第13話 情報判断は自ら行うのは鉄則だよね
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「ミリーちゃんって、この辺り来たことあるの?」
「うん。この先の市場までは行ったことあるよ。マスターの買い出しのお手伝いで」
今、僕らは街の中心に向かって歩いている。
もう少し行くと市場があるけど、今日は日曜日だから市場はお休みだ。
「市場は閉まっているから、外の壁づたいに市場の東門に向かって行くと大丈夫よ」
「あそこに見えるのが市場の西門。じゃあ、市場の外をぐるっと廻って反対側に行くと東門になるんだね」
「そう。わかりやすいでしょ」
市場がお休みだからこの辺りは人が少ない。
市場の東門からまっすぐ伸びる道を行くと商業地区に入る。
ミリーが知っているのは、そこまで。
商業地区に行ったことはない。
僕もこの街に来て3年になるけど、商業地区には縁がない。
あそこはお金がある人がお金を使いに行く場所だ。
生活がカツカツな僕は関係ないとこだ。
だから、商業地区にある街案内所がどのあたりにあるのかは全然知らない。
どうやって目的の街案内所まで行ったらいいのかな。
「街案内所に行けば賢者さんのいる場所が分かるって予報が言ってたものね」
「そうだな。街案内所ならいろいろと知っているだろうからね」
商業地区に入った瞬間、周りの世界が変わって見えた。
歩いている人達の服装がカラフルになる。
老若男女、それぞれがおしゃれな服を着ている。
まるでお祭りの日じゃないかと思うくらい。
下層の人達が住む場所はほとんどが灰色か茶色の服を着ている。
洗濯をするのは、月に何回というのが常識だから、それ以外の色だと汚れが目立つ。
年頃の女の子でも、着ているものはおっさんとあまり変わらない。
「なんか、場違いな場所に来てしまったな」
「大丈夫。案内所に行って賢者さんの話を聞くだけだから」
「そうだね。予報でもそれで大丈夫だと言っていたし」
賢者がお姫様の病気を治す何かを知っている。
そして賢者は街からそんなに遠くない所にいる。
そこまでは分かった。
だけど、それ以上は分からなかった。
賢者のことを知っている人を予報で探していたら、街の案内所の話が出た。
マスターが街中で迷子になったら、案内所につれて行ってもらえ、と言っていたのをミリーちゃんが思い出したのだ。
「だけど、こんなみすぼらしい恰好で案内所って入れてくれるのかな」
「そうなんだよ。僕もそれちょっと恐れていて・・・」
あまりに周りの人達と恰好が違うので相手してもらえないんじゃないか。
そんな心配があるのだ。
「こんにちは」
「あ、こんにちは」
商業地区を歩いていると、少年が話しかけてきた。
ミリーちゃんより幼くて12歳くらいか。
ブルーのシャツとダークブルーのズボンをはいている。
「タバコはいかがですか?」
「タバコ吸わないので。ごめんな」
「そうですか。では、なにか困ったことないかな?」
「えっ」
「なんか、探しているように見えたので」
人懐っこい笑顔で少年が言う。
「実は、街の案内所に行きたいんだけど、よくわからなくて」
そう応えると、少年はまじめな顔になって、じろじろと見てくる。
「なに?」
「えっと。街の案内所、だよね。誰かの紹介か何かある?」
「いや、単にちょっと聞きたいことがあるんだが」
「正直な話をしますね。その恰好だと玄関の衛兵が通してくれないと思うよ」
「ええーっ」
案内所というから、誰でも入れるところだと思っていた。
そうか。この恰好だと入れてもらえないのか。
「どうして、案内所に行くんですか?この街の人だよね」
「ええ。じつは・・・」
なぜ案内所に行く必要かあるのか。
そんな話をしてみた。すると。
「あ、それなら案内所よりもっといいとこがあるんだ」
「どこですか?」
「情報屋だよ。この街近辺の人の話なら、情報屋に聞けば分かるはず」
「よかった。なんとかなりそうだ」
「でも・・・」
「なんだい?」
「情報屋は情報を売るのがお仕事なので、お金がない人は相手してもらえないよ」
「それは、そうだね。どのくらいかかるものなのかな」
「最低、銀貨1枚は掛かるよ。無理ならあきらめた方が・・・」
そんなこともあろうかと、銀貨3枚持ってきている。
さすがにC級冒険者達にもらった金貨は置いてきたが、何をするにもお金がかかると言われている商業地区だから、銀貨3枚を持ってきたのだ。
「なんとかなります。場所、知っている?」
「うん。知っているよ。ちょっとわかりづらいところにあるから、案内するね」
ハキハキと受け答えする感じのいい少年だね。
タバコを吸う友達がいるから、後で買ってあげよう。
「こっちです」
少年はメインストリートから一本入った小道を歩いていく。
人通りが少なくなってちょっと薄暗い。
商業地区も、僕らが住んでいる様なところもあるんだ。
そんなことを思っていたら、大きな扉がある家の前で少年は止まった。
普段なら、当然の様に予報スキルを使ったはずだ。
しかし、慣れない場所で親切にしてもらって、警戒心が緩んでいたのだ。
疑うこともなく、扉をミリーと一緒にくぐった。
なんか、ヤバそう。どうなってしまうのかな。
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