第12話 レンガ積みの経験はいろいろと応用が効きます
翌日、朝早く、目が覚めてしまった。
今日は日曜日。別に昼過ぎまで寝ていても誰も文句は言わない。
文句を言う同居人も家族もいない。
仕事関係の人は当然、日曜日は何も言ってこない。
いつもの日曜日は昼前まで寝ていて、それから街の外に散歩に出かける。
唯一の趣味をするために。
唯一の趣味は石拾い。河原や山で珍しい石を拾ってくること。
色や形、模様など。石はひとつづつ、表情が違う。
自分の気に入る石に出会えるまで、石拾いは続いていく。
「今日は、石拾いに行くのはやめておこう」
朝早く目覚めてしまって、もう寝られない感じだ。
石拾いをしても、いつもみたいに一心不乱に石と会話ができそうもない。
「やっぱり、お姫様の対策を考えよう」
気になっているいるのはお姫様の病気のこと。
どうせ、大した知識がある訳でもない僕に対策が見つかるとは思えないけど、何もしないでいることができない。
「よし。レンガを積むように対策を探していこう」
僕ができること、それは予報をしまくる事。
昨日、さんざん、居酒屋の常連や冒険者パーティの人達が対策のアイデアを出した。
でも、ひとつとして姫様の病気を治す可能性が見えてきていない。
「なんか、あるはずだ。とにかく多くの対策を出してみよう」
「矢を撃ち続ければいつかは当たる」という格言もあるじゃないか。
よし、今日はレンガを積む代わりにお姫様救出のアイデアを出していくぞ。
「まず1個目。王様ならお姫様を助けることはできますか?」
《ピンポーン》
「王様ではお姫様は助けることはできないでしょう」
うーん、ダメか。偉い人だからなんとかなると言う訳ではないのか。
「2個目。神様ならお姫様を助けることはできますか?」
《ピンポーン》
「神様は自ら人に関わりを持つことはないので無理でしょう」
神様はそうなのか。本当言えばできるんだろうけど、それする理由ないしなぁ。
「3個目。すごいヒーラーだとお姫様が助けることはできますか?」
《ピンポーン》
「ヒーラーは助けることはできないでしょう」
ヒーラーはダメか、別系統を考えないと。
レンガを1個づつ積んでいく。1日で500個積む。
それと同じように対策もひとつひとつ積んでいけば、いい方法見つかるかもしれない。
「うるさいな。日曜の朝なのに、何をぶつぶつ言っているんだよ」
「あ、ごめんなさい。外、行きますね」
部屋の中で予報を使っていたら、怒られた。
そりゃ、そうだ。迷惑だから、外へ行こう。
「どこに行こうかな」
どこか考えるのにいいような場所を探していて、なんとなく黒猫亭に来てしまった。
もちろん、まだ空いていないし、誰もいない。
だけど、入口の横に石の腰掛がひとつ置いてある。
「ここでいいか」
周りに誰もいないここは予報を使うには良い感じがする。
「4個目。ドラゴンならお姫様を助けることはできますか?」
《ピンポーン》
「ドラゴンはお姫様の病気を治すことはできないでしょう」
うーん、ダメか。昔聞いたお話だとドラゴンが治したりしているんだけどなぁ。
黒猫亭の椅子に座って対策予報を繰り返している。
なんだかんだで、予報の数が80個を超えてしまった。
「82個目。みんなでお祈りする」
《ピンポーン》
「お祈りではお姫様の病気を治すことはできないでしょう」
うーん、だんだんとネタ切れになってきた。
レンガ積みみたいにもくもくとやるのが難しいぞ。
「あれ?レンガ屋さん。どうしたの?」
「あ、ミリーちゃん。お姫様の病気対策を考えているんだ」
「ありがとう、考えてくれて。私も考えてるけど、いいの見つかんなくて」
「あ、何か言ってみてくれないかな?」
「聖者さんの力でお姫様の病気は治りますか?」
《ピンポーン》
「聖者さんはお姫様の病気を治すことはできないでしょう」
「83個目。うーん、次は・・・」
「そんなに考えてくれていたんだ。すごいね」
「すごくないよ。まだうまくいきそうなのがないんだ」
一緒に考えることにした。
「84個目。奇跡の泉でお姫様の病気は治りますか?」
《ピンポーン》
「奇跡の泉ではお姫様の病気を治すことはできないでしょう」
ダメか。
「そうだ。ミリーちゃんの知っている伝説の話、あげてみてくれる?」
そこから伝説話シリーズを続けてみた。
もちろん、外ればっかりだったけど。
「150個目。賢者ならお姫様の病気は治せますか?」
《ピンポーン》
「賢者はお姫様の病気の治し方を知っているでしょう」
「わぁ、賢者さん!?」
「賢者か、賢者。やっとヒットしたぞ」
500個の予報積みをする前に、ヒットが出た。
可能性が見えてきたぞ。
主人公の趣味は石拾いです。
賢者ってキーワードが見つかりました。賢者さんがお姫様助けてくれるのかな。




