横幅が120センチはあろうかという大きなカニの甲羅を着込んだ賢者さん。

手にはカニ爪とカニ腕で作ったと思われる、カニ杖を持っている。


「なんですか、それは?」

「カニの魔物の甲羅で作った鎧と、カニ爪の杖だ」

「えっと、それはなんとなく分かるんですが・・・で、なんですか、それは?」

「どうだ?これを見たら、どう見ても賢者の変装だとは気づかないだろう?」


それはそうだ。

そんな恰好をした賢者がいるとは誰も思わないだろう。

どこからみても愚者にしかみえない。


「カニ仙人がお姫様のころり病を退治する。そんな話ならカッコ良くないか」


カッコだけなら当然、カッコ悪いです。


だいたいがさ、大丈夫なのだろうか。

ミリーちゃんのとこの村の村長さんがカニ仙人を見てどう思うのかな。


カニ仙人をお姫様に会わせてくれるのだろうか。


「とにかく早く、お姫様を助けてください」


ミリーちゃんはカニ仙人の姿でも気にしないらしい。

お姫様が助かるなら、どんな存在でも受け入れそうだ。


もしかして、僕の方は頭が固いということか。


「わかりました。カニ仙人さん。とにかく急ぎましょう」

「ちょっと待った。おぬしも変装するのだぞ」

「えっ、僕は大丈夫です」


べつに有名人って訳じゃないし、普通の恰好でいいよね。


「これだから自覚がない男は困る。おぬしがもっている予報スキルはとんでもない潜在能力を秘めたスキルなのだ。できるだけ目立たない方が好ましい」


えっ、そうなの?

外れスキルだと思ってきたけど、賢者さんの評価は違うらしい。


「現に今回のころり病だって、わしの知識とおぬしの予報スキルで対策がみつかったんだぞ」


たしかにそうか。

すると、今回の件に僕が絡んでいることは秘めていた方がいいのかもしれない。


「そこでだ。お前にも素晴らしい鎧を用意することにした」

「えっと、カニの鎧はできたら避けたいんですが・・・」

「なに!カニは嫌だと。ふざけるな。カニほど素晴らしい鎧材料はないのもだぞ」


そこから賢者さんのカニ甲羅の鎧としての有用性の話が始まってしまった。

賢者がカニ仙人になるために使った、大型の魔物カニの甲羅はそんなに簡単には手に入らないが普通種のカニの中にも、鎧材料になるカニがいるという。


「おぬしに用意したカニを持ってくるぞ」


庭に出たと思ったら、でっかいカゴを持って戻ってきた。


「おぬしのは、これだ」

「えっと、サワガニですか?」


かごの中には甲羅の幅が5センチ程度のカニがぎっしりと詰まっていた。

生きている訳ではなく、カニの形は残っているけど中は空っぽで干してあるみたいだ。


「サワガニではない。ワタリガニの一種じゃ。こいつは川を渡る特殊なカニでな、群れを作って川を渡る不思議な習性を持っている」


なんで、カニのことを勉強しないといけないのか不明だが、やたらと賢者さんはカニについて熱く語る。


「面白いのは、このカニの甲羅にひっかけ穴があいておるじゃろ」

「えっと、本当ですね。すべての甲羅にいくつか穴が開いています」

「そこに、別のカニの爪をひっかけるとしっかりと繋がるのじゃ」

「あ、本当だ。一度ひっかけると外れませんね」

「穴の形とカニ爪ががっしりと組み合う様になっているのじゃ」


確かに面白い。カニとカニがくっついて離れなくなる。


「このカニはこうして連なって川を渡る性質がある。川を渡っているとき、うまく捕まえると、一度に何十匹と捕まえることができる」


たしかに面白い性質ではある。だけど、それがどうしたのか?


「このカニをうまく繋げていくと、鎖カタビラみたいな鎧ができる。鎖と違ってカニは重さが軽いから使いやすい鎧になる」


なるほど。このカニの甲羅は、確かに小さいのに固い。剣が当たってもはじき返す感じがする。


「よし、おぬし。このカニを使って鎧を組み上げるのだ」

「えっ、どう組んだらいいのか、分かりません」

「簡単じゃ、レンガと同じ様に円筒形になるように互い違いに積んでつなぐだけだ」

「ええーーっ、レンガと一緒ですかっ」


こんなところでレンガ積みの経験が生きるとは。


「だいたい、このカニの名前を教えていなかったな。連なるカニだから、レンガニって呼ばれておるのじゃ」

「レンガニ!」


今日は日曜日だから、レンガ積みはないと思っていたら、レンガニ積みが用意されていたのか。

すると、もしかしたら。

変な予感がした。


「このカゴに入っているレンガニはどのくらいあるんですか」

「ちょうど500匹じゃ、おぬしのレンガニ鎧を作るのにちょうど良い数だ」


もちろん、レンガ積みと違ってセメントをこねたりする必要がない。

カニ爪を組み合わせれば簡単に積んでいくことができる。

たぶん一時間もあれば500匹でレンガニ鎧が作れるだろう。


目の前にレンガがあると、ついつい積みたくなるのがレンガ屋の習性だ。

それがレンガニだとしても同じだ。


円筒形になるように、そして自分の身体にぴったりくるように500匹のレンガニを積んでしまいました。


レンガ積みでなく、レンガニ積みでした。訂正させていただきます。


この後、どうやって戦うのか。続きが気になる方は、ブクマや評価、コメントをよろしくです。


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