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第11話 自分にできる限界があるってことを知っておこうね

つ、ついに。ハイファンタジー日間ランキング1位になりました。

読んでくれている読者のあなたのおかげです。


期待に応えるべく、1日2話アップを続けていきます。これからもよろしくお願いします。

「大変だ、ミリーちゃん。お姫様が死にそうなんだってよ」

「えっ、お姫様が!?う、嘘でしょうっ」


僕のお代わりのエールを持ってきたミリーちゃんが驚いたような声を出す。

会話に出てきた「お姫様」というのはある女性のニックネームで本当のお姫様ではないんだ。


「なんで?いつも、あんなに元気いっぱいでいろんな活動していたのに」


お姫様はミリーの出身の村の村長の娘。

幼い頃、貧しいミリーの家族はお姫様にいろいろと助けられたのだ。

見た目がお姫様みたいに高貴でかわいらしいのと、多くの人に愛されているからそう呼ばれている。

最近は街での活動が中心で困っている人達を助けるための活動をしている。


「それがね。原因不明の病らしいよ。今は意識もなくて」

「そんなにひどい状態なの」


僕も一度だけだけど、お姫様に会ったことがある。

僕より3つ年上で21歳だというけど、年齢を感じさせない接し方をしてくれる人で誰からも愛されているのが分かる。


「お姫様って、あれだろ。もし、この街で美人コンテストを開いたらきっと優勝するんじゃないかって、噂されている女性だろ。俺もちょっと前に瓦版で読んだことあるぞ」

「そういえば、新しくできた孤児院も彼女があちこち駆けずり回って、出資を募ってできたと聞いたことがあるよ」


黒猫亭に来ているお客さん達にも知られていた。

会ったことがない人でも噂で彼女のことを知っている人はたくさんいる。

この街では、よく知られた有名人なのだ。


「お姫様はいきなり倒れて、そのまま昏睡状態だって言ってたぞ」

「もしかして、そのお姫様の病気はころり病ではないのかな?」


C級冒険者パーティのリーダー、マセットが僕に聞いてくる。


《ピンポーン》


「お姫様の病気はころり病でしょう」

「何?ころり病って」

「僕は知らないよ」


予報しただけだもん。知っている訳じゃないんだ。

だけど、C級冒険者のマセットは知っていた。

冒険するのにあちこちの街へ行っているから、別の街でおきたころり病の話を聞いていたのだ。


元気だった人が倒れて昏睡状態になり、次第に弱ってころりと死んでしまう。

だから、ころり病と呼ばれている。


病気になると1週間くらいで体力がなくなり、静かに息を引き取る。

一度ころり病になると治ることはなく致死率100%の難病。


病気の原因は不明だが、美人だったり、成功者だったり。

周りからうらやまれる環境にある人がかかるのが特徴だ。

だから、貴族やお金持ちには、ころり病が恐れられている。


もっとも、有名な人だけではなく、こっそり無くなっている人もいるんじゃないかと言われている。

有名な人が無くなるから、広く噂が広がるのだろう。


「街一番のお医者さんを連れていかなきゃ」

「そんなお医者さん。お金をたくさん積まなきゃ、観てもらえないだろう。もし、お医者さんでなんとかできているなら、お姫様の関係者が連れていっているはずだろ」

「たぶん無理です。他の街で起きたころり病も医者では治せなかったと聞いています」


冒険者のパーティの面々は直接お姫様を知らなかったけれども、心配する店の他のお客さんに共感して暗い顔になっている。


「おい、レンガ屋。お姫様が助かる予報を出せよ」

「そんな。無理ですよ」

「いや、いいかもしれない」


マセットには考えがあるらしい。


「みんなでお姫様を助ける方法を予報屋さんに言うんだ。可能性のある方法がもしかしたら見つかるかもしれない。いいよな」

「もちろんです」


みんなそれぞれ対策を考えはじめる。

まずはミリーちゃんが聞く。


「お姫様を助けるのに、ポーションではできないかしら?」


《ピンポーン》


「万能薬以外のポーションは効果ないでしょう」

「万能薬かよ。無理だろ。あれは国王クラスでないと使えない超レアアイテムだ」


ここにいる連中はC級冒険者を除くと低級ポーションですら買えない人達だ。

そんな貧乏人に買えるポーションでなんとかなるはずがない。


「もしかして呪いの魔法かも。魔法使いならなんとかなるんじゃないかしら」

「それはあるかもね。お姫様の病気は呪いの魔法が原因なのですか?」


《ピンポーン》


「呪いの魔法ではないでしょう」

「違うのか。じゃあなんだろう」


こんな感じでいろんな人のアイデアで次々と予報したけど、すべてが「否」だった。


とにかく解決策が見つけられない。

お姫様が亡くなるのをただ、待つしかないのか。

どうしたらいいんだ。


店のお客さんはみんな悩んだまま、時間が過ぎていった。

店の中はどんよりとした重苦しい雰囲気になった。


予報屋としての初めての仕事はこんな感じでスタートした。

もちろん、その後、冒険者パーティの人達の来週の冒険についてもっと聞きたいことかないか確認したのだが、聞きたいことはあらかた終わっているらしく、新たにはでなかった。


予報屋は初仕事は満足してもらうことはできたけど、お姫様の病気には役立てることができなかった。


その夜は、お姫様の病気の対策をそれぞれ考えてくるという宿題を残してお開きになった。


お姫様救済イベントが立ちました。


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